近ごろのシグマといえば、世界最小最軽量のフルサイズミラーレス「SIGMA fp」が話題です。同社は交換レンズも高性能で定評がありますが、明るさと描写性能を追求するあまり「大きく」「重い」製品がほとんどでした。

しかし、その定説を覆す「小さく」て「軽い」高性能レンズが登場しました。「SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art」です。実際に試してみると、小型軽量ながら明るく描写も素晴らしいものでした。

  • シグマが8月末に販売を開始したミラーレス用の中望遠レンズ「85mm F1.4 DG DN」。フルサイズ対応で、Lマウント用とソニーEマウント用を用意する。実売価格は税込み107,000円前後

従来の85mm F1.4と比べて重さはほぼ半分!

さまざまなシグマレンズを使ってきたフォトグラファーなら、85mm F1.4 DG DNを手にすれば「え?これがシグマの85mm F1.4なの?」と驚くことでしょう。その大きさは、まるでF1.8クラスのレンズのように感じます。

サイズは82.8×94.1mm(Lマウント版)と実に小振り。同社の「SIGMA 85mm F1.4 DG HSM | Art」は94.7×150.2mm (Lマウント版)と、実にひと回りは違います。重量は順に630gと1,215gで、約半分の重さしかありません。実際に手にすると誰もが驚く重量感です。フィルター径も86mmから77mmへと小さくなっています。軽量コンパクトなSIGMA fpにもマッチしますし、カメラバッグに収納しやすいのもメリットです。

サイズダウンのヒミツは、レンズの設計を「ミラーレス一眼カメラ専用設計」としたことにあります。レンズ構成は11群15枚。5枚のSLDガラスと非球面レンズを採用しているのですが、ミラーボックスの制限がないミラーレス一眼カメラ専用設計としたことで、レンズをセンサーにグッと近づけることが可能になりました。それによって、レンズ配置や設計の自由度が高まって光学性能が向上したのです。大口径、ショートフランジバック採用のミラーレス一眼カメラならではの優位性というわけです。

さらに、画像処理では補正しづらいコマ収差などはレンズで光学的に補正しつつ、周辺光量補正や糸巻き型、タル型のディストーション補正はカメラ内の収差補正機能を使うという「作業分担」によって、描写性能をキープしながら小型軽量化を達成しています。まさにミラーレス世代のレンズ設計思想といえるでしょう。

使い勝手も良好です。このレンズは絞りリングが搭載されているのですが、手になじみやすいサイズ感とあって指が届きやすく、1/3段刻みでカチカチと絞りの変更もしやすくなっています。この絞りリングは、ムービー撮影時に操作音が入らないようにできる「デクリック機構」も備えています。無音にすると同時にスムーズにF値の変更が可能になっているのがニクいですね。

絞りリングは「A」のポジションも備えているのですが、「A」のポジションで固定、もしくは「A」のポジションに入らないようにする「絞りリングロックスイッチ」も搭載されています。これにより、意図せずモードが変わってしまうのを防ぐことができます。もちろん「AFLボタン」も搭載しており、カメラ側からいろいろな機能を割り当てられるようにもなっています。

当然のことながら防塵防滴構造を備えているので、あゆる環境下での撮影でも安心ですし、付属のロック機構付きのレンズフードは落下の心配がなく、あらゆる面で頼もしい1本となっています。

  • 絞り開放から端正な写りが楽しめます。絞り羽根は11枚の円形絞りで、美しいボケ味と整った光芒は実に見事です。イヤな色づきもなく、シャープな描写をF1.4から堪能できます。葉脈やクモの糸までしっかりと写し取ってくれました(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/320秒、F1.4、-1補正)

  • 立体感が際立っているのも魅力的です。夕方近くの飲み屋街で何気なく撮ったカットですが、「たれ焼肉」の看板がググッと主張してきます。オートフォーカスも速く正確でした。手前に写っている歩行者のボケ感もいい雰囲気ですね(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/125秒、F1.4、-1補正)

  • 酒場の入り口にズラリと並ぶコロナビールの瓶たち。夏の夕暮れを感じさせる色再現がいいですね。ピント面の後ろボケが実に美しいと思います。ガウスがかかったような消えゆく感じがサイコーです。前ボケもそれに負けていないところがこのレンズのすごいところですね(SIGMA fpで撮影、ISO320、1/80秒、F1.4、-1補正)

  • 最短撮影距離は85cmなので、旅先での料理のカットや静物撮影でも活躍するレンズです。このカットのように絞り開放でムーディーに撮ってもいいですし、絞ってのカッチリしたカットもいけます。もちろん、ポートレート撮影にもピッタリでしょう。F1.4という明るさは、暗所でも活躍間違いなしです(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/160秒、F1.4)

  • 何よりも「SIGMA fp」とのマッチングは良好。ブラブラと街中でスナップ撮影を楽しみましたが、正確かつ高速なオートフォーカス性能はシャッターを切るのが楽しくなりました。絞り開放からガンガン使えるので、このカットのようにボケを意識した写真を撮りたい人にオススメです(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/1600秒、F1.4)

  • チョイと絞り込んでやればシャープさとコントラストが高まり、よりメリハリのあるカットが撮影できます。プレートの質感や木戸の描写がリアルでたまりませんね。操作感のよい絞りリングも、とてもいい印象です(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/500秒、F5.6)

  • 小さくて軽い「シグマらしくない」プライムレンズ。ポートレートはもちろん、静物やフード、風景撮影までスマートにこなしてくれるレンズだと感じました。絞り開放域での美しいボケ感はもちろん、絞ってのカッチリとした描写は、撮り手次第でさまざまな味わいを引き出せることでしょう。去りゆく夏空を写しましたが、雲の立体感と橋や風車の緻密な写りに驚きました。実際に使ってみて、とても気に入ったレンズです!(SIGMA fpで撮影、ISO100、1/640秒、F5.6、-1.3補正)