7月の開発発表以来、多くの写真ファンが登場を待ち焦がれていたカメラがついに登場しました。そのカメラの名は「SIGMA fp」。シグマ初のフルサイズセンサー搭載カメラであり、同社初のベイヤーセンサー搭載デジタルカメラでもあります。

何といっても注目なのがそのサイズ。パスポートよりも小さいボディに、シグマのテクノロジーを凝縮しているのです。実物を目にするだけで思わず楽しくなり、手にしたら欲しくなってしまう新基軸のカメラに仕上がっていました。

  • シグマが10月末に販売を開始したLマウントのフルサイズミラーレス「fp」。その実力を試してみた

    シグマが10月末に販売を開始したLマウントのフルサイズミラーレス「fp」。実売価格は、ボディ単体モデルが税込み22万円前後、45mm F2.8 DG DN レンズキットが税込み25万円前後

これほど小さくても画質や操作性は上々

実際に手にしたfpは、本当に小さくて軽いです。幅112.6mm、高さ69.9mm、奥行き45.3mmで、重量はわずか370g! いまのところ、世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスカメラとなっています。

あまりにもコンパクトなので「本当にフルサイズなの?」と思ってしまうほどですが、有効2460万画素のフルサイズベイヤーセンサーを搭載しています。しかもローパスレス仕様なので、画像は実にシャープ。発色は、シグマ独自の高精細センサー「Foveon」にどことなく寄せた味わいを感じます。

ISO感度は常用ISO100からISO25600となっており、拡張時はISO 6や12などの低感度のほか、51200や102400の高感度まで使えます。シグマのカメラとは思えない感度ですね。連写も、高速で約18コマ/秒、中速で約5コマ/秒、低速で約3コマ/秒と、シグマらしからぬスペックになっています。オートフォーカスは、昨今のスタンダードといえる顔認識や瞳AFも搭載しています。

レンズマウントは、ライカ、シグマ、パナソニックで協業を進めるLマウントを採用しており、3社からリリースされている交換レンズがそのまま使えます。小型軽量の単焦点レンズ「45mm F2.8 DG DN」がジャストフィットし、毎日気軽に持ち歩けるフルサイズミラーレス一眼となっています。

  • シグマといえば明るい高画質レンズが売りだが、fpにはキットレンズとしても用意する「45mm F2.8 DG DN」がベストマッチといえる

使い勝手も不満ナシ、アクセサリーも充実しそう

小型軽量であることは分かりましたが、使い勝手はどうでしょうか。

カメラの操作は分かりやすく、シグマらしいシンプルなメニュー体系がとても直感的で好ましいと感じました。写真と動画の切り替えは、ボディ上面のスイッチをスライドするだけ。両モードは、それぞれ専用のユーザーインターフェイスが用意されており、設定がしやすくなっています。ダイヤルやボタンの配置もよく、すぐ手になじんでくれることでしょう。

ホールド感ですが、純正のマウントアダプター「MC-21」を介して一眼レフ用の高性能レンズを装着すると、さすがにフロントヘビーに感じます。しかし、最近リリースされたミラーレス専用設計の「DG DN」シリーズレンズならば、まずまずのフィット感でした。シグマには、fpにマッチする小型軽量レンズをはじめ、さまざまな交換レンズの拡充をお願いしたいところです。

写りは、新搭載のカラーモード「ティールアンドオレンジ」が気に入りました。「人肌の色などに含まれるオレンジ系の色味と、その補色に当たるティール系(シアン系のブルー)の色味を際立たせる」色作りで、ハリウッドのシネマシーンで多用されているカラーモードとなっています。このモードで撮影すると、確かに映画のワンシーンのように感じます。スチルだけでなくムービーにも適用できるので、いろいろなシーンで試してみると新たな作品作りにつなげられそうです。

グリップやLCDビューファインダーなど、すでにいくつかのアクセサリーが用意されていますが、fpはサードパーティーが自由にアクセサリーを開発できるよう、外観の3Dデータをシグマが公開しているのが特徴。なかなか面白い試みといえ、来年あたりからユニークなアクセサリーが各社から登場しそうな予感がします。

  • LCDビューファインダーやハンドグリップを装着したfp。この小ささながら高い拡張性を備えている点も魅力だ

fpは、フルサイズながらいつでも気軽に持ち歩ける小型軽量ボディ、シネマ調の味わいが楽しめる描写など、毎日付き合えるカメラだと感じました。

  • 絵は、どことなく同社のFoveonセンサーのような味わいです。打ち寄せる波の重さや空のどんより感など、重厚感がそれを感じさせますね(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/1600秒、F8.0、+0.3補正)

  • カラーモード「ティールアンドオレンジ」はハリウッドが起源だけに、シネマっぽい仕上がりになります。独特の発色は、いろいろな物語が作れそうです(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/1600秒、F2.8)

  • fpに一番マッチするレンズは、なんといっても「45mm F2.8 DG DN」でしょう。サイズ、デザインともバッチリです。絞り開放で「ティールアンドオレンジ」をつい多用してしまいます(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/250秒、F2.8)

  • ローパスレス仕様の有効2460万画素ベイヤーセンサーを搭載していますが、精細感、発色、感度ともバランスが良く、さまざまなシチュエーションで満足の写りでした(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/160秒、F2.8、-0.7補正)

  • 多摩川の土手を「ティールアンドオレンジ」で。秋から冬へ移ろう微妙な空気感をうまく写し取ってくれました。レンズを装着したままでもジャケットのポケットにスッポリ入るので、スマートフォンを取り出すようにサッと撮影できます(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/400秒、F8.0、-0.3補正)

  • 日本各地に被害をもたらした台風19号。その爪痕を記録しました。川の水が土手を轟轟と流れていく様子を撮りましたが、台風一過の空気感を感じさせるカットとなりました(45mm F2.8 DG DN使用、ISO100、1/640秒、F8.0、-0.3補正)

  • fpは像面位相差AFには対応していませんが、なかなか快適なオートフォーカス性能でした。多彩なAFエリアを的確に設定すれば、スナップショットもそつなくこなしてくれます。カラーモードの「モノクローム」もしっとりとした仕上がりなのでオススメ!(45mm F2.8 DG DN使用、ISO200、1/50秒、F2.8、-1.7補正)

  • fpならば、シグマファンとしては夢のような高感度で撮影できます。浅草寺をスナップしましたが、夕方から夜まで三脚なしで撮り続けられて感激しました。このカットはISO1600ですが、ディテールも豊かでノイズも少ないですね(45mm F2.8 DG DN使用、ISO1600、1/50秒、F2.8)

  • fpが気になっている人は多いと思いますが、すでにLマウントレンズを持っている人はまだ少ないはず。45mm F2.8 DG DNとのセットモデルならば、それぞれ単体で買うよりもお得ですし、何よりジャストフィット。写りも素晴らしいものがあります(45mm F2.8 DG DN使用、ISO1250、1/50秒、F2.8、-2補正)