オンライン生活最適PC
FMVは「オンライン生活最適PC」というメッセージを打ち出しているが、それを裏付ける機能やこだわりなどについても説明した。
今回紹介したオンラインレッスンの事例では、すべてノートPCのLIFEBOOK NHシリーズを使用していた。FCCLの齋藤社長は、「LIFEBOOK NHシリーズは、17.3型の液晶ディスプレイを15型ノートPCの本体サイズに搭載し、キーボードや音については、マイスターと呼ばれる技術者がこだわりのチューニングを施している。デザインはチーフデザインプロデューサーが監修。それぞれが認めないと商品は出荷できない。特にこだわっているのが音である」とし、音を重視する背景として、2018年から搭載したAIアシスタント「ふくまろ」の存在があることを示した。
「ふくまろは、PCを何でもできるツールに変えてくれるものであり、声をかければ数々の機能を実現してくれる。だが、声が聞こえなければ、ふくまろは何もできない。ユーザーがどんなところにいても、どんな状態で話しかけても、言っていることを理解できるように、マイクにこだわってきた」(齋藤社長)
音声認識のレベルを高めるために、欧州のETSIに準拠した測定室で評価検証を実施しているほか、マイクロソフトの音声認識性能測定、インテルのマイク性能試験(SPET)を実施。さらに、社内で設定した音声認識測定の基準もクリアしているという。
「社内試験は、FCCLのR&Dセンター音響測定室で行い、これを社内では『ふくまろ測定』と呼んでいる。FMVならではの味付けを施したチューニングをしている」(斎藤社長)
LIFEBOOK NHシリーズなどには、4つのマイクを搭載。話者の位置を測定したり、クリアな音声抽出を可能にしたりできるといった特徴を持つが、「4つのマイクの特性を完全に一致させるためにハイレベルなチューニングが必要で、ピアノ調律のような作業。また、駆動音や振動などPCはノイズの集合体であり、設計においてマイクにノイズを伝えないための構造を編み出し、周波数特性も一定にできた。ここまで音をチューニングしているPCはない。日本に開発部隊を持って、顧客の要望を速く、着実に実現できる例のひとつといえる」(斎藤社長)と語った。
スピーカーについても各種テストを実施していることに触れながら、「構造だけでなく、ソフトウェアによる改善も行っている。DIRACとパイオニアとともに開発したボイスモード技術では、小型スピーカーで不足する母音の部分を増強し、聞き取りやすい音を実現している。この技術は、テレワークにも適している」(斎藤社長)と語った。
「リモートワークは、どんな環境でもPCが利用できることが前提となる。キーボード、ディスプレイ、音にこだわったPCを簡単に持ち運べることは重要な要素。リモートワークにどんどん使ってもらい、それをもとに改善をしていく。これだけ長い歴史を持つPCというツールが、新しい使い方をして、新たな気づきが生まれ、生活を良くするという効果が生まれている。PCメーカーとして、もっと生活を良くすることに努力をしたい」(斎藤社長)
支援サービスも多数
FCCLでは、PC生活を支援するサービスを用意していることも紹介した。FCCLの竹田弘康副社長は、「PCの操作で困ったときに助けてほしい、PCをもっと活用したい、故障したときすぐに直してほしいという要望に対応するために、My Cloudというサービスを用意している。登録ユーザーには基本サービスを無償で提供しており、さらに有償サービスとして、My Cloudプレミアムを用意。ベーシックから、あんしんワイドまで4つのサービスがある」と説明。
My Cloudプレミアムのスタンダードコースでは、安心専用ダイヤルによる手厚い電話サポートや、100種類以上のソフトウェアが使い放題のサービスを利用できる。あんしんワイドコースでは、PCだけでなく、生活に関する困りごとまでサポート。水回りの修理や、電球交換などにも対応するという。
そのほかにも、PCのセットアップや使い方を学びたいといった場合の出張サービス「PC家庭教師」、子どものプログラミング学習をはじめ、PCを使って各種の学習ができる「FMVまなびナビ」なども用意している。
「PCを始めたい人から、使いこなしたい人まで、PCに関する様々なサービスを提供している。同時に、生活に関する困り後まで、統合的なサービスを用意しているのはFCCLだけ」(竹田副社長)
さらに、サービス内容を拡張することを発表。「『ITチャレンジ』サービスにおいて、オンラインで何かを始めたい、オンラインを活用したいという人に対して、出張サポートで対応する仕組みを用意する。具体的には、オンライン飲み会をやりたい、テレワーク環境を快適にしたい、オンライン教室を開催したいといった要望にも応える。要望をもとにさらにサービスを拡充したい」(竹田副社長)とした。
「必要なサービスは顧客から教えてもらうもの。これらの声をもとに、これからもサービス内容を強化したい」(齋藤社長)
一方、新型コロナウイルス感染症が拡大してからの、PCの利用状況に関する調査結果についても発表した。FCCLのMy Cloudサイト上で2020年5月に実施した調査で、7,161人が回答。50代以上が90%、男性が81%を占めており、中高年からシニアの男性のデジタルライフを示すものとなっている。
これによると、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、1日のPC利用時間が増えたという人は62.4%に達した。そのうち25%は2時間以上増加したと回答している。また、利用する機会が増えたサービスでは、ニュースサイト、オンラインショッピング、動画配信サービスが多く、「動画配信や電子書籍は世代格差が大きいが、オンラインショッピングの利用では世代格差がないことがわかった」(齋藤社長)という。
「テレワークやオンライン学習、オンライン飲み会を、家族または自分が実施しているか」という質問に対しては、40~50代では5人に1人がテレワークを実施しているという結果が出たが、各世代の10~20%のユーザーが「テレワークやオンライン学習を始めたいが、必要なものがわからない」と回答。「普段、PCを使っているユーザーが、テレワークのやり方がわからないと回答している。顧客起点のサービスが不足していると反省している」(齋藤社長)とした。
テレワークやオンライン学習を行うにあたって追加購入したものとしては、PCが最も多く、次いでマイクやヘッドセットなどの音声デバイス、Wi-Fiルーターなどネットワーク環境の増強と続く。「一家に複数のPCを導入したケースが目立ったほか、音に関わるものを追加購入したユーザーが多い。音については今後も改善していきい」(齋藤社長)と話す。
また、外出する時間が減った人は約8割に達する一方で、仕事の時間が減った人が22%、趣味の時間が減った人が17%となっている。「PCがもっと楽しめる状況になれば、こうした時間にPCを使ってもらえるだろう」(齋藤社長)とも述べた。
コロナ禍におけるPCの販売状況については、具体的な数字には言及しなかったものの、「リモートワーク需要は、思いのほか個人向けPCの販売増加につながっている。ノートPCの売れ行きがいい」(齋藤社長)とした。また、「2020年1月以降、中国を中心にしたロックダウンで、サプライヤーからの部材調達に手を焼いた。だが、島根や福島の製造拠点では新型コロナウイルスの感染者がゼロで、製造における影響は他社に比べて少なかった。依然として世界的に新型コロナの影響が出ているため、気を引き締めて、商品を提供できる体制を維持したい」(竹田副社長)と語った。