富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、在宅におけるPC活用や、オンラインニーズに最適化したPC利用の提案、それを実現する新たなサービスについてメディア向けのカンファレンスを開催した。新製品についての発表はなかったが、FCCLの齋藤邦彰社長は、「新たなPCは、もうすぐ紹介できる。匠の技術を持ったエンジニアが最後の仕上げに入っているところ。期待してほしい」と述べた。

今回の会見は、新製品や新技術の発表とは異なり、ニューノーマル時代におけるPCの新たな利用を提案する内容となっていたのが特徴だ。FCCLの齋藤社長は冒頭、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、昨年(2019年)の時点では想像もつかなかったことが起きている。多くの人が工夫を凝らし、難局を乗り切ろうと考えている。そこにFMV(FCCLのPCブランド)がどんな貢献ができるのかを示したい」と述べた。

  • 富士通クライアントコンピューティング 代表取締役社長の齋藤邦彰氏

FMVを利用した具体的な活用事例として、フルート教室、ボイストレーニングレッスン、キッズダンス教室、大学での授業という4つの事例を取り上げた。まずフルート教室では、東京・練馬のLiebeフルート音楽教室と、京都市の徳本早織フルート教室でのオンラインレッスンを紹介。

徳本早織フルート教室の徳本早織氏は、「オンライン化によって新型コロナウイルスに感染する心配がなく、受講してもらっている。持病を持っている高齢者や遠方からの生徒は、対面ではなく、オンラインで継続してレッスンを行っている。また、突然の豪雨や夏の暑さ、冬の外出時の寒さなど、天候に左右されることなく、オンラインでレッスンが継続できる。今後のスタンダードになると思う」とコメント。

Liebeフルート音楽教室の上塚恵理氏は、「FMVの明るく大きな画面で、口元や手元を間近に映すことによって、よりわかりやすいレッスンができている。従来のPCでは音割れが起きていたが、FMVを使用することで、低い音から高い音まで滑らかに聞けて、対面レッスンとほぼ変わらないクオリティのレッスンになっている。生徒にレッスン風景を録画してもらうことで、復習にも使ってもらっている」とした。

音質の効果だけでなく、スマホとは異なるPCならではの大画面を利用することで、フルートを演奏する際の唇の動きなども理解しやすくなった点が好評だという。

  • 大画面のFMVノートPCを使ってオンラインレッスンを行っているフルート教室

ボイストレーニングレッスンでは、石原優子氏の教室を紹介。「新型コロナウイルス以前から、体調があまりよくないときに、レッスンをキャンセルするのはもったいないとして、無理をして来てしまう生徒も多かった。そういう状態では本人の体調が悪化したり他人に風邪がうつってしまったり、今ではウイルス蔓延の原因になる可能性がある。オンラインであれば、ちょっと体調が悪いが、レッスンができないほどではないというときに、自宅からレッスンを受けられる。新型コロナウイルス感染症が拡大している状況のなかで、うつす心配も、うつされる心配もなく、レッスンができる。これがオンラインレッスンの一番の利点」とした。

この事例について齋藤社長は、「移動できないことを、オンラインによってメリットに変えている」とコメント。また、FCCLの電子ペーパー「クアデルノ」が、楽譜を数千枚も格納できてどこにでも持ち歩ける軽さであることを示し、「こうしたツールも、音楽の腕をあげるためにサポートができる」と述べた。

  • こちらもオンラインレッスンを行っているボイストレーニング教室の現況

キッズダンス教室では、mio Dance Schoolの例を紹介。長谷川美緒氏は、「スマホやタブレットの小さな画面でオンラインレッスンをやってみたが、見づらくて難しいと思っていた。だが、大画面のFMVでは見やすく、きれいで、音も聞き取りやすかった。今、ダンススクールでは人数制限を行ったり、距離を取ってレッスンを行わなくてはならないが、オンラインでは安全にレッスンができる。また、習っていた生徒が遠方に引っ越してしまったり、育児のためにレッスンに通えなくなったりといった場合も、オンラインレッスンなら気軽に参加できる。何年かぶりにダンスに復帰し、オンライン上でみんなで踊ることができ、喜んでいる生徒もいる」とした。

住んでいる場所が離れていても、一緒にダンスのレッスンを受けることができるという、新たな価値を生んでいる。

  • 同じくキッズダンス教室

もちろん大学のオンライン授業でも

大学のオンライン授業での利用では、一橋大学と神戸大学大学院の事例を紹介した。一橋大学の学生である鄧忠宇氏は、「FMVは画面の解像度が高く、内蔵カメラの画質がきれいで、オンライン授業を受ける際には助かる。音質も劣化せず、臨場感を楽しめる。4つのマイクが搭載されているため、小さな音でも聞こえる。キーボードも軽快なタッチで、長時間タイピングしても、ストレスにならない」とコメント。

神戸大学大学院の三矢裕教授は、「大学の授業がすべてリモートになって、学生は1限から6限まで1日中ずっと、PCの画面を見ている状況にある。画面が大きいことで、目の負担やストレスが減る」と述べた。

  • 一橋大学(写真上)と神戸大学(写真下)のオンライン授業に関する感想。やはりFMVノートPCを利用しており、大画面、マイクやスピーカーの音質、キーボード品質といった評価が高い

FCCLの齋藤邦彰社長は、「オンライン化は、会議や授業、飲み会のほか、診察や冠婚葬祭、お墓参りにまで及んでいる。その多くは、オンラインをオフラインの代替手段と考え、オフラインと同じようにできることが求められていた。だが最近では、オンラインで誰でもできるようにしたい、オンラインのほうがこれまでよりも効果があるようにしたい、という要望が増えている。オンラインに価値を感じた人たちが多いということだ。顧客が求める『リアル以上』とは何か、何で困っているのかを把握して、FMVに反映させていくことに取り組んでいる。FMVは、国内に開発部隊があり、いち早く、顧客の要望を実現できる体制が特徴であり強み」と自信を見せた。