LiDAR(ライダー)は、光による検知と測距を意味するLight Detection And Rangingの略語で、光を用いたリモートセンシング技術を指します。よく似たしくみの技術に「Radar(レーダー)」がありますが、Radarが電波で遠方にある物体までの距離と方位を測定するのに対し、LiDARは近くにある対象物にレーザー光を照射して距離を測定、その位置や形状を把握したり、2次元・3次元の画像を作成したりする目的で使用されます。

一般的にLiDARが発するレーザー光には、電波を使うレーダーと比較するとはるかに波長が短い紫外線や赤外線といった不可視光線が利用されます。光束密度が高く、小さな物体に照射してもよく反射し、高い精度で位置や形状を検出することができます。

LiDARの技術自体は新しいものではなく、雲や大気などを対象とした研究学術分野では数十年の実績がありますが、前述した特長から近年では自動車の自動運転技術に活用されるようになりました。

その測定精度の高さから、LiDARはAR(Augmented Reality、拡張現実)の分野への応用が期待されています。2020年3月発売のiPad Proには、赤外光を照射しその反射光が戻るまでの時間をもとに距離を算出するダイレクトToF方式のLiDARスキャナが搭載され、最大5m先にある対象物との距離を計測できるとされています。

従来のAR技術は、カメラで撮影した映像とモーションセンサーから取得した位置/方向データの組み合わせで周囲の状況を把握していましたが、そこにLiDARスキャナの測定結果をくわえれば、より自然なAR体験が期待されます。AR技術の注目度の高さから考えると、今後LiDAR技術を採用するスマートフォン/タブレットの増加が見込まれます。

  • 「LiDAR」とは?

    iPad Proには「LiDARスキャナ」が搭載されています