大阪城ホールで鳴りやまなかった拍手
――愛美さんはこの期間に、YouTuberとしての活動のほか「SILENT SIREN」さんの無観客配信ライブなどにも出演されていました。配信で音楽を届けることとお客さんの前で歌うのとでは、感覚は違いましたか?
愛美:それほど変わらなかったかもしれないです。「本番です」となって、ステージに立って、スポットライトが付いて音楽が流れると、「いつものライブが始まった」という感覚でした。ただ、配信だと細かいところまで見えるので、なんだか丸裸にされちゃっているようで少し恥ずかしい、という気持ちはあったかも(笑)。
あと「BanG Dream!」では過去のライブを配信したのですが、その配信で初めて「ポピパ」(Poppin'Party)のライブを見たという声もあったんですよ。そういう意味では、配信が新しいファンを増やすきっかけにもなったと感じています。
――棚橋選手は6月に行われた新日本プロレスの無観客試合「Together Project Special」に出場されていましたね。
棚橋:無観客試合は2004年に一度経験しています。新日本プロレスに所属している選手のなかでは俺が唯一の経験者なのですが、当時は何の手ごたえもなかったのでトラウマを抱えていました。ただ、今の新日本プロレスはすごい。選手みんなが考え方を切り替えて、会場にお客さんがいない分、攻防自体に注力するようにしたんです。それが、配信を見てくださっている方々にも届きました。俺の仲間たちはすげーです。ドキドキしながら試合をしていたのは俺だけでした。
――その無観客試合を経て、7月には大阪城ホールにて、通常の3分の1程度ながらも観客を入れた試合が行われました。その時に「拍手の響きがとても美しく聞こえました」というコメントを残しています。
棚橋:プロレスの醍醐味は会場で「棚橋ぃ!!」と、声援やブーイングを送ることだと思うんです。それでも、大阪城ホールで3時間半鳴りやまなかった拍手は、本当に美しく、感動的でした。
木谷:もともとプロレスって拍手する文化もあるんですよね。例えば、誰かが技を決めたときに拍手を送るとか。
棚橋:ありますね。
木谷:そういう文化があったから、歓声ができない分、何かにつけて拍手するというリアクションがすぐにできたんだと思います。私も現地にいましたが、本当に3時間半拍手が続いていましたね。一か所思わず笑ってしまったのが、リング上で反則しているときにも拍手をしていたこと。普段だとブーイングするところなんですよ。ただ、声が出せないから今回は拍手していたんです。笑っちゃいけないけど、おかしかったです(笑)。
棚橋:俺たちは拍手のトーンで「これはブーイングかな」と判断していました(笑)。
――なるほど(笑)。
木谷:少し話が脱線しましたが、拍手の文化はライブや舞台でも取り入れていいんじゃないかと思います。ライブや舞台は、曲終わりや公演のラストに拍手することはあっても、途中ですることがほぼありません。声が出せないのであれば、代わりに拍手で表現してもいいと思います。
お客さんが少なくても一生懸命にやること
――実際にライブで演奏する側の愛美さんは、これまで拍手によって気持ちが昂ることがありましたか?
愛美:ありました。拍手って、普段のライブだと「いいものを受け取った」と感じたときに、自然と出るものだと思うんです。それをしてもらえただけで、気分は上がりますね。
木谷:先ほどから話にあがっている新日本プロレスの大阪城ホール興行は、通常1万2,000人がキャパシティのところ、1日目が約3,300人、2日目が約3,800人の観客数で開催しました。それでも、みんなで拍手するとそれなりの大きさになっていましたね。
棚橋:選手にもしっかり届いていましたよ。
木谷:その拍手があるだけで、気分は大きく違うと思うんです。あと、新日本プロレスは、15年くらい前はお客さんが少ない状態で試合をやっていたんですよ。だから、3,300人が少ないと感じていない選手もいるはず。
棚橋:感じませんね。一番厳しかったのが、2007年11月11日に両国国技館で行われた棚橋対後藤(洋央紀)のタイトルマッチ。1万人くらい入る会場だったにも関わらず、観客は2,200人だったんですよ。それでも、めちゃくちゃ盛り上がったんです。
木谷:今でも名勝負と言われている試合ですね。
棚橋:自分でいうのも何ですけども、あれで新日本プロレス復活の狼煙があがったと思います。
木谷:だから、お客さんが少なくても一生懸命やることが大事なんです。それが盛り上がりに繋がりますし、その姿が後々まで語り継がれることもある。それを見たお客さんにとっても、自慢話になると思います。
愛美:私は緊急事態宣言が発出されてからまだ無観客ライブしか経験したことがなくって。お客さんが入った状態のイベントはまだやっていないんです。だから、久しぶりにお客さんが目の前にいるステージに立ったときにどんな感覚になるのか、まだ想像がつかないです。
棚橋:あいみん、それは楽しみにしておいたほうがいいよ。俺は会場に入った瞬間、「おぉ! お客さんがいる!」って感動した。とにかくうれしい。そして、心から感謝した。ルーティンとして、リングに入ってからコーナーを見渡して写真を撮ってもらうんだけど、まだこの景色を堪能したいと思って、もう1周したもん(笑)。
愛美:それくらいうれしかったんですね! 私も楽しみにしておきます。