Amazonが運営する電子書籍サービス「Kindle」。そのKindleで読み放題のサービスといえば、一般的には「Kindle Unlimited」が有名ですが、実はそれ以外にも2つ、合計3つもの読み放題サービスがあることはご存知でしょうか?

今回は、この3つの読み放題サービスの違いと、使い分けのコツについて紹介します。

  • 「Kindle」や「Fire」など、同社製デバイスでのみ利用できる読み放題サービスも用意されている

コンテンツも充実した有料サービス「Kindle Unlimited」

最初に紹介するのは、なんといっても「Kindle Unlimited」です。小説やビジネス本、実用書、コミックのほか、雑誌や洋書も含めた対象タイトルの中から、最大で10冊まで同時にダウンロードし、読むことができます。

  • 「Kindle Unlimited」。対象タイトルにはおなじみのアイコンが表示されています

はっきりとした対象タイトル数は不明ですが、検索をかけると「80,000以上」と表示されます。この種のサービスでは、間違いなくトップクラスのボリュームです。ちなみに対象タイトルには専用のアイコンが表示されており、ひと目で見分けられます。

Kindle Unlimitedは、プライム会員などの資格とは無関係に、単体のサービスとして提供されています。2020年7月現在の月額料金は980円となっており、対象本を有料で購入するぐらいなら、Kindle Unlimitedを契約して借りたほうが安くつく──というケースもしばしばです。

もっとも、あくまで対象タイトルを「借りる」だけであり、読んで気に入ってずっとライブラリの中に所有し続けたい──となった場合は、改めて購入する必要があるのは気をつけたいところです。対象タイトルの入れ替えは頻繁に行われているので、また借りればいいやと思っていると、次に見た時は対象から外れていることもあります。

  • 最大10冊までのタイトルを同時にダウンロードできます。それを超えてダウンロードする場合は、どれかの利用を終了する必要があります

Kindle Unlimitedのネックは検索性です。Kindle Unlimitedの対象となるタイトルは、Kindle本のページに半ば広告のような形で表示されていますが、その多くはお決まりのタイトルで、未知のタイトルと出会う喜びは少なめです。トップページの「新着タイトル」欄も、いったん対象外となったタイトルが再び表示されることが多く、未知のタイトルを探すには、出版年月で並び替えるなどの工夫が必要になります。

Kindle Unlimitedは30日間無料で利用できるほか、2カ月99円といった格安の入会キャンペーンも頻繁に行われています。プライム会員であれば、性格がよく似た後述の「Prime Reading」が無料で利用できますので、まずはそちらを試してみるのが現時点ではベターといえそうです。

プライム会員なら無料で使える「Prime Reading」

Amazonが注力しているもうひとつの読み放題サービスが、2017年になって追加された「Prime Reading」です。いうなれば、Kindle Unlimitedのプライム会員限定版といってよいサービスです。

  • 「Prime Reading」はプライム会員向けの読み放題サービス。対象タイトルの多くはKindle Unlimitedと重複しています

Kindle Unlimitedが別途有料で契約しなくてはいけないのに対して、こちらのPrime Readingは、プライム会員であれば無料で利用できます。同時に利用できるタイトルは10冊までで、使い方はKindle Unlimitedとほぼ同じです。

  • こちらも使い方はほぼ同じで、10冊という制限の範囲内で、タイトルを入れ替えながらダウンロードできます

対象タイトルの数はKindle Unlimitedよりも少なく、検索をかけると「1,000以上」と表示されるので、Kindle Unlimitedの数十分の1ということになります。対象タイトルはKindle Unlimitedに含まれていることがほとんどで、Prime Readingで借りたはずが、コンテンツと端末の管理画面ではKindle Unlimitedから借りたことになっている場合もしばしばです。

ネックとなるのはやはり、検索軸が少なく、未知のタイトルとの出会いがなかなかないこと。対象タイトル数からも分かるように、現実的にはKindle Unlimitedのお試し版のような位置づけになっており、ここで読み放題の有用性を確認できたらKindle Unlimitedに移行するといった使い方がベターで、かつAmazonもそれを意図しているように見えます。

Amazonデバイス所有者だけの特典「Kindleオーナーライブラリー」

最後にもうひとつ、あまり知られていないのが「Kindleオーナーライブラリー」です。これはAmazonプライムに加入済みで、かつKindle端末もしくはFireタブレットを所有しているユーザーを対象に、月1冊まで対象タイトルが無料で購読できるサービスです。いうなれば、端末を買ってまで愛用している、ロイヤリティの高いユーザー限定のサービスということになります。

このKindleオーナーライブラリーが面白いのは、Kindle UnlimitedやPrime Readingには含まれていないタイトルがラインナップされている場合があること。数はそれほど多くないとはいえ(そもそも更新もほとんど行われていないようです)、Kindle Unlimitedを契約していても有料扱いだったタイトルが、こちらでは無料で読めてしまう場合があります。

曲者なのは、利用できるのがデバイス所有者に限定されていることもあり、デバイスから表示しない限り「無料で読む」のリンクが表示されないこと。PCやスマホなど、無料アプリ上でいくら探し回っても、関連リンクが表示されません。配信先もこれらのデバイスに限られており、例えばFireで読んでいた続きをスマホで読むといったことはできません。

ただし、対象タイトルだけはPCから検索することが可能なので、PCで気に入ったタイトルを探し、見つかったらKindleもしくはFireを取り出し、そちらでダウンロードする……といった使い方が(かなりまわりくどいですが)可能です。

  • 「Kindleオーナーライブラリー」の対象タイトルはPCで検索できます

  • ところが対象タイトルをクリックしても、それらしき無料購読のリンクはありません

  • 実は、KindleやFireなどのデバイスで表示した場合のみ「Kindleオーナーライブラリー」の「無料で読む」ボタンが表示されます

若干不思議なのは、対象タイトルごとに「この本はKindleもしくはFireを持っていれば無料で読めますよ」と表示すれば、それらのデバイスの売上につながるような気がするのですが、あえてそれをしていないこと。Amazonとしても、どちらかというと前述の「Prime Reading」や「Kindle Unlimited」に注力し、こちらの利用は減らしていきたいのではないでしょうか。

対象タイトルは決して多くなく、かつ同時に借りられるのが1冊まででその都度探さなくてはいけないなど、かなり癖の強いサービスですが、ここにしかないタイトルがあるのは強みです。KindleもしくはFireを使用していて、いままで知らなかったという人は、ぜひチェックしてみてください。

  • 新規のタイトルを購読できるのはその月に1冊だけです。また複数のデバイスを所有していても上限は増えません

  • 「コンテンツと端末の管理」ページで「購読中」のタイトルを表示すると、「Kindle Unlimited」「Prime Reading」「Kindleオーナーライブラリー」がそれぞれ別々に管理されていることが分かります