アップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」で立体的なサラウンド音声が楽しめる新機能「空間オーディオ」が、今秋に予定する無料のソフトウエア更新により追加されることがWWDC 20の基調講演で発表されました。強力なアップデート機能の内容を紹介しましょう。
3Dサラウンド再生が楽しめる「空間オーディオ」
AirPods Proは、独自のアクティブ・ノイズキャンセリング機能により、周辺の環境ノイズをシャットアウトしながら没入感の高いリスニングを楽しめる完全ワイヤレスイヤホンです。ステレオ再生はもちろん、片側の耳に装着してモノラルのヘッドセットとしても利用できます。
秋に予定するソフトウエアアップデートを実施すると、iOS 14をインストールしたiPhoneやiPod touch、iPadOS 14をインストールしたiPadとの組み合わせで、映画やドラマなどさまざまなコンテンツで立体的なサラウンド音声が聴けるようになります。
空間オーディオは、2019年秋に登場したiPhone 11シリーズの内蔵スピーカーで迫力あるサウンドが楽しめる機能としてデビューしました。イヤホンでの再生には非対応だった空間オーディオが、少しアレンジを加えてAirPods Proで楽しめるようになるイメージです。
5.1chや7.1ch、およびドルビーアトモスの音声フォーマットで製作されたコンテンツが、空間オーディオのテクノロジーを介して、より立体的なサラウンド音声とともにAirPods Proで聴けるようになります。ステレオ音声で製作されているコンテンツも、今後アップルが提供するAPIにより、空間オーディオ対応のサラウンドコンテンツに変換することが可能になります。
頭や身体の向きを変えても音が正しい方向から再生される
空間オーディオとともに、AirPods Proには「ダイナミック・ヘッドトラッキング」という技術が追加されます。サラウンド空間に広がる音を正しい方向に定位させて聴くための技術です。
通常、映画館や家庭で映画を楽しむ場合、スピーカーが置いてある場所から音が聞こえてくるもの。空間オーディオでこのようなリスニング感を再現するために、AirPods ProとiPhoneなど送り出し側機器に搭載されている加速度センサーとジャイロスコープでユーザーの頭や身体の向きをリアルタイムに測定しながら、まるでコンテンツの中に入って音を聴いているようなリアルなサラウンド体験を実現するために作られた新技術がダイナミック・ヘッドトラッキングです。
この技術が備わることによって、iPadで映画を見ている時に、正面から聞こえていた役者の声に注意しながら顔を横に向けると、その声が正面方向に定位を保ったまま聞こえてくるようになります。
また、例えばバスに乗りながらiPadで映画を鑑賞している時、バスが進行方向を転換してもコンテンツの音が聞こえてくる位置が固定されていると、役者のセリフが左右に振られてしまい聴きづらく感じるもの。身体の向きを変えたときには音場全体の方向転換を合わせて行えるように、AirPods Proと送り出し側機器のセンサー群が賢く連携します。
ダイナミック・ヘッドトラッキングの技術を外部のコンテンツやアプリのデベロッパーが利用できるように、アップルはAirPods ProのCore MotionフレームワークのAPIも提供を開始します。今後、ユーザーの頭の位置や身体の向きを測定しながら、腕立て伏せの回数を正確にカウントしてくれるフィットネスアプリや、リアルな効果音が縦横無尽に飛び交う世界に深くのめり込めるゲームアプリが次々に誕生するかもしれません。