QualcommとBOEが次世代ディスプレイ開発で協業
Qualcommの技術統括子会社Qualcomm Technologiesと中国の大手フラットパネルディスプレイ(FPD)メーカ-である中国BOE Technology Group(京東方科技集団)はQualcommの開発した3次元指紋センサを搭載したディスプレイ製品を共同開発するための協業を行うことで合意したと発表した。
この協業は、今後、モバイルおよび関連する次世代移動体通信技術(5G)から仮想現実・拡張現実(VR/AR)などのXRおよびIoTにまで広範な範囲へ発展する見込みであるという。
Qualcomm Technologiesの幅広い製品ポートフォリオとBOEのインタフェースデバイスおよびスマートIoTシステムの専門知識を活用して、両社のセンサ、アンテナ、ディスプレイ画像処理技術などの多数の基盤技術を組み合わせて5G時代の理想的な協業により消費者に並外れた高性能な製品を届けるという。
第1段製品は2020年後半に提供予定
両社は、最初の一歩としてBOEのフレキシブル有機EL(OLED)パネルに超音波を利用した「Qualcomm 3D Sonic Sensor」を組み込んで付加価値を高めることに取り組むとしている。従来の光学式2次元指紋センサや静電容量方式センサより超音波を用いて3次元で検出したほうが本人識別精度が上がりセキュリティ上有利だとQualcommでは説明しており、これにより、スマートフォン(スマホ)メーカーは、薄くかつ高いセキュリティを備えた指紋認証機能を使用したユニークな製品を提供できるようになるという。
また、この協業により、サプライチェーンが合理化され、指紋センサをディスプレイに組み込んでしまうことで部品点数と研究開発費が削減されるという。両社が協力して開発を進める超音波3D指紋センサ搭載フレキシブル有機ELディスプレイは、2020年後半にも発売される予定であるという。
Qualcommの思惑はどこにあるのか?
指紋センサをディスプレイに組み込んでしまうFoD(Fingerprint on Display)が今後スマホ向け小型ディスプレイ業界の主流になる見込みで、そうなると指紋センサ単体だけの商売はやりにくくなる。そのため、Qualcommは指紋センサ技術をすべてBOEへ提供するように見えるが、実は超音波を発生するためのピエゾ圧電素子ベースのセンサだけではなく、指紋情報を読み出し解析するアルゴリズムを搭載したASICが必要で、こちらはQualcommが独占的に供給することになる。
Qualcomm Technologiesのシニアバイスプレジデント兼COOのRoawen Chen氏は、「Qualcommは中国企業との協業をさらに進めようと継続的に取り組んでいる。今回のBOEとの協業は、活気に満ちたエコシステムでイノベーションを推進するための中国企業との長期的な取り組みの1つの例となるだろう。Qualcomm 3D Sonic Sensor技術にとどまらず、5G、XR、IoTなどの主要分野でBOEとの協業をさらに強化していきたい」と今後両社はさらに広範囲に技術提携する抱負を期待を込めて述べている。
一方、BOEの高文宝副総裁は「グローバルにパネル業界をリードする企業として、世界中の顧客にさらに良いソリューションを提供していく」とグローバル展開を意識したコメントを述べている。
いままでスマホ向けプロセッサに注力し高いシェアを誇ってきたQualcommだが、中Huawei(半導体子会社HiSilicon)や台MediaTekの躍進で苦戦を強いられるようになってきた。Qualcommにとってディスプレイという新たな分野でBOEと協業することで、どのような製品が生み出されるのか、そしてそれをどうやって世界中のプレミアムスマホメーカーに売りこむのかが注目される。