米国半導体工業会(SIA) は4月3日(米国東海岸時間)、2020年2月の半導体市場(3か月移動平均)が前年同月比では5.0%増となったものの前月比では2.4%減の329億ドルとなったと発表した。特に、中国市場は同7.5%減となったが、これは従来からの米中貿易戦争による米国製半導体チップの中国への輸出制限に加えて、中国での新型コロナウイルス感染が拡大し、スマートフォンなどの最終製品メーカーの稼働率が低下したためと思われる。
SIAの調べるによる半導体市場は2019年12月から前月比でマイナス成長に転じている。SIAの社長兼CEOのJohn Neuffer氏は「2月の世界的な半導体売り上げは全体的に堅調で、前年同月の販売額を上回っているが、新型コロナウイルス感染拡大(COVID-19)の影響により中国市場の需要が大幅に落ち込んだ。新型コロナウイルス感染は中国から世界へ拡大しているが、パンデミックの影響は今のところ予測しがたい」とコメントしている。また同氏は「半導体は人々の経済、インフラストラクチャ、国家安全保障を支えており、治療法を見つけたり、患者の世話をしたり、自宅で仕事や勉強をしたりするのに役立つ多くの高度なテクノロジーの中心にあるので、必要不可欠な産業である」ともしている。
2020年2月の地域別売上高(どの地域で製造されたかではなく、どの地域に販売されたか)は、前月比で日本が同6.9%増とヨーロッパが同2.4%増となったものの、中国が同7.5%減、米州が同1.4%減、アジア太平洋/その他が同1.2%減となった。前年同月比では、南北米州が同14.2%増、日本が同7.0%増、中国が同5.5%増となったものの、ヨーロッパが1.8%減とアジア太平洋地域/その他が同0.1%減となった。
非常事態宣言下でも半導体の操業を各国に要望
半導体デバイスおよび半導体サプライチェーン企業を代表する世界の10の業界団体は連名で、各国が新型コロナウイルスの感染拡大と戦う公衆衛生対策(個人自宅待機、企業操業休止など)を策定する際に、半導体製造とサプライチェーンの業務を必要不可欠な業務(Essential Business)と認定するように各国に呼びかける声明を3月末に発表した。この声明に署名したのは、米国半導体工業会(SIA)、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)、日本の電子情報技術産業協会半導体部会(JEITA-SEAJ)、欧州・中国・台湾・韓国・シンガポール各国地域の半導体工業会、およびフィリピンとマレーシアの半導体・電子産業を代表する業界団体である(図2参照)。
この声明は、各国政府がロックダウンやShelter-in-Place(自宅退避)命令を発令したり、人の移動を制限する際、半導体製造とそのためのサプライチェーンの業務を「必須のインフラ(Essential Infrastructure)あるいは必須ビジネス(Essential Business)として指定するように要求したものである。
この声明では、ヘルスケアおよび医療機器、水道システムと電力、輸送および通信ネットワーク、金融システムなどの重要なインフラストラクチャおよび生命に関わる機器を制御および実現するテクノロジーの主要コンポーネントとしての半導体の本質的な重要な役割を各国政府に対して強調している。
州政府や地方自治体から、自宅退避・企業操業休止命令が出た場合も、最低限の日常生活をするために必要不可欠なインフラあるいはビジネスと認められた場合は例外的に操業が継続できる。
声明はまた、半導体サプライチェーンの高度に統合されたグローバルな性質のため、ある地域での操業制限によって生じた不足は、他の地域での生産では簡単に補うことができないことにも言及している。このため半導体製造に支障をきたすと、下流の最終製品の製造工場での操業停止をもたらし、デジタル経済に影響をおよぼすとしている。
10団体は、この要望書を各国政府に提出したが、SEMI米国本部によると、米国では新型コロナウイルス感染拡大防止のためになんらかの規制を行っている16の州の州知事および全米知事会、全米市長会などの議長あてに書簡を送ったとしている。しかし、SEMI本部のおひざ元である米国カリフォルニア州シリコンバレー一帯では、州政府および郡政府が、Shelter-in-Place命令下で半導体および半導体製造装置材料などの企業の操業を認めておらず、各社の製造ラインが3月17日以降停止しており、顧客への納期遅れや業績悪化は避けられない状況になっている。
SIAの調べでは、シリコンバレーには、Analog Devices(旧Linear Technology所有)などのレガシーな半導体ファブ(100~150mmウェハ)が4つほど残存しているが、大きな半導体ファブは皆無だという。一方、Intel最大の半導体工場があるオレゴン州やGLOBALFOUNDRIES(GF)のファウンドリ(旧IBM半導体工場を含む)のあるニューヨーク州および欧州では、非常事態宣言および自宅退避命令下にあるにもかかわらず、これらのファブの操業は必要不可欠な業務として認められている。