2020年第1四半期のNAND価格は前四半期比5%増

半導体市場動向調査企業である台湾TrendForceは、2020年第1四半期のNAND型フラッシュメモリの価格は、オフシーズンながら前四半期比5%増と値上がりするという予測を公表した。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、半導体を応用した最終製品の出荷が減少する一方で、主要なNANDサプライヤたちも2020年の設備投資を縮小する動きを見せているため、世界のNANDの総ビット出荷数量は前年比で約30%増と、従来に比べて低い水準に留まるためであるという。

2020年第2四半期のNAND価格も上昇傾向

2020年第2四半期に目を向けると、さまざまな種類のNAND製品の中で、特にエンタープライズSSDを北米と中国のクラウドサービスプロバイダーが積極的に購入し続けているため、深刻な供給不足に陥るという。

NAND市場でのビット消費全体に対するエンタープライズSSDのシェアが急速に高まっていることを考えると、その価格高騰により、NAND全体の価格は2020年第2四半期に少なくとも前期比で5%以上押し上げられるとTrendForceは見ている。

最終製品サプライヤはNANDを買い増し

さまざまな最終製品のサプライヤは、安全なレベルの在庫をできるだけ早期に構築したいと考えている。彼らは新型コロナウイルスの感染拡大が韓国と中国にある主要なNAND製造工場の正常な稼働に悪影響を与えることを危惧しており、第2四半期にNANDを買い増す動きが活発化することが予想されるという。このような状況下では、半導体企業と最終製品メーカーとの間で行われる大口契約価格交渉で、一部の顧客はダブルブッキングしているものと思われるとTrendForceでは見ている。

  • NAND市場予測

    2020年第1および第2四半期の用途別NANDの平均販売価格の前四半期比上昇率予測 (出所:TrendForce)

クライアントSSDは第2四半期も上昇

ほとんどのNANDサプライヤは、高いマージンを確保できるエンタープライズSSDの生産を増やすために製品構成を調整しているため、クライアントSSDの供給が厳しくなる見通しである。その一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年第1四半期のノートPCの出荷は減少したが、PCメーカー各社は年末までの安全な在庫レベルを維持することを目的に将来のNAND価格の上昇を予測してクライアントSSDの調達を継続しており、第2四半期の需要を引き上げる可能性もあるという。そのため、クライアントSSDの価格は2020年第2四半期も少なくとも5%の増加が見込まれるという。

スマホは下期、需要減少の予想

スマートフォン(スマホ)サプライヤでは、NANDの在庫レベルが低いことと、その後の価格高騰や新型コロナウイルス感染拡大によるNAND出荷への影響が予測されるため、調達計画を変更できなくなっている。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、2020年後半にはスマホの需要が減少する可能性が高いとみるスマホサプライヤが出始めており、これが年後半のNANDの調達に影響を与える可能性があるという。

NANDウェハの価格は第2四半期末には下落する可能性

スポット市場およびチャネル市場では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少により、一部のブランドSSD製品の価格が下落し始めている。

一方でウェハ価格は2019年第4四半期以降、エンタープライズSSDの在庫確保に向けた動きから供給不足から上昇傾向にあり、かつそこに新型コンソールゲーム機向け需要が重なっているため、TrendForceでは、ウェハ市場は3~4月にかけて上昇を続けるとの見通しを示している。しかし、サーバ、データセンター、ゲームコンソール向け需要も、2020年後半には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けることが懸念されることから、ウェハ市場の価格設定も2020年第2四半期末には下落に転じる可能性があるともしている。