集積型バックブーストコンバータ

適切なバックブーストコンバータは、制御および低RDS(ON)と高効率を備えた4つのDMOSパワートランジスタの両方を小型パッケージに内蔵したものです。このICは最も厳格な車載品質および信頼性要件を満たす必要があります。

入力電圧の変動によって生じる出力の乱れは、レギュレータの高速ライン過渡応答によって最小限に抑えることができます。一例として、図5では、22μFの出力容量で、3.5Vから13.5Vへの正の入力過渡によって生じる5V出力の偏位が+50mVであることが示されています。逆に、図6では、負の入力過渡が出力に生成する偏位も同様に50mVであることが示されています。高速負荷過渡応答は、出力の受動部品のサイズを最小化するために役立ちます。また、このICは40Vのロードダンプ耐性も備えます。

  • Maxim

    図5. 正のライン過渡応答

  • Maxim

    図6. 負のライン過渡応答

4mm角パッケージでバックブースト基板を小型化

図7の例は、高集積化と4mm×4mmという小型のTQFN-20パッケージを採用したICによって、バックブースト機能全体も277mm2という小型面積に収めることが可能であることを示すものとなります。

  • Maxim

    図7. バックブーストコンバータのプリント基板面積(277mm2)

4つの出力それぞれを個別に保護

図8のMaxim Integratedが提供するクワッドカメラプロテクタICは、4つの出力チャネルそれぞれに対する負荷電流を制限することを可能とします。各出力は、個別にSTB、STG、および過電流状態から保護されます。

2つのバック・ツー・バックDMOSトランジスタの低RDS(ON)によって低消費電力が保証され、小型パッケージによってプリント基板サイズも削減されます。このICはイネーブル入力およびデバイスの診断ステータスを読み取るためのI2Cインタフェースを備えています。また内蔵ADCによって各スイッチを流れる電流の読み取りが可能です。ASIL B-D準拠バージョンは、ADCを介した追加の診断測定に対応し、より高いフォルートカバレージを確保します。

  • Maxim

    図8. 入力電流および電圧保護

リモートカメラの効率的な電源とは

リモートカメラモジュールはパワーマネージメントシステムを内蔵し、小型かつ効率的で、高いコスト効率を備える必要があります。このアプリケーションでは、両方が全負荷または全負荷に近い領域で動作するカスケード動作用の2つのバックコンバータが内蔵され、また高いデューティサイクルを持つ必要があります(図9)。

2つのカスケード接続されたデュアルバックコンバータICで4つのリモートカメラレールをカバーすることによって、スペースを節約し効率を維持することができます。

  • Maxim

    図9. デュアルバックコンバータのカスケード

MaximのICで考える課題解決手法

車載バッテリからリモートカメラへの電源経路に沿って、乗り越えなければならない、いくつかの技術的な課題があります。

バッテリとのインタフェース部分は、ロードダンプ、アイドリングストップ、およびコールドクランク動作によって過酷なライン過渡が発生します。長い同軸ケーブル上で電力およびデータを転送する場合、各種のショート(STG、STB)からの保護が必要です。リモートカメラは、小型で、スペース効率と電力効率に優れたソリューションを必要とします。

それぞれの課題に対して、車載の品質および信頼性の厳格な要件を満たし、電力効率に優れ、さらに占有プリント基板面積を小さくできるMaximのソリューションを以下に提案してみます。バックブーストコンバータ「MAX20039」は、Power-over-Coax用の電源として効果的です。クワッドカメラ電源プロテクタ「MAX20087」は、小型、効率的な保護ICです。デュアルバックコンバータ「MAX20019」のカスケード構成は、小型スペースで高効率を実現します。この3つのADAS ICの組み合わせは、車載バッテリからリモートカメラへの経路に電力および保護を効果的に実現することを可能とします。

著者プロフィール

Bryan Dick
Maxim Integrated
シニアアプリケーションエンジニア
オートモーティブ事業部門で高電圧パワーマネージメント製品を担当

Bryan Dick
Maxim Integrated
アプリケーションエンジニア
オートモーティブ事業部門で高電圧パワーマネージメント製品を担当

Chintan Parikh
Maxim Integrated
エグゼクティブビジネスマネージャ
専門は車載パワーマネージメントソリューション
サンタクララ大学で経営工学の修士号を取得

Nazzareno (Reno) Rossetti
Maxim Integrated
電気工学博士であり、アナログおよびパワーマネージメントに関する専門家
トリノ工科大学(イタリア)で電気工学の博士号を取得