大正製薬は2020年2月14日、宇宙開発を目指す人々を応援することを目的に、「リポD SPACE PROJECT」を発足したと発表した。

同日開催された記者発表会では、プロジェクトの発足背景の説明が行われたほか、その一環として発売される「はやぶさ2」などが描かれた限定ラベルの「リポビタンD」が披露。また、制作中のフルドーム映画作品『HAYABUSA2 REBORN』の紹介のほか、「はやぶさ2」の津田プロマネとNECの小湊氏によるトークセッションも開催された。

  • リポD SPACE PROJECT

    「リポD SPACE PROJECT」について発表する、大正製薬 理事 マーケティング本部長の梅岡久氏(中央)、ライブの上坂浩光氏(左)、NEC 社会基盤ビジネスユニット 宇宙システム事業部 マネージャの小湊隆氏(右)

すべての始まりは「はやぶさ」ブログ

宇宙開発とリポビタンDとのつながりが生まれたのは、2005年のことだった。この年の11月25日から26日にかけて、小惑星探査機「はやぶさ」は小惑星イトカワへの2回目のタッチダウンに挑んでいた。この少し前、「はやぶさ」は1回目のタッチダウンに挑むも、うまくいかずにイトカワ表面に不時着する形となり、サンプルの回収に失敗。この2回目のタッチダウンはリベンジであり、そして最後のチャンスだった。

しかし、タッチダウンのリハーサルに始まり、1回目のタッチダウン、その後の対応、そして2回目のタッチダウンと、困難と緊張の日々が続いたことで、地上の運用チームは大きく疲弊。なかには徹夜続きのスタッフもいたという。そんななか、彼ら・彼女らの支えとなっていたのが、リポビタンDをはじめとする栄養ドリンクの存在だった。

そしてそのことは、ひょんなことから世の中に大きく知れ渡ることになった。この2回目のタッチダウンでは、運用チームの一員だった寺薗淳也氏(当時JAXA広報部・「はやぶさ」広報チーム)と、齋藤潤氏(当時「はやぶさ」理学カメラ主任責任者)が、ブログを使って情報発信し、「はやぶさ」の様子を逐一伝えていた。そしてブログを更新する様子を写した写真のなかに、彼らが飲んでいたリポビタンDの瓶が写り込んでおり、さらにブログが更新されるにつれて、その写真の中の瓶の数がどんどん増殖していった。

この光景は、日本国内だけでなく世界中でも話題になり、運用チームと同じくらい緊張していたファンの心を解きほぐすとと同時に、「はやぶさ」を動かしている人々の存在を強く印象づけ、そして彼らの仕事が激務であること、命をかけるほどの大挑戦であることに思いを馳せ、結果的に「はやぶさ」ファン、宇宙開発ファンが増える結果となった。

これ以来、リポビタンDはファンの間で「宇宙開発公式ドリンク」と呼ばれるようになり、関連グッズや動画、静止画が出回るなど、宇宙開発の現場には欠かせないものとなった。また、大正製薬もこれを受け、「はやぶさ」関連のイベントのスポンサーになったり、「はやぶさ」や後継機「はやぶさ2」の運用チームにリポビタンDを差し入れたりと、いつしか両者の間には深い絆が生まれたのである。

  • リポD SPACE PROJECT

    「リポD SPACE PROJECT」について発表する、大正製薬 理事 マーケティング本部長の梅岡久氏。スライドに写っているのが、リポビタンDと宇宙がつながるきっかけになった「はやぶさ」ブログの記事

ラグビーから学んだ宇宙開発の応援方法

会見ではまず、大正製薬 理事 マーケティング本部長の梅岡久(うめおか・ひさし)氏が登壇し、プロジェクトの発足背景について説明を行った。

梅岡氏はこれまで、リポビタンDを宇宙開発の現場に差し入れたり、さまざまなイベントに関わったりといった形で応援を続けてきたものの、そのなかで「まだまだ十分ではない」という思いがあったという。

たとえば、華々しく取り上げられる宇宙飛行士やプロジェクト・マネージャーと比べ、部品メーカーのエンジニアの一人ひとりなどにはスポットライトが当たることは少ない。また宇宙の話題を取り上げても、そこに出てくる用語が難しく、正しい理解がなかなか進まないことといった現状があり、それをどうにかしたいという思いから、このプロジェクトを立ち上げたと説明した。

また、もうひとつのきっかけとなったのは、2019年に大きな話題となったラグビー・ワールドカップだったという。大正製薬はかねてよりラグビーへのスポンサーを続けてきたが、昨年のワールドカップ以降、観客動員数が大きく増えるなど、ファンが目に見えて増加。その理由を探ったところ、「ONE TEAM(ワンチーム)」という流行語が生まれたように、チームで一丸となって物事に当たる姿が広く取り上げられたこと、またラグビーというルールがまだあまり知られていなかったスポーツを盛り上げるため、さまざまな場面で詳しく、わかりやすい解説が行われたことがあると分析。そして、いわゆるネガティブな意味ではない「にわかファン」が増えたことが大きかったのではと分析した。

  • リポD SPACE PROJECT

    「リポD SPACE PROJECT」について発表する、大正製薬の梅岡久氏

そして、この知見を活かし、宇宙開発の現場でがんばる関係者や、宇宙を目指す子どもたちを応援するとともに、彼ら・彼女らのがんばる姿を広く広報して"にわかファン"を増やし、そして宇宙という共通の夢、ゴールに向けた「同志」を増やすことで、宇宙開発をはじめとする日本の科学・技術を発展させ、日本を元気にすることにつなげていきたいと語った。

具体的な取り組みとしては、まずWebサイトやTwitterなどで、宇宙開発に関する情報を発信。漫画『宇宙兄弟』とのコラボレーション企画なども実施する。また、よみうりランドにあるモノづくりが体感できる遊園地エリア「グッジョバ」とコラボレーションし、宇宙をモチーフにした新アトラクションを来年春に開設するとしている。

さらに、CGプロダクション会社のライブが制作するフルドーム映画『HAYABUSA2 REBORN』(上坂浩光監督)への協賛や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商品化許諾を取得した「リポビタンD 小惑星探査機「はやぶさ2」応援限定ボトル」の発売などといった取り組みも行うと語られた。

  • リポD SPACE PROJECT

    宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商品化許諾を取得した「リポビタンD 小惑星探査機「はやぶさ2」応援限定ボトル」