『HAYABUSA2 REBORN』が見せる映像の力

続いて、『HAYABUSA2 REBORN』の監督を務める、ライブの上坂浩光(こうさか・ひろみつ)氏が登壇し、同作品の制作状況や、込めた思いについて語った。

上坂監督は2009年、初代「はやぶさ」帰還前に、その奮闘を描いた『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』を制作。さらに「はやぶさ」への想いが高じて、オーストラリアへ赴き、「はやぶさ」の帰還を見届けた。その際、「次のミッションが行われるなら、力の限り精一杯応援したい」と決意し、2014年に「はやぶさ2」を取り上げた『HAYABUSA2 -RETURN TO THE UNIVERSE-』を制作した。

そして現在は、「はやぶさ2」の小惑星リュウグウでの活躍などを踏まえた新作『HAYABUSA2 REBORN』を制作中で、今月末にも完成し、3月より上映予定だという。

上坂監督は「『REBORN』というタイトルには、『はやぶさ2』は『はやぶさ』の生まれ変わりだという思いを込めた」と説明。また、「『はやぶさ2』は遠く離れたリュウグウで、すごいことをやったが、実際にどう動いたのかを見た人はいない。それを見せることができるのが映像の力。それを多くの人に見てもらいたい」と語った。

そして、「この作品を通じて、『はやぶさ』と『はやぶさ2』を応援していた人にとって、なにか手応えのようなものを感じてくれたら嬉しい」と語られた。

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    『HAYABUSA2 REBORN』について解説する、ライブの上坂浩光氏

「はやぶさ」と「はやぶさ2」を支えた応援の力

そして最後には、「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーを務める津田雄一氏と、NEC宇宙システム事業部の小湊隆(こみなと・たかし)氏による、「応援の力」をテーマにしたトークセッションが行われた。

両氏はまず、最初に出会ったころのことを回顧。小湊氏は初代「はやぶさ」のとき、イオン・エンジンの担当者として関わっており、そのころ宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)から「はやぶさ」に参加していた津田氏と出会い、一緒にイオン・エンジンの運転計画を立てる役割を担ったという。津田氏はこのときのエピソードとして、「同僚(ISAS)の人は不親切で、なにも教えてくれなかった。でも、メーカーの小湊さんは親切に教えてくれて、いろいろと助けてくれた」と語り、会場の笑いを誘った。

また、このころは運用がまだ全自動化されておらず、人の力や計算に頼っていたところが多かったものの、小湊氏は「来週何々を動かすぞ」と率先して動き、自分でプログラムを書くなどしており、そんな姿を見て津田氏は「まるでスーパーマンのようだ」と思ったという。

続いて、「はやぶさ」の運用で忘れられないエピソードはと問われた両氏。小湊氏は、忘れられない思い出として、「はやぶさ」がイトカワに到着したとき、その未知の光景に驚いた一方、「想定外のことがたくさん起きたため、現場で臨機応変に対応し続けなければならなかったことがつらかった」と語った。また津田氏は、それを受け「そうした経験を通じて、想定外のことを想定する力が身についた。それが『はやぶさ2』でも活きている」と振り返った。

また、「はやぶさ」は2005年11月、2回目のタッチダウンのあとに一時行方不明になるが、ちょうどそのころが、ブログでリポビタンDのことが話題になったことが大正製薬の耳に入ったころにあたり、まさに行方不明になったタイミングで、運用チームにリポビタンDが箱入りで届けられたのだという。このときを振り返った小湊氏は、「ともすれば関係者の中だけで悩み、陰鬱な雰囲気になってしまうところだったが、リポビタンDが届けられたことで、『外に応援してくれている人がいるんだ』ということが実感でき、大きな力になった」と回想。

また、「いまでも、ファンの方からいただくメッセージやお手紙は、管制室の壁に貼り出している。疲れたな、というときにそれを読むと、とても元気をもらえる」と語った。

津田氏も「応援は私たちにとって大きな支えになっている。『はやぶさ2』のときも、2回目のタッチダウンをやるかやらないかで大きく揉めたが、このときファンの方から『プロジェクト・チームのことは信頼している。だからみなさんが考えるようにやってほしい』という意見をいただいた。泣くほど嬉しかった」と振り返り、「『はやぶさ2』は、プロジェクト・チームだけでなく、ファンの方々も含めた"ワンチーム"で運用しているんだ、と感じた」と語った。

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    「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーを務める津田雄一氏と、NEC宇宙システム事業部の小湊隆(こみなと・たかし)氏による、「応援の力」をテーマにしたトークセッションの様子

また津田氏は、「はやぶさ2」についてのこれまでと現状、そして今後についても説明。カプセルを地球に送り届けたあと、「はやぶさ2」の本体は別の天体に行くことが検討されているが、津田氏は「詳細はまだ決まっていない(公表できない)が、技術的には行ける天体の候補は多く、さまざまな検討を重ねている。予算はもちろん、科学的・技術的に行けるか、行くべきかといった問題もあるが、私たちは『はやぶさ2』を使って、さらにもっとすごいことをやりたいと考えている」と語った。そして「これからもプロジェクトを通じて、みなさんに元気を与えることができれば嬉しく思う」と続けた。

そして最後に、宇宙を目指す子どもたちや、夢を目指している人へのメッセージが語られた。

津田氏は「『夢を持とう』と言うのは簡単だが、実際どうすればいいかは難しい。しかし、人はみんな好奇心を持っている。少しでも興味を持ったものに、深入りしたり、挑戦したりしてほしい。その先に"夢"が見つかるはず。だから、子どもが何かに興味を持ったり挑戦したりしたとき、私たち大人は応援できるようにしたい。もちろん、大人だって夢を見ていい」と語った。

小湊氏は「この歳になってもわくわくできることはいっぱいある。それは、子どものときに感じたわくわくと同種のもの。だからわくわくを感じている子どもがいたら、それをずっと持ち続けて、育んでいくことが大事なんだということを伝えたい」と語った。

そしてイベントの最後には、「はやぶさ2」の無事の地球帰還を願って、全国から集められた応援メッセージの贈呈式が行われ、手書きメッセージがまとめられた冊子と応援幕が、梅岡氏から「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーを務める津田雄一氏へと手渡された。

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    イベントの最後には、「はやぶさ2」の無事の地球帰還を願って、全国から集められた応援メッセージの贈呈式が行われた

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    また同時に、応援メッセージを散りばめた応援旗の贈呈も行われた