メルカリは2月20日、初の事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」を開催しました。丸井、ヤマト運輸、NTTドコモといったパートナー企業とコラボして、新たな顧客体験価値の創造に乗り出していく考えを示しました。
1日に20億円の商品が流通するほどに成長
登壇したメルカリの山田進太郎代表取締役会長兼CEOは、はじめに事業の進捗について説明しました。フリマアプリ「メルカリ」を2013年7月にリリースした同社。山田氏は「サービス初日に売れたモノはわずか16品、流通金額は2万円でした」と当時を振り返ります。それから6年半が経ち、月間利用者数は1,500万人を超え、年間流通総額は4,900億円を超えました。現在では1日の流通金額が20億円に届く日もあるというから驚きです。
「いまでは、多くの方に日常的にメルカリを使ってもらえるようになりました。でも、まだまだ多くのモノが皆さんの家庭には眠っており、捨てられている。私たちは、日本市場の大きなポテンシャルを引き出したい。そういった意味では、メルカリもまだ道半ばです」と山田氏。
名だたるパートナー企業とコラボ
ここで、メルカリ日本事業の責任者である田面木宏尚氏がプレゼンを引き継ぎました。同氏は「ある人には不要になったモノでも必要とする人がいる。眠ったモノ資産を個人間で売買することで、もっと売りたい、もっと買いたいという意欲が引き出される」と説明。人が積極的にモノを買わなくなった現代において、フリマ事業は日本経済の活性化に貢献している、と強調します。
ここで田面木氏は「メルカリに出品したいけれど、まだ果たせていない人」が3,610万人もいるとの見立てを示します。出品を阻んでいるのは「使い方が分からない」「発送や梱包をする時間がない」「近くに発送できる場所がない」といった障壁。そこでメルカリでは、パートナー企業とのコラボを通じて、より使いやすいサービスへと成長していきたい考えです。
そのひとつが、リアル店舗の出店。新宿マルイ本館(東京都新宿区)に今春、「メルカリステーション」をオープンすることが決まりました。ここでは商品の受け取りや発送ができるだけでなく、サービスを学べるメルカリ教室、商品の撮影ブースを備え、また丸井グループ社員が梱包作業のサポートなども行う予定。田面木氏は「来夏までに、全国の主要10都市でも展開します」と宣言しました。
2020年4月より新宿マルイ本館はじめ、数店舗で「メルペイ」決済が導入される見込み。ユーザーがメルカリで商品検索をしたときに「マルイウェブチャネル」の商品を表示して購入の選択肢を増やす、といった相互連携も考えられています。
「あとよろメルカリ便」がスタート
ヤマト運輸との協業では、出品が完了して売れる前の商品の保管+売れた後の梱包・発送をサポートする「あとよろメルカリ便」を2月よりスタートさせます。田面木氏は「売れるまで商品が場所を取って困る、売れたあとの梱包や発送が面倒、といった課題を解決します」と紹介しました。
このほか、出品者が自由に発送できる無人の投函ボックス「メルカリポスト」を今夏より2023年までに全国5,000カ所に設置していきます。使い方は簡単で、商品が売れたあとにアプリに表示されるQRコードをポストの所定の位置にかざすと自動で発送ラベルが印刷され、それを商品に貼付して投函するだけで発送が完了する仕組みです。
メルカリポストは、マルイ新宿本館にオープンする「メルカリステーション」に設置するほか、今夏より全国のドコモショップや、消費者の生活導線上、人口密集地を中心に設置していく予定です。
さらに、メルカリポストを進化させた「メルカリポストプラス」も発表されました。こちらは、パナソニックが開発に協力したもの。詳細は今春、発表するとしています。メディアに公開されたイメージ動画には、商品を投函できるポストがあるだけでなく、出品物を置くと商品を自動採寸する機能、顔認識機能なども搭載。コンビニに設置された際には、コンビニの商品を置くとセルフレジとして機能する、といった使い方もできるようでした。
さまざまな企業に顧客データを開放
最後に、執行役員VP of Business Operationsの野辺一也氏が登壇。パートナー企業と、二次流通データを連携していくと発表しました。メルカリでは、数十億規模の商品データ、月間1,500万人を超える利用者の属性データ、行動データを保有しています。これらの二次流通データをパートナー企業に開放することで、企業のマーケティング、商品企画、新たなソリューション開発などに活かしていくことが考えられています。
「個人情報には最大限の配慮をしたうえで、企業には積極的にデータを提供していきたい」と野辺氏。例えば企業は、メルカリの利用者データを取得することでユーザーの購入・検索・閲覧といったアクションデータが把握できるので、自社ECやリアル店舗で、顧客にあわせた商品提案が行えます(顧客データ連携)。また、ユーザーがメルカリで商品検索したときに在庫がなかったときには、類似商品の新品を表示できるでしょう(商品データ連携)。このほか、メルカリステーションやメルカリポストの利用時に取得したユーザーの発送エリア、利用時間帯といったデータを近隣の企業が取得すれば、ユーザーの生活圏にある店舗のクーポンを発行することができます(地域データ連携)。
NTTドコモとはポイントや電子決済で連携
最後に、NTTドコモとの提携について説明がありました。すでに2月4日に、ポイントと決済を融合すると発表したばかりの両社。メルカリ、メルペイの年間流通総額の約5,000億円とドコモ側の年間利用の約2,000億ポイントが融合することで「新たな顧客体験を提供したい」(野辺氏)と意気込みます。
将来的には、dポイント加盟店における購入履歴をメルカリと連携することで、dポイントで購入した商品を簡単にメルカリに出品できるようにしたい考えです。
最後に、野辺氏は「日本最大のフリマアプリとして蓄積してきた二次流通データがある。これらをもとにパートナー企業とコネクトすることで、新たな購買体験を提供していきます」と改めて説明しました。
リユース市場を盛り上げるだけでなく、日本国内の消費行動も活性化させたい、と大きなビジョンが語られたメルカリの事業戦略発表会。パートナー企業との協業が矢継ぎ早に紹介され、業種業態の垣根を飛び越えたコラボレーションが加速している現状が明らかになりました。