さて、この記事をご覧いただいている皆様には今更感もあると思うが、IIJmioを運営するIIJという会社は、その歴史や業界でのポジションの重要性に対して、残念ながら知名度は高いとは言えない。IIJとしてもそのことは痛感しているようで、今回はIIJ広報部の堂前氏による、IIJという会社の紹介が行われた。

  • IIJmio meetingの司会進行でおなじみの堂前さん。今回はIIJmio以外のIIJの顔を紹介した

IIJの正式な社名は「インターネットイニシアティブ」。英語名称のときは、ここに「ジャパン」を付けて略称が「IIJ」になる。その名の通り、日本における商用インターネット接続の歴史はIIJに始まったと言え、さまざまなインターネット接続プロバイダー(ISP)に対してインターネット接続回線を提供する、一次プロバイダーとも呼ばれる存在だ。

その後も、法人や官公庁を主な顧客として、インターネット接続回線の提供やシステムインテグレーション、セキュリティ、ホスティングなどを大きな事業の柱として成長を続けてきた。IIJmioを代表とするMVNO事業は、個人向けと法人向け事業を合わせて全体の約22%を占めるにすぎない。決して「格安スマホだけの会社」というわけでもないのだ。

  • IIJ全体としてはやはり法人向けの事業割合が高い。そういえば1990年代中頃、「@iij.ad.jp」のメールアドレスを持っている人は尊敬と羨望の目で見られたものだ

また、少し詳しい人が言う「IIJは日本のインターネットの根幹・土台」「バックボーン」という表現についても、若干の解説を。そもそもインターネットという大きなネットワークがあるわけではなく、各地にあるネットワーク同士を繋いだ状態がインターネットであり、あるネットワークからインターネットへ接続する部分が「バックボーン」になる。ネットワークの繋がりかたは一直線ではなく網目上になっている。

こうした中、IIJは日本中、および世界中にネットワーク拠点を持ち、その拠点同士が太い回線で繋がっているため、「IIJというネットワークが高速である」といえる。さらに世界中のISPと相互接続することで、多くのISPのネットワークと直接・間接的に多様な接続経路を築きあげており、これがIIJを経由して接続しているISPや企業から見た時の「バックボーンの太さ」につながる、というわけだ。

  • IIJ自体が強力なネットワークを所有しており、そこに繋がるネットワークにとってのバックボーンとなっている

同様に、世界規模での自社回線を保有する企業は日本にもいくつかあるが、IIJはその中でも最古参のひとつであり、その回線品質の向上や、データセンターやサーバ管理の向上に常に努めている。決して何やらおもしろおっさんたちがいる格安スマホ屋さんで止まる存在ではないのだ。

筆者はダイヤルアップ接続時代から、かれこれ20年以上IIJ関連の取材に関わってきているのだが、自前でルーターを作ってしまったり、音楽配信に携わったりと、いつも新しく多彩な事業に取り組んでいる様子に感銘を受けている。伝統に培われた高い技術と新しいものへのチャレンジ精神がIIJmioにおいてもフルMVNOやeSIMなどの新サービスとして芽吹いているわけで、今後ともこうした姿勢が続いていくことを期待したい。