3つめのセッションは「プライベートLTEとパブリックLTEの相互運用における問題とその解決」と題して、昨今通信業界の最もホットな話題のひとつであるプライベートLTEについての技術的な解説が、同社の圓山大介氏から行われた。

  • 圓山さんからはプライベートLTEについての技術的な解説が

プライベートLTEとは、以前PHSで使用されていた1.9GHz帯でLTEの通信技術を使い、免許を取得する必要なく基地局を設置可能な、内線通信システムだ。TD-LTE(バンド39)にPHSの技術を加えた「sXGP」と呼ばれる規格が用いられる。現在、IIJは東京大学大学院の中尾研究室と協力してプライベートLTEの研究を行なっている。

  • IIJmio meeting 21に展示されていたsXGP基地局。100m程度しか電波は飛ばないため、Wi-Fiの置き換えのようなイメージになる

Wi-Fiとの違いは、スケジューリングの効率が高いため、同時接続数が設計段階から桁違いであることや、SIMによる認証や暗号化の強度といったセキュリティ面、強力なエラー訂正機能による通信の信頼性、そしてアクセスポイント同士の干渉が少ない点など、Wi-Fiに対するメリットも大きい。またWi-Fiと比べて遥かに多くの機器を収容できるため、IoTに関してもWi-FiよりプライベートLTEのほうが適している。

現在、病院や企業などで内線システムにPHSを採用しているところが多いが、これは使用する電波が医療機器に与える影響が少ないこと、通信費が安いことに加え、内線用の端末がそのまま屋外でPHSとして利用できることもポイントだった。プライベートLTEもSIMを使って認証を行う点はパブリックな(キャリアによる)LTEと変わらないため、SIMを工夫すれば同じ端末でプライベートLTEとパブリックなLTEを使い分けることができる。また、帯域が広いことから、音声やテキストだけでなく、画像や動画を使って、よりリッチなコミュニケーションのできる内線システムになり得るわけだ。

そんな素敵なプライベートLTEだが、いいこと尽くめとはいかない。SIMを発行するなど、設備面が複雑なため、自営ネットワーク用としては運用の敷居が高いこと、既存の自営PHS設備がある環境では使えないこと、Wi-Fiのようなフリーのアクセスポイントはないため、自営ネットワーク以外ではパブリックLTEとの併用が必須な点などが弱点といえる。

目下の問題が、プライベート基地局からパブリック基地局へ(またはその逆)切り替える際、一度通信を切断し、SIM(プロファイル)を切り替えて繋ぎ直さねばならないことだ。現在試験期間中の楽天モバイルとauのローミングにおいても、楽天のネットワークからauに切り替わる際には一度切断が発生しており、2つの異なるネットワークをまたぐと言うのは、なかなか難しいようだ。

  • パブリック基地局とプライベート基地局がエリア的に重なっているため、プライベート→パブリックはうまくいっても、パブリック→プライベートに課題が残る

また、プライベートLTEではすべて同じPLMN(携帯電話の事業者コード)「44190」を使うのだが、自分のプライベートLTE以外のプライベートLTE網内で接続を試みた場合、失敗すると自分の網内でも自動で再接続しなくなるなどの問題がある。

IIJはフルMVNOとしてSIMを発行することができるようになったため、SIMを改造して、プライベート・パブリック双方に同時に在圏することに成功していると言う。ただしパブリックからプライベートへの接続は制限事項があるようで、このあたりは端末側の挙動なども含めて、課題になっているようだ。

個人宅での固定電話が少なくなったこともあり、個人でプライベートLTEを使う機会は少なそうだが、法人関係などで注目している人は多いはず。今後もホットな話題の一つとして注目していきたい。