ある意味、Tim Cook CEOとトランプ大統領の「良好な関係」は今年最大のサプライズでした。多くのシリコンバレー企業がそうであるように、Appleも民主党寄りの企業であり、トランプ政権とは様々な政策方針で相容れない関係です。しかしながら、政治問題に関して相反する政権と距離を置いてただ批判するのではなく、Tim Cook氏は粘り強く問題解決のための直接交渉を試みてきました。最初は対立色が強かったものの、今では何かあればすぐに電話で話合う間柄に。トランプ大統領に「彼は直接電話してくるが、他の人達(シリコンバレーのリーダー)はそうではない」と言わしめています。だからといって、トランプ政権に譲歩しているわけではなく、Appleの意見や姿勢をしっかりと通しています。対立する存在にもAppleの価値を認めさせる交渉術、危機的な状況に対処するTim Cook氏のリーダーシップが評価されました。

昨年の「Mac mini」、そして今年の「iPad mini」と「iPod touch」と、長くアップデートされず、消えていく可能性も指摘されていた製品の新モデル登場はそれらの製品ユーザーを大いに喜ばせました。Mac miniは手頃な価格で柔軟なデスクトップ、iPad miniは手のひらサイズのタブレット、iPod touchは携帯サービス契約不要でiOSアプリを使えるハンドヘルドというユニークな特徴を持っています。今のApple製品ユーザー全体から見たら主流ではありませんが、アップデートサイクルは長くてもそうしたユーザーをフォローしていくAppleの姿勢は、同社製品を購入する際の安心感を高めます。

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また、故障しやすい、修理しにくいという問題でユーザーに不評だったバタフライキーボードを廃して、16インチのMacBook Proにはシザー構造のキーボードを採用しました。12月には、約束していた通り、プロを満足させる処理性能と内部拡張性を備えたMac Proを発売しました。Appleというと、その製品を通じてユーザーに変化を強いるメーカーですが、今年は「聞く耳を持つApple」を印象づけました。

でも、人々の声を聞いて形にしたところに大きなサプライズはありません。AirPods Proのような私達を驚かせる製品が登場するのか、2020年のAppleを予想する後編をお楽しみに!