トピック:Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)って?
2019年は世界的に5Gへの関心が高まった1年でしたが、一方で同じように、高速な無線通信規格として注目されたのが「Wi-Fi 6」です。これはその名前の通り第6世代のWi-Fi規格であり、より具体的には「IEEE 802.11ax」という規格のことを指しています。
では、IEEE 802.11axが従来のWi-Fiと何が違うのかというと、要は通信速度が速いのです。IEEE 802.11axの理論上の最大通信速度は9.6Gbpsで、1つ前の規格となる「IEEE 802.11ac」(最大6.93Gbps)と比べ速くなっているのはもちろんなのですが、より大きなポイントとなるのは実効速度です。
Wi-Fiもベストエフォート型の無線通信規格であり、周辺の条件によって速度が変化することから、理論値と実際の通信速度は大きく異なることが少なくありません。それゆえIEEE 802.11acでは実際の通信速度が800Mbps程度だったのですが、IEEE 802.11axは安定して1Gbpsを超える通信速度を実現できる、つまり「ギガ越え」を実現するとして注目されているワケです。
そしてこのWi-Fi 6は、2019年よりサムスン電子の「Galaxy S10」シリーズを皮切りとして、アップルの「iPhone 11」シリーズなどいくつかのスマートにも搭載されています。それゆえ2020年に5Gの商用サービスがスタートすれば、5GとWi-Fi 6で、どこでもギガ超えを実現するスマートフォンが多数登場することになりそうです。
ワイヤレスイヤホンが増えてるのはなぜ?
2019年、スマートフォンの周辺機器で盛り上がりを見せたのが、完全にケーブルをなくした左右分離型のワイヤレスイヤホンです。ソニーのワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」がヒットしたり、アップルが高機能版のAirPodsである「AirPods Pro」を投入したりするなど、その数や種類も大幅に増えており、最近では大手家電量販店にワイヤレスイヤホン専門のコーナーが登場するほどの盛り上がりぶりです。
なぜワイヤレスイヤホンがそこまで盛り上がっているのかというと、1つはイヤホン端子のないスマートフォンが増えていること。2017年よりイヤホン端子を廃止したアップルに追従して、多くのスマートフォンメーカーがハイエンドモデルを中心にイヤホン端子の排除を進めており、2019年にはスマートフォン最大手のサムスン電子が、「Galaxy Note10」でイヤホン端子の排除に踏み切ったことからその流れは決定的となり、それだけワイヤレスイヤホンの重要性が高まったといえます。
そしてもう1つは、低価格なワイヤレスイヤホンが増えていること。最近では数千円で購入できるものも登場しており、ケーブルがないという利便性を誰もが手軽に得られるようになったことが、人気に火がついた要因といえるでしょう。
そうしたことから来年もワイヤレスイヤホンは活況を呈することになりそうですが、最近ではグーグルやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなどの、いわゆる「プラットフォーマー」がワイヤレスイヤホンの市場に参入するなど、プレーヤーに変化が見られるようになってきました。それゆえ今後、ワイヤレスイヤホンは単に音楽を聴くというだけにとどまらない、よりインテリジェントな存在へと進化していく可能性が高そうです。
著者プロフィール
佐野正弘

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。