2019年も残りあとわずかになりましたが、今年も携帯電話業界では大きな出来事が目白押しでした。そうした中から携帯電話業界の周辺で起きたさまざまな出来事を、Q&A形式で分かりやすく解説していきましょう。今回はスマホ周りのトピックを集めた「周辺動向編」です。

トピック:ヤフーとLINEが統合するとどうなるの?

2019年11月、ヤフーとLINE社は経営統合することを発表しました。ヤフーは国内のポータルサイトの最大手「Yahoo! Japan」を運営しており、LINE社はメッセンジャーアプリで国内最大手の「LINE」を運営していることから、両社が経営統合すれば国内では最大のインターネット企業が誕生することとなるだけに、大きな驚きがありました。

  • ヤフーとLINE社は2019年11月18日に経営統合を発表。統合が完了すれば「Yahoo! Japan」と「LINE」が1つのグループで運営されることとなる

両社が合併したのは、「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)など世界のインターネット大手に対抗するには規模が小さすぎるという危機感があったためだそうです。両社が経営統合しても規模はGAFAの足元にも及ばない状況に変わりはないので、今後どのような戦略をもって対抗していくのかは注目される所です。

ですが多くの人にとって気になるのは、統合によってYahoo! JapanとLINEのサービスがどう変わるのか? という点ではないでしょうか。両社の事業は互いに補完し合えるものも多いのですが、一方で「Yahoo!ニュース」と「LINE NEWS」、「PayPay」と「LINE Pay」など競合しているサービスも多く、統合の暁には何らかの整理・統合が必要になってくるでしょう。なお、LINE Payやメルペイ、ドコモ、KDDIらが参画するスマホ決済同盟「MoPA」は、「LINEの方針転換」を理由として12月19日に解散が発表されました。

とはいえ両社は国内では規模が大きい企業であることから、経営統合にはさまざまな政府の承認が必要であるなど時間がかかるため、実際に統合が完了するのは2020年10月頃とされています。それまでYahoo! JapanとLINEのサービスは従来通りの体制で運営されるため、2020年中に大きな動きが起きる可能性はあまり高くないといえそうです。

トピック:スマホ決済って使ったほうがいいの?

2019年に大きな話題となったものの1つに、QRコード決済を主体としたスマートフォン決済が挙げられるでしょう。その理由は、2018年末にPayPayが利用者に100億円を還元するキャンペーンを実施して以降、各社がお得な大規模キャンペーンを相次いで実施したこと。お得さにひかれてQRコード決済に登録した人も多いのではないでしょうか。

  • PayPayは10日余りで終了した2018年末のキャンペーンに続き、2019年2月には条件を変更しながらも、新たな100億円還元キャンペーンを実施して話題を呼んだ

ですが急拡大のあまり、スマートフォン決済にはネガティブな側面が少なからずあったのも事実です。事業者の乱立が消費者に混乱を与えただけでなく、サービス開始を急ぐあまりセキュリティがおろそかになり、不正が相次いだサービスも見られました。不正利用の多発でサービス開始早々に終了へと追い込まれた、セブン&アイ・ホールディングスの傘下企業が提供した「7Pay」はその象徴といえるでしょう。

それゆえスマートフォン決済に不安感を抱く人も多いかと思いますが、そうした問題が多発して以降、各社もセキュリティ対策には非常に力を入れるようになっています。それに加えて、消費税増税を機として政府が、スマートフォン決済をはじめとしたキャッシュレス決済の普及に力を入れていることから、今後もスマートフォン決済の利用がお得さにつながることは確かであり、利用して損はないと思われます。

とはいえヤフーとLINEの経営統合などもあり、競争が落ち着いてきたことから、今後大規模な還元キャンペーンは数が減っていくでしょう。その一方で決済アプリの利用者が増えたことで、それをプラットフォームとして活用する「スーパーアプリ」化を進める企業が出てきたことから、来年は決済アプリ上で提供されるサービスの充実度合いが、新たな競争を呼ぶことになりそうです。

トピック:災害時、スマホでできる対策は?

ここ最近急増している自然災害ですが、中でも2019年は台風15号・19号が東日本で猛威を振るい、広範囲にわたって大きな被害をもたらしました。筆者の地元でも河川の氾濫などで非常に大きな被害を受けており、連日の災害報道には心を痛めている状況です。災害に遭われた方々の1日も早い復旧・復興を願っております。

そうした相次ぐ自然災害を受け、2019年は災害時のスマートフォン活用も注目されました。スマートフォンは災害時、緊急連絡手段や情報を得る手段として重要ですが、いざ災害が発生するとネットワークが混雑して通信がしづらくなることが多いですし、停電してしまえばスマートフォンが充電できず、長時間利用できなくなってしまうことも少なくありません。

そうしたことから我々ができる備えの1つとしては、日常的な通信手段だけでなく、災害時専用の連絡手段が存在することを覚えておくことです。災害発生時に利用できる「災害用伝言板」や「Web171」、声で安否を伝えたい場合は「災害用音声お届けサービス」などであれば、最低限の通信量で安否確認ができるので大いに活用したい所です。

そしてもう1つ、多くのスマートフォンには必要最小限の機能の利用に絞るなどして、消費電力を大幅に抑えられることを覚えておくべきでしょう。iPhoneの場合は「低電力モード」、Androidの場合も機種やキャリアによって異なりますが、「非常用節電機能」「ウルトラ省電力」などがそうした機能に相当するので、少しでもバッテリーを長持ちさせたい時にぜひ活用してみて下さい。

また外出先で被災した時、お店などであれば「00000JAPAN」という緊急時専用のWi-Fiスポットが現れるので、そちらも利用できることも覚えておくと役立つでしょう。今後も大きな自然災害の発生が予想されるだけに、いざという時にスマートフォンを有効活用できるよう、モバイルバッテリーの準備などハード面だけでなく、知識の面でも備えをしておくことをお勧めします。

  • NTTドコモが公開した移動基地局車。携帯電話会社は災害発生時、こうした移動基地局車などの活用で迅速な復旧に当たっていることも覚えておくべきだろう

トピック:Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)って?

2019年は世界的に5Gへの関心が高まった1年でしたが、一方で同じように、高速な無線通信規格として注目されたのが「Wi-Fi 6」です。これはその名前の通り第6世代のWi-Fi規格であり、より具体的には「IEEE 802.11ax」という規格のことを指しています。

では、IEEE 802.11axが従来のWi-Fiと何が違うのかというと、要は通信速度が速いのです。IEEE 802.11axの理論上の最大通信速度は9.6Gbpsで、1つ前の規格となる「IEEE 802.11ac」(最大6.93Gbps)と比べ速くなっているのはもちろんなのですが、より大きなポイントとなるのは実効速度です。

Wi-Fiもベストエフォート型の無線通信規格であり、周辺の条件によって速度が変化することから、理論値と実際の通信速度は大きく異なることが少なくありません。それゆえIEEE 802.11acでは実際の通信速度が800Mbps程度だったのですが、IEEE 802.11axは安定して1Gbpsを超える通信速度を実現できる、つまり「ギガ越え」を実現するとして注目されているワケです。

そしてこのWi-Fi 6は、2019年よりサムスン電子の「Galaxy S10」シリーズを皮切りとして、アップルの「iPhone 11」シリーズなどいくつかのスマートにも搭載されています。それゆえ2020年に5Gの商用サービスがスタートすれば、5GとWi-Fi 6で、どこでもギガ超えを実現するスマートフォンが多数登場することになりそうです。

  • 2019年にはWi-Fi 6に初めて対応したスマートフォン「Galaxy S10」シリーズが登場。今後も、2020年からは5Gと合わせて、通信速度はギガの時代へと突入することとなりそうだ

ワイヤレスイヤホンが増えてるのはなぜ?

2019年、スマートフォンの周辺機器で盛り上がりを見せたのが、完全にケーブルをなくした左右分離型のワイヤレスイヤホンです。ソニーのワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」がヒットしたり、アップルが高機能版のAirPodsである「AirPods Pro」を投入したりするなど、その数や種類も大幅に増えており、最近では大手家電量販店にワイヤレスイヤホン専門のコーナーが登場するほどの盛り上がりぶりです。

  • アップルが2019年10月に投入したワイヤレスイヤホンの「AirPods Pro」。新たにノイズキャンセリング機能を搭載するなど高機能化を図ったことで人気を獲得しているようだ

なぜワイヤレスイヤホンがそこまで盛り上がっているのかというと、1つはイヤホン端子のないスマートフォンが増えていること。2017年よりイヤホン端子を廃止したアップルに追従して、多くのスマートフォンメーカーがハイエンドモデルを中心にイヤホン端子の排除を進めており、2019年にはスマートフォン最大手のサムスン電子が、「Galaxy Note10」でイヤホン端子の排除に踏み切ったことからその流れは決定的となり、それだけワイヤレスイヤホンの重要性が高まったといえます。

そしてもう1つは、低価格なワイヤレスイヤホンが増えていること。最近では数千円で購入できるものも登場しており、ケーブルがないという利便性を誰もが手軽に得られるようになったことが、人気に火がついた要因といえるでしょう。

そうしたことから来年もワイヤレスイヤホンは活況を呈することになりそうですが、最近ではグーグルやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなどの、いわゆる「プラットフォーマー」がワイヤレスイヤホンの市場に参入するなど、プレーヤーに変化が見られるようになってきました。それゆえ今後、ワイヤレスイヤホンは単に音楽を聴くというだけにとどまらない、よりインテリジェントな存在へと進化していく可能性が高そうです。

著者プロフィール
佐野正弘

佐野正弘

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。