ALEは11月29日、同社の人工流れ星衛星2号機「ALE-2」に関する記者会見を開催し、同衛星のミッションについて説明した。ALE-2は、Rocket LabのElectronロケットにより、ニュージーランドの射場より打ち上げられる。順調に進めば、2020年の春以降に、人工流れ星のサービスを開始する予定だという。
ALE-2はこの日、打ち上げられる予定だったが、地上システムの問題により、延期となっていた。打ち上げのウィンドウは、12月12日まで。Rocket LabのElectronにとっては、これが記念すべき10機目の打ち上げとなる。
2号機の流れ星には新色ブルーが追加
同社の人工流れ星衛星は、1号機がすでに2019年1月に打ち上げられており、これで2機目。大きさ54×57×72cm、重量75kgの超小型衛星で、1号機と同じく、流れ星の素となる"流星源"を400粒搭載する。カラーは青が追加され、白、オレンジ、緑、ピンクの5色を用意。放出装置により、衛星後方に秒速200~400mで撃ち出す仕組みだ。
放出後の流星源は、約7,500km、18分間ほど飛行してから、大気圏に再突入、高温になることで発光する。明るさはマイナス1等星程度になると予測されており、都会でも十分見えるはずだ。地上では、直径200km程度の範囲で人工流れ星を楽しめる見込み。
狙った場所に落とすために、重要なのは放出時の精度だ。方向は衛星の姿勢で調整。スタートラッカで精密に計測し、リアクションホイールで制御する。精度は0.1°の予定だが、ミッション上は5°程度までは許容されるとのこと。一方、速度は可変で、±1%以内を実現。方向・速度を変えながら連射することで、地上での見え方を自由に設定できる。
特徴的なのは、姿勢決定、位置決定ともに、3重の冗長構成を採用していることだ。通常、無人機では2重までのことが多いが、超小型衛星としては異例の3重構成を採用したのは、安全性への懸念を払拭するだめだ。3系統の計算結果が一致した場合のみ、流星源を放出することで、間違った方向に撃ち出すことが無いようにしている。
流星源の放出機能は1号機と同様だが、大きく異なるのは、2号機にはコールドガスのスラスタが搭載されていることだ。2号機が投入されるのは高度400kmの太陽同期軌道だが、衛星は薄い大気の影響を受け、何もしなければ高度が徐々に下がる。スラスタで高度を維持すれば、より長期間の運用が可能となる。
一方、1号機には、膜を展開して、高度を下げる機構が搭載されていた。これは、相乗りで投入された軌道の高度が500kmと高かったためだ。高度400kmを周回する国際宇宙ステーションへの安全性確保のため、流星源の放出ミッションは、高度400km以下で実施する計画。まずは、高度を下げる必要があったのだ。
ALEの事業はエンタメのみにあらず
1号機はこれまで、軌道上で初期チェックを行っており、軌道降下はまもなく開始する予定。2号機は後から打ち上げるものの、同社が希望した高度400kmに直接投入することができるので、先にサービスインするのは2号機である可能性が高そうだ。
同社は人工流れ星により、2つの事業を展開する計画。
1つはエンターテインメント事業だ。ビジネスのイメージとしては、花火大会に近いだろう。衛星なので、世界中の都市で開催が可能。スポーツイベントや、クルーズツアーにも需要があると見る。なお費用については、取締役/COOの藤田智明氏によれば、「パッケージ次第で大きく変わるが、1回で1億円前後を検討している」とのこと。
もう1つはデータサービス事業だ。人工流れ星を分光観測することで、中間圏のデータを収集。それを、気象現象のメカニズム解明に役立てるという。気象会社、政府機関、研究機関などが顧客として考えられ、当初はエンターテインメント事業が主流なものの、年々データサービス事業が拡大し、最終的には追い抜く想定だという。
代表取締役社長/CEOの岡島礼奈氏は、「科学や技術というと、"取っつきにくい"と避ける人がいるが、流れ星はみんな親しみを持ってくれる。これをきっかけに、宇宙や科学に興味を持ってもらえれば」と、人工流れ星ビジネスの狙いを説明する。
同社はエンターテインメント事業に注目されることが多いが、長期的には、人類の持続的な発展への貢献を目指す。今回初公開された同社のビジョンによれば、2030年代以降は月や惑星、2050年代以降は太陽系外へと、フィールドを拡大。今後、流れ星以外のミッションも積極的に展開していくという。