今年の8月19日、NVIDIAとMicrosoftは人気ゲーム「Minecraft」のWindows 10版がリアルタイムレイトレーシングに対応することを発表した。そして11月23日、日本での体験会が開かれたのでさっそくレポートをお届けしたい。ちなみに、Minecraftのリアルタイムレイトレはこれが日本初公開だそうだ。その美しき画面が少しでも伝わればと思う。

最新パソコンがあればマイクラをもっと楽しめる

NVIDIAとMinecraftは8月19日、ドイツで開かれたゲームショウ「Gamescom」で全世界で1 億7,600万本以上販売された大ヒットゲーム「Minecraft」のWindows 10版がリアルタイムレイトレーシングに対応すること発表した。すでに、効果や詳細についてはNVIDIAのサイトで公開されているが、11月23日、日本で体験会が開催された。実際にプレイした感想をレポートしていきたいと思う。

  • 「マイクラ」の「レイトレ」が凄い!

    11月23日メディア向けのリアルタイムレイトレーシング対応Minecraft(開発版)の体験会が開催された

まず、知っておきたいのはMinecraftが対応する「リアルタイムレイトレーシング」はWindows 10に含まれるDirectX 12のDXR(DirectX Raytracing)を使用している。現状DXRに対応するGPUはNVIDIAの「GeForce RTX」シリーズ(と一部のGTX、TITAN)のみ。つまり、体験するにはGeForce RTXシリーズを搭載したビデオカードが必要になること。そして、Minecraftにはスマホや家庭用ゲーム機などさまざまなデバイスに展開しているが、リアルタイムレイトレーシングに対応するのはPCではメインと言えるJava版ではなく、Windows 10版であることだ。

Windows 10版を所有しているユーザーに対しては無償アップデートで対応するとのこと。また、原稿執筆時点では2020年に公開予定としている。あくまで見た目を美しくするアップデートでWindows 10版の特徴である、Switch版やスマホ版などとのクロスプレイには影響はないとしている。

技術的な話をするとMinecraftが導入するのはレイトレーシングの手法の一つで「パストレーシング」と呼ばれるもの。光の伝搬をシミュレートするもので、太陽やグロウストーン、溶岩などさまざまな光源からの光をサイズや形状、距離によってくっきりした影になったり、ボヤッとした影になったり、壁などに当たった光が拡散したり、金属を含むブロックや氷、水などに映り込んだり(鏡面反射)する。

難しい話はさておき、映像だけでも見て欲しい

実際に見たほうが効果が分かるだろう。今回の体験会では、ごくノーマルないわゆる「Vanilla」状態のワールドとNVIDIAによって作られたパストレーシングの特徴を体験しやすいモダンな家「NVIDIA Material Sandbox」をプレイできた。

  • Vanilla、NVIDIA Material Sandbox、2つのワールドでプレイできた

Vanillaの世界では、光と影の表現がリアルになっているのが分かりやすい。光源の一つになる「溶岩」の赤い光が周囲をボヤッと明るくしたり、金属のブロックにランタンを置けばその光が金属部分に映り込んだり反射したりする。ラピスラズリ鉱石やレッドストーン鉱石も青や赤の鉱石部分は強めに光を反射する。実際に導入されたら、たいまつの光にも反射すると考えられるので、洞窟探索は今までとは違った楽しさが生まれるのではないだろうか。なお、これはまだ開発版なので実際の製品バージョンでは光の反射などは変わる可能性があるとのことだ。

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。溶岩の光によって周囲が明るくなっている

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。光線の柱が放射状に地上へ降り注ぐ、いわゆるゴッドレイなんかは非常に分かりやすい効果

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。金属のブロックにランタンの光が映り込んでいる

「Vanilla」ワールドを実際にプレイしてみた動画

NVIDIA Material SandboxはNVIDIAが用意した光源となるブロックやリアルなテクスチャが貼られたブロックを追加したバージョン。これらブロックが製品バージョンでも追加されるかは現段階では未定という。分かりやすいのは、ミラーボールのように複数色の光を出すブロックとそれを反射するタイルの組み合わせだろう。タイルの凹凸に合わせて微妙に光が変化、距離によっても光の具合が変わっていくことが見て取れる。また、映像が映り込むブロックとの組み合わせも面白い。地面に映り込むブロックを配置してある場所は、天井部分が反射して映るので、地面が抜けているように見える。壁に配置すれば、反対側の壁を反射して映すので、奥行きがあるように見える。これのよってただの薄暗い部屋が迷路のように見えると、もし実装されるならこれまた新しい楽しみ方が生まれそうだ。

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。ミラーボールのようなブロックの光がタイルに反射しているのが分かる

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。映り込むブロックによって反対側にある壁が映っている

「NVIDIA Material Sandbox」ワールドを実際にプレイしてみた動画

さらに、パストレーシングの魅力はいま画面に映っていない、見えていない光に対してもしっかりと画面に反映されることだ。画面からは見えていない光が水に映り込んだり、影を作りことができる。これを利用すれば、光を使ったメッセージやヒントを出すといった世界もできるのではないだろうか。Switch版やスマホ版のユーザーと一緒に遊ぶ場合には使えないのは難点ではあるが(Windows 10版以外はレイトレーシングに対応できないため)。

  • 上がRTXオフ、下がRTXオン。画面外にあるRTXと光るブロックが水に反射して映っているのが分かる

今回プレイしたものは、あくまで開発バージョンでこれがそのまま製品バージョンにも適用されるかは未知数だが、Minecraftの可能性を広げてくれるものに間違いはない。

GeForce RTXシリーズのビデオカードが必要なのは多少敷居が高いが、高性能なビデオカードがあれば、Java版のMinecraftにゴリゴリとMODを入れても快適に遊べるようになる、というメリットも。Java版なら、すでにビデオカードに関係なく使えるレイトレーシングに対応の影MOD(リアルな光源処理を加えるもの)が存在しているじゃん、というツッコミが入りそうではあるが、あれは有料かつMinecraft公式なものではない(すごいモノだとは思うが……)。Windows 10版で公式に対応、つまりユーザーが何も手を加えなくてもレイトレーシングが体験できるようになる意義は大きいのではないだろうか。