半導体市場動向調査企業である米IC Insightsの調査によると、TSMCの売上高が年末に向けて急増しているようだ。

それによると、すでに公表済みのTSMCの上半期の業績と、TSMCが示している下半期の見通しなどを踏まえると、TSMCの2019年第1四半期業績が約71億ドル、同第2四半期業績が約77億5000万ドルと低調であったものが、同第3四半期には前四半期比18%増の91億5000万ドル、同第4四半期も同15%増の105億ドルになると予測している(図1参照)。

その結果、2019年通年の売上高は2018年の売上高とほとんど変わらないものの、2019年下半期の売上高だけを見ると、上半期比で32%増と大きく伸びそうだという。

AppleとHuaweiが売上急増に貢献

TSMCの2019年下半期の売上増を後押ししているのが、米Appleと中Huaweiの新しいスマートフォン向けの7nmアプリケーションプロセッサであるとIC Insightsは指摘している。TSMCの7nmプロセス向け売上高は2019年第1四半期が15億6100万ドル、同第2四半期が16億2700万ドルであったものが、同第3四半期には22億8800万ドル、同第4四半期には34億6700万ドルと上昇を続ける模様だ。

  • IC Insights

    TSMCの四半期ごとの売上高推移。2019年第3四半期/第4四半期はIC Insightsの予測 (出所:IC Insigts)

プロセスの微細化が進めば進むほど、投資金額が大きくなり、その負担に耐えられない企業が脱落していく。TSMCは他社に先駆けて、そうした先端プロセスを提供することで売り上げと市場シェアを拡大してきており、現状、半数超のシェアを有する独り勝ち状態を築いている。40nmプロセス以下の微細プロセスのみに限定したファウンドリ各社の2019年売り上げ見通しを比較すると、TSMCの229億ドルに対し、GLOBALFOUNDRIES、UMC、SMICの大手3社合計でも32億ドルと、その差が圧倒的であることが分かる。

TSMCがここまで微細プロセスにおける売り上げを他社に比べて確保できるのは、微細化を進める速度が他社に比べて圧倒的に早い、という点があるだろう。例えばSMICは2015年第4四半期にようやく28nmプロセスの提供を開始したが、実にTSMCが提供を開始した時期よりも3年以上遅れを取ることとなった。また、SMCIは2019年第4四半期に14nm FinFETによる売り上げが立ち始めるとの見通しを示すほか、2020年には12nm FinFETの導入を計画しているが、TSMCはやはり3年以上前に同様のプロセスを提供している。

TSMCの7nmプロセスの売上高は2019年通期で89億ドルになるとIC Insightsでは予測している。これは、2019年通年の売り上げの26%を占め、第4四半期に限った場合では33%を占める規模になるという。2018年は9%ほどであったので、いかにその伸びが急激であるかがわかるだろう。

また、TSMCの顧客が先端プロセスを採用するペースも加速しているという。TSMCの40/45nmプロセスが総売上の20%以上を確保するまでには8四半期(2年)かかったが、28nmプロセスの場合は5四半期、7nmプロセスに至っては3四半期しかかからないという。20nm/14nm/10nmプロセスのいずれもすべて、3四半期以内に総売上の20%を超えている。さらにTSMCは、5nmプロセスの売り上げについて、7nmよりもさらに速くなるとの考えを示している。先端プロセスに対する需要は依然として強く、供給が厳しくなっており、リードタイムが長くなってきている。その結果、TSMCはすでに、微細プロセスの生産能力の拡大に向けた設備投資に必要な資金の確保を進めており、自社のポジションをより強固なものにしようとしているという。

  • IC Insights

    TSMCの四半期ごとの10nmおよび7nmの業績推移。2019年第3四半期および第4四半期はIC Insightsの予測 (出所:IC Insights)