左右の本体が独立したスタイルの完全ワイヤレスイヤホンは、2018年から本格的に人気に火が付き、今では国内外の様々なブランドが新製品を発売しています。機能性やワイヤレス接続を安定させる技術など競争軸が多様化する中で、イヤホンにとっての王道と言える「音質」で勝負をかけてきた新製品がAVIOT(アビオット)の「TE-BD21f」です。

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    AVIOT「TE-BD21f」。ワイヤレスイヤホンでは珍しい、ハイブリッド・トリプルドライバーを搭載しています

AVIOTは日本人の耳に合う「日本の音」をコンセプトに掲げるイヤホンブランド。2019年に入ってから「TE-D01d」「WE-BD21d」などの新製品をハイペースで連発してきましたが、TE-BD21fはコンパクトな本体に方式の異なるドライバーを合計3基搭載したハイブリッド構成で、画期的な完全ワイヤレスイヤホンです。価格は17,500円(税別)で、カラーはブラック、シルバー、バイオレットの3色です。

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    ハイブリッド・トリプルドライバーの基幹パーツで、AVIOT専用に開発されたツインBAドライバー(6月の製品発表会レポートより)

解像度が高く、スピード感の豊かな音を持ち味とするBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーは2基搭載。主に中高音域を担当します。ダイナミック型ドライバーは1基で、力強く歪みのない低音域を再生できるように、PETチタンコンポジット振動板を大型ネオジウムマグネットで均一に駆動。これを堅牢なハウジングで覆う密閉型構造です。広い音域のサウンドを余裕を持って、ディティールまで鮮明に鳴らせることがハイブリッド方式のドライバーを搭載するメリットです。

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    ハイブリッド・トリプルドライバーの構造(6月の製品発表会レポートより。写真は有線イヤホンの例)

音質だけでなく、ワイヤレス接続の安定感を高めることや、機能性についても入念にブラッシュアップされています。クアルコムがBluetoothオーディオ向けに開発した、ワイヤレスオーディオレシーバーとDSP(デジタル信号処理回路)、AD/DAコンバーターにデジタルアンプを統合したシステムICチップ「QCC3020」を搭載。ハイパワーで駆動時の消費電力効率が良いチップなので、イヤホン単体で音楽を連続して再生できる時間が最大7時間も確保されています。BluetoothのオーディオコーデックはaptX / AAC / SBCをサポートしていますが、より高音質なaptXでは再生時間が2〜3時間ほど短くなります。

左右のイヤホン間、またはスマホとの間のBluetooth接続が安定していて、ノイズの発生も少ないことが「良い完全ワイヤレスイヤホン」の決め手のひとつになります。TE-BD21fは、内蔵アンテナの感度を高めるために、設計に工夫を凝らしました。これまでに数多くの完全ワイヤレスイヤホンを商品化して積み上げてきた、AVIOTのノウハウが生きている部分です。iPhoneやAndroidスマホと接続して、駅のホームや改札前、ショッピングモールなど電波環境が厳しそうな場所でノイズや音の途切れが発生しないか試してみましたが、とても安定した接続性能を体感できました。

多くの完全ワイヤレスイヤホンには、使用しないときにバッテリーを充電しながら本体を格納する専用ケースが付いています。TE-BD21fの専用ケースは、常に持ち運ぶことが手間に感じられないほどコンパクトです。しかもイヤホンを3回フル充電にできるバッテリーが内蔵されているので、音楽を聴く時間の合間にケースに入れておけば、基本的にはイヤホンのバッテリー残量に不安を感じることなく使えます。ケースの内蔵バッテリーを充電するためのケーブルはUSB Type-Cなので、USB-Cに対応したスマホやタブレットと充電ケーブルを共有できます。

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    ケースもスリムでコンパクト。イヤホンを3回フル充電にできるバッテリーを内蔵しています

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    充電はUSB Type-Cを採用

「3つもドライバーユニットが内蔵されているイヤホンは本体も大きくなって、装着感に支障が出るのでは?」と不安に思うかもしれません。店頭のデモ機を体験してみるのが一番なのですが、筆者が試してみた限りでは、イヤホンのサイズは十分に小さく、パッケージに付属するシリコン製イヤーピースだけで耳元にしっかりと収まりました。ペアリングしたスマホの音楽再生操作は、左右イヤホンの側面に搭載するボタンで行え、操作感がとてもスムーズで、押し込むたびに本体がぐらつくこともありませんでした。

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    通常のシリコンイヤーピース(左側)と、クリアで抜けの良い中高域が特徴のSpinFitイヤーピース(右側)が付属しています

体を激しく動かすスポーツシーンでも装着感を試してみたところ、トレーニングジムでジョギングをしながら音楽を聴く程度の動きではびくともしません。パッケージに同梱される付属品には、左右のイヤホンに装着して首にかけられるシリコンストラップもあります。音楽を聴いていないときにイヤホンを耳から外して毎度ケースにしまう手間から解放されます。非常に便利なアイテムだと感じました。

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    両方のイヤホンをつなぐシリコンストラップを同梱

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    イヤホンを付けるとネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンのようになります

イヤホン本体はIPX5相当の防滴設計です。スポーツシーンで積極的に使えることを考えると、本機は「スポーツイヤホン」としては最も音にこだわった製品と言えそうです。

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    ソフトタイプのポーチが付属。クリーニングクロスと充電用のケーブルも付きます

ピエール中野コラボモデルは、花澤香菜が音声でガイド!

TE-BD21fには、人気ロックバンド「凛として時雨」のドラマーであるピエール中野氏とのコラボレーションモデル「TE-BD21f-pnk」というバリエーションがあります。実売価格は約21,470円(税込)ですが、予定販売数に達し売り切れとなったお店も多いようです。

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    凛として時雨のドラマー、ピエール中野氏とのコラボレーションモデル「TE-BD21f-pnk」は充電ケースにオリジナルロゴを刻印。イヤホンはマグネットで吸着します

TE-BD21fをベースに、音質のチューニングを変えており、ゴールドのオーナメントやピエール中野氏のオリジナルロゴをサイドパネルに配置するなど、外観もカスタマイズしています。

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    TE-BD21f-pnkのオーナメントパーツの色はゴールド。ピエール中野氏のオリジナルロゴを片側のイヤホンに配置しています

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    左がコラボモデル「TE-BD21f-pnk」のケース、右が通常のTE-BD21fのケース

TE-BD21f-pnkの電源オン、ペアリング完了など操作時のボイスガイドは、声優の花澤香菜さんが担当しています。これは、凛として時雨の曲がオープニングテーマで使われたアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の主人公、常守朱を花澤さんが担当していたことにより実現したという豪華仕様です。シリコンストラップや交換用イヤーピースを充電ケースごと収納できるセミハードケースも付属します。

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    TE-BD21f-pnkに付属するセミハードケース

広い音場にクリアな音。コラボモデルは温かみ&艶っぽさ

今回はiPhone 11とペアリングして、TE-BD21fでApple Musicの音源を聴いてみました。Perfumeのアルバム「GAME」から「Baby cruising Love」は広々とした空間再現とシャープで立体的なボーカルがとても魅力的です。2基のBA型ドライバーが描くボーカルのハイトーンは輪郭がとても鮮明で、生き生きとしたエネルギーを余すことなく伝えてくれました。タイプが異なるドライバーによる音のつながりはとても丁寧にチューニングされている印象です。メロディラインの肉付きが良く、高い声がスムーズに立ち上がります。低音は打ち込みのインパクトが鋭く、しなやかな弾力感にも味わい深いものがありました。

ピエール中野氏がチューニングを手がけたTE-BD21f-pnkのサウンドも聴いてみます。こちらはより中低域の足腰がしっかりとしていて、全体のバランスもより柔らかく落ち着いている印象を受けました。ボーカルの声には温かみが感じられます。比べながら聴くと、通常のTE-BD21fのモニターライクでニュートラルなトーンに対して、温かみと艶っぽさにコラボモデルならではのサウンドの魅力があると思います。

どちらのモデルにも共通しているのは、限界を感じさせないほどに広大なスケールな音場感と、余裕のあるディティール描写の力です。ハイブリッド構成のトリプルドライバーを採用するという、完全ワイヤレスイヤホンとして未開の挑戦が奏功したことで、またワイヤレスイヤホンの歴史に名を刻む名機が誕生しました。

もしもこれから初めての完全ワイヤレスイヤホンを買うのであれば、本格的なリスニングだけでなく、体を動かすなど「ながら聴き」の時間も充実したサウンドを楽しませてくれる、TE-BD21fのような実力派を最初から選ぶと良いでしょう。「完全ワイヤレスイヤホンは何機種も持っている」というマニアを自負する方もぜひ、完全ワイヤレスでハイブリッド・トリプルドライバーという珍しいイヤホンをコレクションに加えてみてはいかがでしょうか。