◆消費電力(グラフ57~61)

最後に定番の消費電力。今回はCPUがメインなので、SandraのDhrystone/Whetstone(グラフ57)、TMPGEnc Mastering Works 7で4 ThreadのEncode(グラフ58)、及び3DMark FireStrikeでのDemo(グラフ59)の消費電力変動を示す。グラフ60が実際の消費電力の平均値(TMPGEncはスタート後30秒~120秒間の平均値を取得)、グラフ61が待機時の消費電力との差を示した。

まず一見して判るのは、Ryzen 5 2600Xの消費電力の高さである。他に比べて圧倒的、としても良いと思う。実際SandraのDhrystone/WhetstoneとかTMPGEncの消費電力で比較すると、Ryzen 5 3600/3600Xと比較して30W以上高くなっている。つまり第3世代Ryzen(それも7nmのもの)は、ピーク時の消費電力を30W以上下げつつ性能を引き上げている、というのが改めて明らかになった形だ。一方で同じ第3世代Ryzenといっても12nmプロセスのAPU2製品については、第2世代のRyzen 5 2400Gとあんまり変わらないということに。Ryzen 3 3200GはRyzen 5 2400Gよりやや消費電力は低いがその分性能も落ちる。一方でRyzen 5 3400Gは消費電力が15Wほど増えており、性能/消費電力比ではやや悪化している感じだ。

実際数字で突き合わせもしてみた。表3は、Radeon RX 5700と組み合わせた場合について、そのDhrystone/Whetstoneのスコア(グラフには示していない)とその際の平均消費電力差から効率を算出したものである。

  • 表3

一番効率が良いのはRyzen 5 3600/3600Xで、これはもう7nmパワーとしか言いようがない。次に効率が良いのはRyzen 5 2400Gで、無理に動作周波数を引き上げない分、性能効率は高めである。これに比べるとRyzen 5 3400Gはちょっと落ちる感じになっている。一番悪いのがRyzen 5 2600Xというのは、やはり12nmで頑張って動作周波数を上げたツケだろうか。

◆考察

と言う事で、ゲームベンチマークがやや多めではあるが、一通り評価をしてみた。簡単にまとめると、

  • Ryzen 5 3600:性能も十分高く、上位のRyzen 5 3600Xと殆ど見劣りしない。消費電力も低いし、いくつかのシーンで力不足はあるものの、概ねRadeon RX 5700クラス(NVIDIAで言えばGeForce RTX 2060 Superあたり)のGPUとマッチする性能と考えて良いだろう。これが23800円はかなりお買い得だと思う。
  • Ryzen 5 3600X:スペックの差(Base/Turbo共に200MHzアップ)ほどにはRyzen 5 3600との差が無い。大きな特徴はXモデル、つまり倍率ロックフリーとXFRのサポートの有無なので、ここに価値を見出せるユーザーは買ってもいいかもしれないが、推奨小売価格で6000円の差に見合うほどの価値か、というのは筆者にとってはやや疑問である(Xモデルを狙うなら、より上位のRyzen 7 3700Xの方が良い気がする)。
  • Ryzen 5 3400G:確かにRyzen 5 2400GよりはCPU性能・GPU性能共に上ではあるが、その差はそれほど大きくない。特にGPU性能に関して言えば、最新ゲームを2Kでプレイするのはかなり無理がある感じで、古めのゲームに留めておくのが吉であろう。ただゲームではなく普通のアプリケーションをプレイする分には十分ではある。難点はやはり消費電力が増えている事だろうか。価格的には2万を切ってお手頃ではある。
  • Ryzen 3 3200G:1万そこそこのCPUながら、ものによってはRyzen 5 2400Gに近い性能を叩き出すシーンもあり、コストパフォーマンスは悪くない。勿論これの内蔵GPUで最新ゲームをプレイ、というのは論外であるが、そのあたりを割り切れば、エントリ向けCPUとしてはお勧めできる。ただ、より高性能なDiscrete GPUと組み合わせると力不足は否めない。恐らくRadeon RX 560~570(NVIDIAならGeForce GTX 1650あたり?)がベストマッチで、それ以上の性能のGPUを考えているのであれば、もう少し上のCPUを狙った方が良い。

という感じではないかと思う。総じて、APUが12nmなのが色々惜しいところで、早く7nm世代のAPUが出てきてほしいところである。