◆PCMark 10 v2.0.2115(グラフ1~3)

FutureMark
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

まずはこれから。グラフ1がOverallで、意外にもRyzen 5 2400GよりもRyzen 3 3200Gの方がスコアが上という結果になっているが、そもそもPCMark 10では4 Threadもあれば十分で8 Threadも要らない&IntelのCore 3などと異なり、L3キャッシュが削られたりしていない&動作周波数そのものはRyzen 3 3200Gの方が上(Ryzen 5 2400Gは定格3.6GHz/Turbo時最大3.9GHz)というあたりが効いているのかもしれない。ただPCMark 10 ExpressだとAPU 3製品は基準スコアの5000に達していない、というあたりがちょっとアレではある。ただそれを除くと、Ryzen 5 3400GはRyzen 5 2400Gより相応に高速だし、Ryzen 5 3600はRyzen 5 2600Xからの性能向上が大きい。一方Ryzen 5 3600Xとの差はごくわずかであった。

面白いのはApplicationsの結果で、ことMicrosoft Office365を使う限りにおいては、APUでもそれなりに快適に動くことが確認できたことだろうか。

Test Group別(グラフ2)を見ると、Essential/Productivityで内蔵GPUを利用した場合に妙に性能が伸びているのが判るが、これはOpenCLの効果である。現状のRyzen GはOpenCLの性能もそれなりに高いVegaコアであり、一方Radeon RX 5700のOpenCL性能は低い事は以前もレポートした通りである。このOpenCL性能の差がそのままEssential/Productivityの性能差に繋がったと思われる。更に言えば、このEssential/Productivityの結果だけで算出するPCMark 10 Expressの性能が全体的に低めなのも、Radeon RX 5700のOpenCL性能が低いのが一因と考えられる。個人的には、OpenCLの一般的なアプリケーションへの普及はそれほど高くない事を考えると、PCMarkはそろそろOpenCLのサポートを外した方が実情に近いのではないかと思う。

最後がApplications Detail(グラフ3)で、要するにOffice 365を利用してのテスト詳細だが、こちらはほぼCPU性能に準じた結果になっている。ただWordを除くとRyzen 5 2400GとRyzen 3 3200Gの性能差が拮抗しているあたりは、かなりRyzen 3 3200Gの性能底上げが実現できた、という感がある。

◆CineBench R20(グラフ4)

Maxon
https://www.maxon.net/www.maxon.net/

お馴染みCineBench R20。こちらは内蔵GPUで比較してもあまり意味が無いので、全部Radeon RX 5700での結果となっている。まぁ結果はグラフ4の通りで、ほぼCPU性能差がそのままといったところ。面白いのは、MP構成だとRyzen 5 2400G > Ryzen 3 3200Gなのに、Single構成だとこれが逆転するところだ。12nmプロセスにした&Max Turboの周波数が高い分、より上まで伸びるということだろうか?

◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.11.12(グラフ5)

ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

お次は動画のトランスコードであるが、前回のレポート同様、4KのVP9動画をHEVCに変換する処理速度である。ちなみに性能差が小さいため、結果は処理フレーム/分(fpm)で示している。

ところでこのグラフで内蔵GPU版があるのは、AMD Media Encode SDKを利用しているためである。無印はCPUを利用してTMPGEncのx265エンコーダで処理を行っており、Ryzen 5 2600Xで360fpm弱、Ryzen 5 3600Xでも500fpm弱といったあたりであるが、AMD Media Encode SDKを利用するとほぼ同等の480~490fpmでの処理が可能となっている。もっとも480fpm=8fpsであって、リアルタイムでの処理というには程遠いが、2KのH.264動画程度であればもう少し現実的なフレームレートで処理が可能になると思われる。

勿論Radeon RX 5700を利用すると、4Threadで94fps≒5600fpm近く、という訳で10倍高速になるから、こちらを利用する方がより快適ではあるが、6コア12ThreadのCPUエンコードと、Ryzen GのH/Wエンコードが大体同じ性能、という事が判ったのはちょっと興味深いところである。

◆DxO PhotoLab 2 V2.3.1.24039(グラフ6)

DxO Labs
https://www.dxo.com/ja/dxo-photolab/

同様に写真のRAW現像も。こちらも結果は毎分辺りの処理枚数(ppm:pictures per minute)で示している。残念ながらこちらだとGPUのアクセラレーションが効かない(一応DxO PhotoLabはOpenCLによるアクセラレータ機能もあるが、あんまり高速にはならないため、今回は無効化してテストを行っている)関係で、CPU性能がモロに出る感じである。ただローエンドのRyzen 3 3200Gであっても、E-M5(12MPixel)だと10枚/分程度の現像が可能というのは、恐らくこのクラスのCPUを選ぶユーザーには十分な性能として良いと思う。

◆3DMark v2.9.6631(グラフ7~12)

FutureMark
http://www.futuremark.com/benchmarks/3dmark

最新版はVRS(可変レートシェーディング)への対応が入ったv2.10.6751であるが、今回は一つ前のv2.9.6631である。ちなみにRadeon RX 5700で4Kのテストを行うのは非現実的なので、FireStrike UltraとTimeSpy Extremeは項目から外した。また内蔵GPUに関しては、FireStrike Extremeも厳しいので項目から外している。

さてまずグラフ7・8がOverallである。負荷の軽いIceStorm系(グラフ7)では内蔵GPUも結構な健闘を見せている。またここでは妙にRyzen 5 2400Gのスコアが(内蔵GPUの場合も、Radeon RX 5700装着時も)低いのが不思議なところである。逆にRyzen 5 3600/3600Xのスコアはまぁ妥当なところか。

一方負荷の高いテスト(グラフ8)になると、まぁ内蔵GPUのスコアがどんどん低迷するのは当然の事で、これは不思議ではない。これらAPUにRadeon RX 5700を組み合わせた場合も性能はやや低めに推移している。ちなみにRyzen 5 3400G+Radeon RX 5700のスコアが無いのは間違いではなく、なぜかCPU Testが通らない(Graphics Testは通る)ためにスコアが0となっているためである。

では次にそのGraphics Test。まずIce Storm(グラフ9)を見ると、こちらでは相応に性能差があり、やはり内蔵GPUは8CUないし11CU程度で、かつメインメモリ共有だから、36CU(恐らくGCNで言えば44CU程度相当)で、しかもGDDR6メモリを利用できるRadeon RX 5700とは勝負にならない。またこれらAPUにRadeon RX 5700を組み合わせた場合の性能は、Ryzen 5 3600/3600Gの半分程度まで落ち込んでおり、あまり賢い組み合わせとは言いにくい感じだ。より負荷の重いベンチ(グラフ10)では、内蔵GPUの性能は半分未満に落ちているのはまぁ当然だが、APUにRadeon RX 5700を組み合わせた場合の性能の落ち方がそれほどではないのは、GPUの負荷が増える=CPU⇔GPU間のトラフィックが若干減る場合には性能が落ちにくくなる模様だ。要するにCPU⇔GPU間のトラフィックがAPU3製品ではややボトルネックになりがちに見える。

最後がPhysics/CPU Test。Ice Storm(グラフ11)では意外にAPUとそれ以外の差が少ないが、それ以外(グラフ12)になると明確に性能差が出てくる。特にRyzen 3 3200GとRyzen 5 3400Gの性能差がはっきり出る様になったのは、負荷が高くなってスレッド数が多いほど有利、という傾向が見えてきたためだろう。