背景をボカして被写体を際立たせる撮影テクニックは、いわゆる一眼レフなど高級カメラでお馴染みですが、よく似た効果をもたらす機能がiPhone 7 Plus以降のiPhoneに搭載されています。それが「ポートレートモード」で、擬似的に背景をボケさせています。

さらにiPhone XS/XS Max/XRでは、撮影後に背景のボケ具合を調整できる「被写界深度コントロール」機能が用意されています。2019年9月に発売予定のiPhone 11シリーズも同様にサポートされていますから、iPhoneのカメラ機能には不可欠の要素になりつつあると言ってよさそうです。

その被写界深度コントロール機能はソフトウェアであり、iOS 11のときサードパーティ向けに公開された「Depth API」という開発フレームワークと密接な関係があります。このAPIを利用すれば、撮影後の写真でもAIの機能により深度情報(撮影対象との距離および奥行きの情報)を計算し、写真から被写体を切り抜いたり背景をボカしたりするアプリを開発できます。

Depth APIには、iOS 12のとき「Portrait Matte」という機能が追加されています。静止画かつ被写体が人間と認識されたときしか機能しませんが、毛髪やヒゲのような細かい部分を含め、全身の輪郭をかなり正確に検知できるようになりました。

とはいえ、カメラが1基しかないXRは、2基搭載するモデル(XS/XS MaX)とまったく同じというわけにはいきません。2基あれば視差に基づいた深度情報を得られますが、1基では画像を解析することでしか深度情報を得られないからです。そこで前述のDepth API/Portrait Matteを利用して被写体の検出を行うため、ポートレートモードの被写体は人間に限定されてしまうというわけです。

  • なぜ「ポートレートモード」で人間しか撮れない機種があるの?

    iPhone XSのポートレートモードには、「Portrait Matte」の技術が使われています