東京地下鉄(以下、東京メトロ)は8月28日、建設中の新駅「虎ノ門ヒルズ」の工事現場を報道関係者に公開した。現場の状況については、すでに「虎ノ門ヒルズ駅の建設現場を公開『UR×東京メトロメディアツアー』」で紹介されていることでもあり、本稿では少し視点を変えて、背景事情も含めた解説をお届けしたい。

虎ノ門の再開発と駅の新設

現在、虎ノ門一帯ではUR都市機構が中心となって、大規模な再開発計画が進められている。すでに国道1号線(桜田通り)の東側には「虎ノ門ヒルズ」が完成しているほか、その北側に「虎ノ門ヒルズ・ビジネスタワー」を建設するとともにバスターミナルを新設する。国道1号線の西側でも、再開発計画が進められている。

しかし、再開発を行っても、そこに行き来するための「足」がなければ半端である。そこで、国道1号線の下を通っている東京メトロ日比谷線に、新駅「虎ノ門ヒルズ」を開設することになった。新駅とバスターミナルを組み合わせることで、交通の結節点とする構想になっている。

虎ノ門ヒルズの北方を東西に通っている銀座線は、日比谷線とは相互に連絡していない。しかし、虎ノ門ヒルズ駅の完成に合わせて銀座線の虎ノ門駅と結ぶ地下通路を新設、両駅を連絡可能にする計画もある(ただし、徒歩で7分ぐらいかかるようだ)。

この新駅は、2020年に予定している東京五輪に間に合うように開業する計画だが、完全に出来上がるのはもうしばらく先の話になる。日比谷線が全通したのは、前回に東京でオリンピックが開催された1964年のこと。その後の新駅の開設は、なんと今回が初めての事例だ。

歴史が長い地下鉄ならではの難しさ

前述のように、日比谷線は開業時期が古い。当時は開削工法で地下鉄を建設するのが普通で、わざわざ深いところまで掘って工期と工費を押し上げる理由はないから、必要最小限の深さとした。そこに新駅を開設しようとすると、どういうことになるか。

普通、地下鉄の駅は地下1階にあたる部分にコンコースを設けて、周辺に設けた出入口に通路を伸ばす。ホームは、そのコンコースからさらに下の階に設けるのが一般的だ。ところが虎ノ門ヒルズの場合、線路の位置が浅く、上にコンコース階を設ける余裕がない。そこで、以下のような手順になった。

(1)既設線の両脇を掘り拡げて、対向式ホームを設ける。開業時点では、そのホームから直接、改札口を通って地上に出る構造とする。

  • 日比谷方面に向かうB線に新設するホームの側面にある開口部。開業時、ここが暫定改札口になる 撮影:井上孝司

    日比谷方面に向かうB線に新設するホームの側面にある開口部。開業時、ここが暫定改札口になる

(2)既設線の下を掘削して、線路の東西を横断するコンコース階を新設する。国道1号線の東西にできる再開発ビル群とは、このコンコース階を通じて直結する。

  • そのホーム階より一層下のコンコース階予定地では、まだ掘削が進行中。この位置は、中目黒方面に向かうA線に新設するホームの直下

(3)完成したコンコース階に改めて改札を設けて、線路の下を横断するコンコースを構成、東西の再開発地区に通じる出入口とする。

これらの工事を、既設線に影響を与えず、毎日、電車を走らせたままで行わなければならない。

気になったのはホーム配置。地下鉄では上下線間に挟まれる形で島式ホームを1面設置する事例が多くを占める。そのほうが広々した空間になるし、設備を集約できる利点もあるからだ。近所で、銀座線に溜池山王駅を新設した時は、わざわざA線とB線を外側に移動して、その間に島式ホームを建設した。

ところが、虎ノ門ヒルズ駅は対向式である。思うに、これは工期の関係ではないだろうか。既存線を動かさず、その外側にホームを追加する対向式の方が、工事内容がシンプルになり、時間もかからないと思われる。