米IBMとRed Hatは7月9日(現地時間)、IBMがRed Hatの発行済み普通株式を1株当たり190ドル、全株式で合計約340億ドル(日本円で約3兆7000億円)相当を現金で取得し、買収が完了したと発表した。買収により、Red Hatのクラウドテクノロジーと、175カ国以上でビジネスを展開するIBMのイノベーションと業界知識が組み合わされ、ビジネス向けのクラウド市場を大きく変えていくという。

両社は、次世代のハイブリッドマルチクラウドプラットフォームを提供し、イノベーションを加速させ、LinuxやKubernetesをはじめとしたオープンソーステクノロジーを用いて構築されたプラットフォームは、オンプレミス、プライベートクラウド、複数のパブリッククラウドにおける各種データとアプリケーションの安全な管理を実現するとしている。

Red Hatのジム・ホワイトハースト氏は、IBMのシニア・マネジメント・チームに加わり、ジニー・ロメッティ氏の直属となり、IBMではRed Hatのノースカロライナ州ローリーの本社、施設、ブランド、およびオペレーションを維持し、Red HatはIBMのクラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業の独立した部門として運営される。

IBMのクラウド収益は、2013年度には全体の4%だったが、現在は25%に増加しており、2019年第1四半期までの12カ月の収益は190億ドル以上に達し、買収で今後5年間においてIBMの年平均成長率は約2ポイント上昇する見込みとなっている。

一方、Red Hatの2019年度(2018年3月-2019年2月)の収益は前年同期比15%増の34億ドルとなり、6月に発表された2020年度第1四半期の収益は同15%増の9億3400万ドル。サブスクリプション収益も同15%増となり、同24%増となったアプリケーション開発関連の収益も含まれ、サービスの収益も17%増加している。

買収により、Red Hatの先進的なビジネスモデルでLinux、Kubernetes、Ansible、Java、Cephなどのオープンソーステクノロジーは、ビジネス向けソリューションにおいて主流となり、特にLinuxは最も利用されているプラットフォームであり、Red Hat Enterprise Linux単体で2019年には全世界で10兆ドル以上の収益を見込んでいる。

IBMはビジネス向けオープンソースとハイブリッドクラウドの利用の拡大と加速を目指すと同時に、Red Hatのオープンソース資産の独立性と中立性を維持する。これにはオープンソースに対する貢献、コミュニティーリーダーシップ、開発モデル、また製品ポートフォリオ、販売戦略、パートナーおよびデベロッパーのエコシステム、そして独自の企業文化の保持が含まれる。

Red Hatは、オープンソースとハイブリッド環境に対し、今後も継続して選択肢と柔軟性を提供します。また、主要なクラウドプロバイダーである、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud、Alibabaなどを含む既存のパートナーシップを拡大していく考えだ。