Red HatとIBM、今後の方向性は?

米Red Hatは5月7日(米国時間)、米国のボストンで年次イベント「Red Hat Summit 2019」をスタートした。その基調講演では、Red HatのCEOを務めるJim Whitehurst氏が、オープンソース・ソフトウェアの重要性を説明すると同時に、同社のソリューションを導入している企業、または同社と重要なパートナーシップの関係にある企業のキーパーソンを招いて基調講演を行った。具体的な内容よりも概念的な話が多かったが、いずれもオープンソース・ソフトウェアの重要性に言及する内容だった。

  • Red Hat Summit 2019の基調講演に立つRed HatのCEOであるJim Whitehurst氏

    Red Hat Summit 2019の基調講演に立つRed HatのCEO Jim Whitehurst氏

今回のRed Hat Summitで最も期待されていた企業はIBMだろう。IBMは2018年10月にRed Hatを買収したと発表した。Red Hatのプロダクトを利用しているユーザーが最も気になるのは、この買収によってRed Hatのプロダクトや事業戦略に影響が出るのではないかということだ。今回のRed Hat Summitで、IBMとの関係について詳しい説明があるのではないかと誰もが期待していただろう。

  • オープンソースの有用性やそのほか主要技術とビジネスについて語り合うIBM PresidentおよびCEOのGinni Rometty氏とRed HatのJim Whitehurst氏

    オープンソースの有用性やそのほか主要技術とビジネスについて語り合うIBM PresidentおよびCEOのGinni Rometty氏とRed HatのJim Whitehurst氏

2019年5月7日(米国時間)に行われた基調講演に、IBM PresidentおよびCEOのGinni Rometty氏が登場して Whitehurst氏とトークセッションを行ったが、買収や今後の事業に関する新たな話題は出なかった。オープンソースソフトウェアの重要性などをお互いに説明するといった内容に終始した。今回の講演から具体的なことを汲み取ることは難しいが、両者はオープンソース・ソフトウェアの重要性を認識しており、基本的に現在のRed Hatの事業戦略に従うという方向性が伺えるものだった。

Red Hat Enterprise Linux 8登場

Red HatはRed Hat Summit 2019の基調講演に先駆けて、Red Hat Enterprise Linuxの最新版となる「Red Hat Enterprise Linux 8」を発表した。Red Hat Enterprise Linuxは同社が展開する戦略の根幹となるソフトウェアだ。基幹となるプラットフォームであることはもちろん、Red Hatが展開するほかの事業戦略はRed Hat Enterprise Linuxが導入されていることが前提として成り立っている。

  • メディアラウンドデーブルで質問に応えるJim Whitehurst氏

    メディアラウンドデーブルで質問に応えるJim Whitehurst氏

Red Hatは事業戦略を支えるプロダクトとして「OpenStack」「OpenShift」「Ansible」を掲げている。これらが高スケーラビリティおよびフェールセーフな基盤の提供、短期開発を実現する開発プラットフォーム、システム管理の自動化という3つの柱を実現する要になるわけだが、今回のイベントにおけるアナウンスメントやJim Whitehurst氏の話ぶりからすると、敢えて順番をつけるとすればOpenShiftに最も注力しているように見えた。

Red HatとMicrosoft

さらに、Red Hat Summit 2019の基調講演では、MicrosoftのCEOを務めるSatya Nadella氏とRed HatのCEOであるJim Whitehurst氏が語り合う姿が見れたことも印象的だった。Red HatとMicrosoftは数年前からパートナーシップの関係にある。MicrosoftはMicrosoft Azureで稼働するオペレーティングシステムとしてRed Hat Enterprise Linuxをサポートしているし、Red Hatの提供するプロダクトのサポートを行っている。Microsoftにとって、Red Hatとパートナーシップを提携することには意味がある。

  • MicrosoftのCEOを務めるSatya Nadella氏とRed HatのJim Whitehurst氏

    MicrosoftのCEOを務めるSatya Nadella氏とRed HatのJim Whitehurst氏

以前は競合関係にあった企業がパートナーシップを締結する関係になった理由は、MicrosoftがMicrosoft Azureを通じてクラウドプラットフォームを提供するようになったことが大きい。MicrosoftはMicrosoft Azureのサポート強化の一環として、オープンソースのオペレーティングシステムプロジェクトとの関係を強化するといった取り組みも行っている。Microsoft Azureで動作するものであれば支援するというスタンスだ。

エンタープライズの用途においてRed Hat Enterprise Linuxには根強い人気があり、高いシェアを確保している。当然、Microsoft AzureでRed Hat Enterprise Linuxを使いたいというクライアントは多い。現在では、Microsoftはオープンソース・ソフトウェアに積極的に取り組む企業の1つになっており、GitHubを買収するなどオープンソース・ソフトウェアに関連して目が離せない状況が続いている。