2020年度の事業戦略は「オープンハイブリッド」の踏襲と実践

レッドハットは4月23日に新年度事業戦略説明会を開催し、代表取締役社長を務める望月弘一氏が2020年度の事業戦略を発表した。

同社が2020年度に掲げる戦略は「オープンハイブリッド戦略」で、同社が2019年度の戦略として発表したものと同じだ。基本的な戦略は2019年度を踏襲しつつ、2020年度は「戦略」から「実践」へシフトさせる。

  • レッドハット代表取締役望月弘一氏 - 資料: Red Hat提供

    レッドハット 代表取締役社長 望月弘一氏

Red Hatの掲げるオープンハイブリッドクラウド戦略は、以下の3つの柱から構成されている。

プロダクト 戦略
OpenStack Platform ハイブリッドクラウド基盤
OpenShift Container Platform クラウドネイティブアプリケーション基盤
Ansible Automation クラウドに対応した管理と自動化

まず、OpenStackがクラウドプラットフォームの基盤となる。この環境の上にOpenShiftとAnsibleを載せるというのが基本的な考え方だ。OpenShiftはアプリケーション開発のプラットフォームとなり、Ansibleが管理や自動化のプラットフォームとなる。この3つをもって要望や問題に対応していくというのが、Red Hatの基本的な事業戦略だ。

2019年度に発表した事業戦略としてのオープンハイブリッドクラウドは、全体的に概念を発表する「戦略」という色が濃い。2020年度の事業戦略としてのオープンハイブリッドクラウドはこの方針をより現実的なものとして「実践」する内容になっている。これは、つまりRed Hatが掲げた戦略が方向性として間違っておらず、より進めることが適切だと判断したという理由が背景にあると見られる。

前年度の戦略を踏襲した背景とは?

Red Hatが戦略を踏襲した背景には、2019年度戦略による取り組みがそのまま業績に反映されてきたという理由がある。

具体的には、ハイブリッドクラウドを採用している企業が増加したこと、今後さらに増えると予測されていること、コンテナの利用している企業が増加したこと、こちらも今後さらに増加することが予測されていることなどがある。企業がクラウドやコンテナを基盤に利用する動きが続いており、今後も拡大が見込めることから、同社が提唱する「オープンハイブリッドクラウド」の方向性が間違いではないことがわかる。コンテナ基盤は2017年から2020年に市場規模が10倍以上になると見られており、同社として価値がある市場となっている。

また、ITの現場には喜ばしくないことだが、期待されるアプリケーションの開発期間がさらに短くなっているという現実がある。2016年頃は年単位での開発期間が期待されていたが、現在では四半期単位を期待されており、将来は月短期や週単位での開発が期待されている。こうした要望に応えていくには、クラウド・プラットフォームやOpenShiftといったプラットフォームを使わざるを得ないというのが現状だ。

また、各種調査から、IT運用の改善が現場レベルではあまり進んでいないことが明らかになっている。属人的な対応が多く、増え続ける運用への要望に応えきれていない状況だ。こうした状況に対しては、Ansibleのようなスケーラビリティの高い仕組みおよびソフトウェアが効果的であり、同社の事業戦略は現状をうまく反映したものになっている。

好調な業績とオープンソースの関連性

レッドハットの業績は好調だ。2019会計年度第4四半期と通期の業績発表では、売上総額の実質ベースで16%増加しているほか、新興テクノロジ製品のサブスクリプションベースでは32%の増加を達成している。日本の業績は非公開だが、望月氏は「日本の業績はほぼ米国の業績と同様の傾向」と説明した。ただし、新興テクノロジーに関しては、日本のほうが高い成長率を達成しているという。

望月氏は説明会において、顧客の要望に対応していくという方針に加え、「カルチャー」「オープンソースウェイ」という言葉を繰り返した。企業の枠に固執するようなビジネススタイルではなく、オープンソースのようにさまざまな企業と協業することがレッドハットの文化だとし、こうした動きを加速していきたいと説明した。

レッドハットが「オープンハイブリッドクラウド」の中心に位置づけているソフトウェアはすべてオープンソースとして公開されている。オープンソース・ソフトウェアを活用し、アップストリームファーストで開発や要望の取り込みを続けることが、同社にとって最も価値があることだという判断だ。同社はこれを同社のカルチャーと位置づけ、今後も継続して取り組んでいく。

IBM買収の影響は?

IBMは2018年、Red Hatを買収すると発表した。この発表はクラウド・プラットフォームのゲームを変えることになると注目されたが、今回の事業戦略発表ではIBM買収の影響に関連していると考えられる発表は行われなかった。Red Hatが買収される前から検討されていた事業計画が発表されたといった印象だ。

現在のところ、IBMの買収による影響はIBMによる買収は表面化していないが、Red Hatの今後の動向にどのように影響を及ぼすかは気になるところだ。今後の展開が注目される。