Infienonが日本市場に期待する理由

同社は日本市場で成長を続けるべく、日本に対する投資を拡大している。その背景について同氏は「世界経済が失速するなかで、日本市場に対する期待が高まっているため」と説明する。

日本市場はこの数年、全社の成長率を牽引するほどの勢いで成長を続けてきており、社内でも「555Strateg(ゴーゴーゴーストラテジー)」と呼ぶ日本地域向け戦略を掲げるなど、絶好調とも取れるのだが、同氏によれば「それでも日本市場におけるInfineonのシェアはまだ限定的であり、成長の余地がある。最近分かってきたのは、まだ我々が手をつけられていない潜在的な領域がまだまだあるということ。それを開拓するためには、顧客の近くに寄り添うことが重要」とのことで、本社のR&D部門管轄のシステムセンターを東京に設立して、顧客のシステム開発におけるサポートなどを積極的に進めている。

面白いのは同センターは、文字通りの"システムサポート"を行う部隊であるということ。半導体ベンダなので、半導体デバイスに関するエンジニアを抱えるのが普通なのだが、同センターでは顧客が扱うさまざまなシステムに関するエキスパートを採用している。「同センターができる前は、半導体とシステムという異なる文化であり、必ずしも100%の理解ができていたとはいえなかった。しかしセンターができて顧客のシステムレベルでの話も分かるようになり、かつそれを社内でも共通化できるようになったことで、より深くシステムそのものを理解できるようになった。そうした意味では、SiCの地下鉄での利用のような気づかなかった面も見えてくるようになった。現在はシステムの基板やリファレンスなどを扱える人を増やしており、今後はソフトウェアのエンジニアの増員も図っていく計画」とインフィニオン テクノロジーズ ジャパンでインダストリアルパワーコントロール事業本部 事業本部長を務める針田靖久氏はセンターの重要性を強調。フォーカスする分野ごとのシステムに関する技術力を向上させていくことが、今後の日本市場における自社の存在感を高めていくことにつながるとする。

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    システムセンターの役割。半導体ではなく、顧客のシステムそのものを理解するという役割であり、それにより、より顧客に沿ったソリューション展開が可能になるという効果が得られる

ちなみに、同社のみならずドイツそのものも日本を重要視する向きが強まっているという。例えば2019年2月、ドイツのメルケル首相が約3年ぶりに来日し、安倍晋三首相と会談する機会が設けられたが、同社CEOもその訪問時に同席するなど、積極的に国を挙げたアピールを行っている。その背景には日本と欧州連合(EU)間の日本・EU経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定が同じく同年2月に発効され、今後、ビジネスの機会がこれまで以上に高まることが期待されるためだ。

「日本の顧客にグローバルで大きな成功をしてもらうためには、我々もそれなりの実力やリソースを有していることを示す必要がある。システムセンターの設立はその1つであり、こうして地道に実力を高めていくことが、顧客との長期的パートナーシップの向上や、顧客のシステムの理解度向上につながっていく」とバーウァー氏は、あくまで日本の顧客の成長ありきで、それを支援するスタンスをとっていくことが、今後の日本市場での成長の鍵を握ると説明する。そのため、今後も顧客との結びつきを高めることを目指した取り組みを進め、日本での持続的な成長を実現させていきたいとしていた。

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    Infineon Division President, Industrial Power Controlのピーター・バーウァー氏(左)とインフィニオン テクノロジーズ ジャパンでインダストリアルパワーコントロール事業本部 事業本部長を務める針田靖久氏(右)