グローバルで進むデジタライゼーション。その普及拡大を支える半導体の中にあって、絶対に欠かせない存在が電源の管理などを行うパワー半導体だ。中でもいち早く300mmウェハへの対応を進め、また次世代素材であるSiCの商用展開も推進してきたのが独Infineon Technologiesである。

同社のビジネスセグメントは大きく「オートモーティブ(ATV)」、「パワーマネジメント&マルチマーケット(PMM)」、「インダストリアルパワーコントロール(IPC)」、「デジタルセキュリティソリューションズ(DSS)」の4つに分けられるが、このうち、産業関連を中心とした高電圧分野のパワー半導体を担当するのがIPCで、低電圧分野がPMMといった形で分けられる。

世界で増大するパワー半導体需要

同社Division President, Industrial Power ControlのPeter Wawer(ピーター・バーウァー)氏によると、IPC部門は近年、右肩あがりでの成長が続いており、2019年度も上半期は前年同期比で14%増、2019年度下期も前年同期比でほぼ横ばい程度との見通しで半導体市場全体が足踏みするなかでも、プラス成長が続く見通しだという。

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    Infineon IPC部門の業績推移。この数年右肩あがりで成長を続けてきた

同氏は、「IPCが目指しているのは、人口増加に伴って世界中で増大する電力利用に対する需要に対し、エネルギーチェーンのすべてで、その利用効率の向上を実現すること」だと自社の方向性を説明する。エネルギーチェーンのどういったところで半導体が使われているかといえば、風力発電や太陽光発電システムにおけるインバータから始まり、送電/配電網における変圧、そしてエンドユーザーが利用する際の電力コントロールと、あらゆるシーンで活用されているといえる。「特に最終的な電力消費の部分では、電気自動車から家屋への給電や、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの発電量のばらつきの抑制のための大型蓄電池の活用など、新たな半導体に対するニーズも生まれてくることが期待される」とのことで、IGBT(モジュール含む)やIPM(Intelligent Power Module)といった高いシェアを有する製品を中心に、そうした分野でのさらなる存在感の強化を目指すとする。

300mmでの生産により需要の増加に対応

そんな同社の快進撃を支える裏には4つの差別化要因があるという。1つ目は上述した300mmウェハでのパワー半導体製造。現在は独ドレスデンでの製造だけだが、現在、2021年の生産開始を目指し、オーストリアのフィラッハにも300mmウェハ工場の建設を総額16億ユーロの規模で進めている。

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    2021年の稼動を目指し、オーストリア・フィラッハに建設が進められている新300mmウェハ対応パワー半導体工場の概要。ちなみに研究開発施設も新設されている

新工場はフル稼働した場合、18億ユーロ以上の売り上げを見込める規模となるが、実際にフル稼働となる時期については、「ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)といったe-mobility市場の動向次第。ただ、現在の市場の動きからは生産開始から4~5年程度で到達するのではないかと見ている」とするほか、その後も、ドレスデンならびにフィラッハの300mm工場の拡張を図ることで、需要の増加に対応していく計画であるという。