企業システムをつくるRed Hat Enterprise Linux 8

5月8日(米国時間)、年次イベント「Red Hat Summit 2019」の基調講演に登壇したRed HatのExecutive VP/President of Products & Technologies, Paul J. Cormier氏は、コンピュータの過去の歴史から現在に至るまでの進歩を紹介するとともに、オープンソース・ソフトウェアが現在のソフトウェアに欠かすことができないこと、中でもLinuxが大きな成功を収めたことなどを説明した。世界最速のスーパーコンピュータのオペレーティングシステムとしてLinuxが使われていることなどにも言及し、Linuxがさまざまな分野で重要なプラットフォームであることを強調した。

  • Red Hat、Executive VP and President of Products & Technologies、Paul J. Cormier氏

    Red Hat, Executive VP and President of Products & Technologies, Paul J. Cormier氏

基調講演のステージには、先日公開されたRed Hat Enterprise Linux 8がセットアップされたラックマウントサーバ群が用意され、Red Hat Enterprise Linux 8 Image BuilderやRed Hat Satellite、Red Hat Insightsといったエンタープライズ向け管理機能のデモンストレーションが行われた。

  • 先日公開されたRHEL8のデモ用に用意されたラックマウントサーバ群。中央に立つのはRed Hat、Manager of Product Management、Brent Midwood氏

    先日公開されたRHEL8のデモ用に用意されたラックマウントサーバ群。中央に立つのはRed Hat, Manager of Product Management, Brent Midwood氏

このデモンストレーションで注目したいのは、管理ソリューションのデモンストレーションを行うにあたって、目の前にラックマウントサーバを目立つように配置したことだ。これはAWSやMicrosoft Azureといったクラウドサービスと異なり、自前のサーバでプライベートクラウドの構築が可能であることを主張する狙いがあると見られる。

AWSやMicrosoft Azureといったパブリッククラウドは、使い出すのは容易なサービスだが、運用をうまく行わないとコストが高額になりがちな側面がある。また、問題が発生した場合の対処も浅いものになりがちで、徹底的に問題を追求できないこともある。

Red Hatは自前のサーバでプライベートクラウドを簡単に構築できることを示し、より柔軟で扱いやすいクラウド環境を企業内部に保持することが可能であることを、基調講演のデモンストレーションを通じて伝えたかったのではないだろうか。

Red HatはRed Hat Enterprise Linuxを企業向けプラットフォームと位置づけている。スケーラビリティの高い環境を簡単に構築できること、構築したシステム上で手軽に仮想環境の構築や運用、管理が行えることを示すことで、Red Hat Enterprise Linux 8の優位性を示した。

モダンなアプリケーション開発を支える「Red Hat OpenShift 4」

  • OpenShift 4 - Red Hat Summit 2019

    OpenShift 4 - Red Hat Summit 2019

5月8日の基調講演では、Red Hat OpenShift Container Platformを使ったデモンストレーションも行われた。2019年に入ってから最新版となるOpenShift 4が公開されている。実際にどのようにアプリケーションのデプロイを行うことができるか示すことで、簡単にシステム開発基盤を構築できることを明らかにする狙いがあったと思われる。

  • 基調講演でRed Hat OpenShiftのデモンストレーション

    基調講演におこえるRed Hat OpenShiftのデモンストレーション

Red HatはOpenShiftをアプリケーション開発基盤に関して戦略的に重要なプロダクトと位置づけている。企業システムの開発で許容される開発期間はますます短くなってきている。OpenShiftはこうした要求に対応することを可能にするプラットフォームで、システム開発に必要となるアプリケーションのデプロイなどを簡単に実施することができる。

システムの開発中や運用中により多くのリソースが必要となり、新しくサーバを追加したり基盤を強化したりすることは少なくない。しかし、そうした要望が起こるたびにインフラチームと連携して基盤を強化することは開発時間の観点から難しいこともある。あらかじめOpenShiftのようなプラットフォームを構築しておくと、こうしたリソース要求の変動にも柔軟に対応しやすくなる。

開発者にとってはあまり好ましくないことだが、企業システムの開発に許される期間はますます短くなりつつある。以前は年単位で開発期間が検討されていたものが、半年単位、月単位といったように、短くなってきている。こうした要求に対して属人的な技術で対処するには限界があり、ソフトウェアを活用して対応を取る必要が出てきている。OpenShiftはこうした要望に応えるためのソリューションの1つと言える。