理化学研究所(理研)は3月26日、日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンク「バイオバンク・ジャパン」に参加した日本人約16万人の遺伝情報より、喫煙習慣に関連する新たな7カ所の感受性領域(遺伝子座)を発見したこと、ならびに喫煙習慣と11種類の病気の発症リスクが遺伝的に相関していることを確認したと発表した。
同成果は、理研 生命医科学研究センター統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、的場奈々 特別研究員(研究当時)、秋山雅人リサーチアソシエイト(研究当時)らで構成される共同研究グループによるもの。詳細はオンライン科学雑誌「Nature Human Behaviour」に掲載された。
喫煙による健康に対する影響は広く知られているほか、喫煙習慣には遺伝子配列の個人差が影響することもわかってきた。しかし、喫煙習慣が個人の遺伝子配列と具体的にどのように関係しているのかについての遺伝学的研究は、欧米を中心に進められてきたこともあり、日本人ではどうなのか、といったことは良くわかっていなかった。そこで研究グループでは今回、日本人約16万人の遺伝情報と、喫煙に関わる「喫煙歴の有無」、「喫煙開始年齢」、「1日あたりの喫煙本数」、「現在の喫煙状況(禁煙中か喫煙中か)」の4項目の情報を用いて大規模な喫煙関連遺伝子を探索するゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施。その結果、1日あたりの喫煙本数(の多い少ない)に関連する感受性領域(遺伝子座)を5カ所、喫煙歴の有無に関連する遺伝子座を1カ所同定することに成功したという。
また、男女別で同様にGWASを行った結果、さらに3遺伝子座を新たに同定することに成功。そのうち2遺伝子座は男性における喫煙歴の有無への影響があると考えられ、1遺伝子座は女性の喫煙開始年齢への影響が考えられるという。
これらの7遺伝子座については、英国のデータと比較した結果、日本人特有であることが示されたとのことで、そのほかの解析などを含め、喫煙歴の有無に影響する遺伝的背景は欧米人と同一ではないことが明らかになったとする。
さらに、43種類の病気との関係性を調査したところ、喫煙歴と10種類の病気(心血管疾患や喘息、慢性閉塞性肺疾患など)の発症リスクが遺伝的に相関していることが判明したほか、1日あたりの喫煙本数は、閉塞性動脈硬化症や後縦靱帯骨化症と遺伝的背景を共有していることが判明したとのことで、まとめると喫煙習慣と11種類の病気が遺伝学的に相関していることが示されたとしている。
なお、今回の成果について研究グループでは、今後、喫煙習慣やそれに起因する病気の予防など幅広い科学分野での研究の発展に寄与するものと期待できるとコメントしている。