半導体製造装置・材料の国際的業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の米国本部は、北米に本社を置く半導体製造装置メーカー(Applied Materials、Lam research KLA tencorほか)の世界市場における2019年2月度の販売額(3か月移動平均の速報値)が前年同月比22.9%減、前月比1.7%減の18.6億ドルに留まったと発表した。単月の販売額は発表されていないが、2月単月の下げ幅は3か月移動平均よりもかなり大きいことが窺える。

SEMIのマーケテイング最高責任者(CMO)のTerry Tsao氏は、「北米の半導体製造装置メーカーの世界市場での販売額は2018年11月以来4か月に渡って連続して前年同月比でマイナス成長となっており、下げ幅は増加傾向にある。ただし、半導体メーカーの設備投資が低調になってきているのは事実だが、月間売上高はまだ(メモリバブルが始まる以前の)2016年のレベルよりは高い」と述べている。

  • 北米半導体製造装置メーカーの販売額推移

    北米半導体製造装置メーカーの世界市場における月間販売額の推移 (出所:SEMI米国本部)

日本製半導体製造装置の2月売上高は前年同月比11.6%減

一方、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が発表した日本製半導体製造装置(日本に本拠を置く半導体製造装置メーカーの世界市場での販売額)の2019年2月の販売高(3か月移動平均の速報値)は前年同月比11.6%減、前月比8.7%減の1506億5199万円だった。北米装置メーカーは2018年11月から前年同月比売上高がマイナス成長に転じているのに対して、日本メーカーは2019年2月になって初めてマイナス成長を記録しており、下げ幅も北米メーカーの半分程度にとどまっている。北米メーカーがトランプ政権による対中国関税引き上げや米国製製造装置・部材輸出規制を始め米中貿易摩擦の影響を色濃く反映していると見られる。このため、SEMIは、対中国関税引き上げに断固反対を表明し、北米装置メーカーの売り上げが低下せぬよう、首都ワシントンDCでのロビー活動を強化している。

  • 日本半導体製造装置メーカーの世界市場における月間販売額推移

    日本半導体製造装置メーカーの世界市場における月間販売額推移 (出所:SEAJ)

SEMIが対中国関税率引上延期を歓迎、関税引上には断固反対

2019年2月24日(米国時間)にトランプ大統領は、中国から輸入される2000億ドル相当の物品に対する関税率引き上げとなる「リスト3」のデッドラインを延期したが、SEMIはこの判断への支持を表明した。

過去3カ月にわたり、米国と中国は、知的財産の保護、合弁事業の要件、貿易不均衡の懸念といった構造的問題について二国間協議を重ねてきたが、前進は限定的だった。自由化の詳細、合意の構造、そして特に執行方法については、疑問が残ったままである。トランプ大統領と習近平 国家主席の会談の前に関税が引き上げられることはないとSEMIは見ている。

リスト3は、多数の消費財を含む物品を対象にしているが、半導体製造プロセスに必要な材料や装置などにも直接的な影響を及ぼす。ウェハ/インゴット/半導体製造装置、テスト装置、検査装置など半導体産業の中心となるすべての装置やツールを直撃する米中間の報復関税によって、SEMI会員が被る年間の関税総額は7億ドルにのぼるとSEMIは推定している。

SEMIは、「関税は中国の商慣習に対処する上で何ら役立たないばかりか、ビジネスのコストと不確実性を増大し、イノベーションを抑制するものであり、半導体サプライチェーンの企業に損害を与えるものだ」との見方を示すほか、「半導体チップ、装置、材料は極めて複雑で精密で製造が困難であるから、どれも簡単に別の供給元のものと簡単に置き換えられない。結果として、今回の通商措置は価格を上昇させ、何千もの高報酬の高度技術職を危険にさらし、産業の成長を抑制するものである」として、強い口調で米国政府の対中関税引き上げに断固反対の意思を表明している。