こちらも2018年12月に開催されたIntel Architecture Dayからの情報であるが、IntelはSunny Cove世代というかIce Lakeで、Gen11 Graphicsを搭載する(Photo04)ことが明らかとなった。

  • Photo04:Cannon Lakeに搭載されていたGen 10がなかった事にされてるのはともかく、Kaby Lake/Ice LakeのGen 9.5は入れてあげても良かったのでは?

このGen 11 Graphicsであるが、16EUで1つのSliceを構成、これが4つで最大64EUという構成になっている(Photo05)。Gen 9/9.5の場合、GT2が1Slice/24EU、GT3が2Slice/48EU、GT4eは3Slice/72EUで構成されていたので、規模的にはGT3とGT4eの中間あたりになる。

  • Photo05:1つのSliceは、実際には8EUずつのSub Slideに分割されており、これが最小単位となる。その意味ではGen 9/9.5と基本的な構成は変わらないが、Gen 9/9.5ではGT2~GT4eは1 Sliceが3 Subsliceで構成されていたので、ここが異なる

  • Photo06:L3は3MBに拡張された(Gen 9/9.5では768KB/Sliceだった)

パイプラインだが、1TFlops以上の性能、というのは実は良く分からない。というのは、以前からIntelの内蔵GPUでは1TFlopsを実現していたからだ。具体的に言えば、Intel i7-6970HQは、最大で1050MHz駆動するIris Pro Graphics 580(GT4e)を搭載しており、最大動作周波数で動かした場合、FP32で1209.6GFlops、FP16で2419.2GFlopsの演算性能を叩き出す。

その意味では1TFlops以上といっても「いまさら」という話はある。ただ、メインストリームとして使われているGT2系の場合、FP32で441.6GFlops、FP16でも883.2GFlops(1150MHz駆動でのピーク性能)なので、Gen 11でFP32を利用した場合で1,000GFlopsを超えるという意味だと思う。

ということは逆説的に考えれば、GPUの動作周波数は引き続き1GHz近辺になるだろう。ちょっと気になるのは、従来GT3の一部とかGT4では、eDRAMの併用が必須だった。このあたりがTile-based Renderingを取り入れたことでどこまで解消できるかといったあたりだが、これに関してはまだ未知数だ。

最後に出てきたCoarse Pixel Shading(CPS)は、2018年4月にi3D 2018公開された論文に基づく技法である。

CPSを利用することで、ディテールを落とさずにシェーディングの負荷を最大4倍減らせるほか、従来型のCheckerboard Renderingと比較して2倍の性能改善が可能だという。

もちろんこの技法は万能ではない(論文では色々CPSの限界とか問題などが指摘されている)が、限られたリソースの中で描画性能を引き上げるためには有用、と判断されたものと思われる。

一方Media Acceleratorでは、HEVCのエンコーダが設計し直されたほか、デコーダの複数同時稼働とか、HDR対応といった事柄が挙げられている(Photo07)。またHDRやAdaptive Syncへの対応も明らかにされた(Photo08)。

  • Photo07:これに関して言えば、昨今ではMobile向けのSoCの方が、性能改善やら新機能搭載の競争ですさまじいことになっているため、むしろ穏当に見えるレベル

  • Photo08:Adaptive SyncはおそらくVESAのAdaptive Syncを指しており、NVIDIAのG-SyncとかAMDのFree Syncをあえてサポートはしないだろうと思う

2020年にディスクリートGPUを提供予定

ロードマップであるが、このGen 11に続くGPUはX^eというブランドになり、Client OptimizedからData Center Optimizedまで幅広くラインナップされる。

  • Photo09:Mid-Range以上がDiscrete向けになると思われる

Intelは2018年6月13日、公式Twitterアカウントで2020年にDiscrete GPUを出荷することを表明しており、2018年8月16日には謎のプロモーションビデオまで公開した(Photo10)わけだが、これがX^eベースになる。

  • Photo10:どうみてもただのモックアップ

もっともGen 12にあたるX^eが、現在と同じアーキテクチャの延長にあるという保証はどこにもない。まったく新しい構造になる可能性も残されている。これに関しては、もっと情報が出てくるまでしばらく待つしかないだろう。

話を戻すと、このGen 11相当のGPUはIce Lakeに搭載される形で「運が良ければ」2019年中に市場投入されるだろう。この64EU相当のものが、現在のGT2と同じ位置付けになるのか、それともGT3以上に相当するのかは、いまのところわからない。

またeDRAMなど無しで性能が本当に発揮できるのかも未知数である。こればっかりは、製品が出てくるまで待つしかなさそうだ。

  • Photo11:なぜかベッドからいつも尻尾の先と片方だけ後脚がはみ出すまめっち先生