「時価総額1兆ドル」、「App Storeにおける開発者の累計売上1000億ドル」、「Appleデバイスの開発者数2000万人」、「iOSデバイスの累計出荷台数20億台」など、数字で振り返るだけで2018年はAppleにとって記録的な年だったと言えます。それにも関わらず、11月以降に株価が下落しているのは、iPhone新製品の売れ行きが予想を下回っているという報道があったためです。売り上げ全体に占めるiPhoneの割合が59% (2017年7~9月期)と、依然としてiPhone依存が強く、iPhone需要の減速とiPhoneに代わる成長ドライバーが不透明なことに投資家の警戒感が高まっています。

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高い品質と独自の体験を付加して安売りしないApple製品の価値は、すでに広く認められています。PC市場がマイナス成長に陥った際にも、AppleはWindows PCメーカーの低価格競争には加わらず、高付加価値戦略でMacの成長を継続させました。一年前の2018年の1月にも、AppleがiPhoneの生産台数計画を下方修正したという報道から株価が落ちました。しかし、2月1日に発表した2017年10月~12月期決算においてiPhone Xの順調な売れ行きが明らかになり、一転して株価が上昇し始め、8月に時価総額1兆ドルを達成しました。これまでのところiPhone XSシリーズとiPhone XRの売れ行きに関するAppleのコメントは強気で、2018年前半のパターンが繰り返される可能性があります。

ただ、一年前と異なるのは、米中貿易摩擦の影響、そして米国の経済拡大局面が終わりに近づく兆候が見え始めていることです。経済拡大の波に乗ってきたシリコンバレーでも、あちこちで減速に備える動きが見え始めています。そうした中でも、Appleの高い付加価値で安売りしない戦略が有効なのか、2018年10月~12月期決算がいつも以上に注目されています。

では、もしスマートフォン市場がこのまま停滞期を迎えたら、Appleの快進撃も終焉となるのでしょうか? スマートフォン市場が飽和に近づいていることは当然Appleも織り込み済みでした。高付加価値・高価格化もスマートフォンの低成長時代を見越した戦略と言えます。ただ、販売台数が伸びない以上、これからは同じパイを奪い合う競争になります。高価格化にも限界があり、それだけでは大きな成長や新たな価値の創出が望めません。Appleはいかにしてモバイルのさらなる成長を導こうとしているのか、後編では同社の新たな成長戦略について予想します。2019年にAppleは、もしかすると従来の同社のイメージを変えるような一手を打ってくるかもしれません。