HTV後はどうなる? 今後の開発計画

この2つの新技術は、将来の大型化・有人化を見据えたものだ。人間が乗るのであれば、揚力誘導飛行で加速度を最小限に抑える必要がある。また今回の軽量アブレータは、大型一体成型が可能。アブレータは、機体が大きくなっても必要な厚さはあまり変わらないため、大型化すると相対的に薄くできる。むしろ小型化の方が難しい。

HSRCはそもそも、以前検討されていた回収機能付加型HTV「HTV-R」の回収機をベースに開発がスタートしている。HTV-Rは現行のHTVの与圧部を回収機に置き換えたもの。この回収機に比べ、HSRCのサイズは1/5ほどに小型化されたものの、形状はほぼそのままになっており、当時の空力データを有効活用できたそうだ。

  • HTV-R回収機

    HTV-R回収機。HSRCは1/5サイズで、ほぼ同等の機能を詰め込んだ (C)JAXA

現状のHSRCのネックは、HTVに取り付けた状態でISSから分離し、HTVにより軌道制御して再突入するため、HTVが無ければ運用できないということだ。これだと、回収する機会がHTVの運用頻度に制限され、年に1回くらいしか確保することができない。

JAXAは、HSRCに軌道離脱モジュールを追加する形の次世代カプセルを検討中。HTVなどの母船を必要とせず、単独で運用できるようになれば、実験が終わって好きなタイミングで地上に運べるようになる。カプセルのコストは必要になるものの、実験の利便性は大幅に向上するだろう。

しかしHTVの打ち上げは、あと2回しか残っていない。次回の実証機会については、「HTV9までは難しいだろうが、後継機HTV-Xで実現できないか検討中」(田邊氏)だという。

今回のHSRCはISS内に持ち込んで作業したが、次世代カプセルは船外での運用も考えられている。例えばHTV-Xの曝露部で複数機を打ち上げ、ISSでは船外に保管。ペイロード収納容器を「きぼう」のエアロックから出し、ロボットアームでカプセルに格納するような方法が可能と見られている。

  • HSRCのペイロード収納容器

    HSRCのペイロード収納容器。今回は、この中に真空二重断熱容器を格納していた

  • ペイロード収納容器のフタ

    ペイロード収納容器のフタ。これで気密性を確保し、水圧にも耐えることができる

  • HSRCに記載されていたシリアルナンバーは「001」

    HSRCに記載されていたシリアルナンバーは「001」。これが「002」になる時はいつだろうか

  • 本体下部

    本体下部には、データ処理系、電源系、誘導制御系、推進系を搭載。かなり高密度で実装には苦労も

  • 設定スイッチ

    北上ルート(N)か南下ルート(S)かの設定スイッチ。南下だったのでS側のはずだが、作業中にN側に動かしてしまったらしい

  • プッシュスイッチも付いていた

    プッシュスイッチも付いていた。これを押すとLEDが光り、HSRCの状況を作業中のクルーに伝える機能があるようだ

  • カプセル本体のほか、パラシュートなども公開

    カプセル本体のほか、パラシュートなども公開された。高度15km付近で開傘してゆっくり降下した模様だ

  • 自動的にフローティングバッグが膨らむ仕組み

    着水後、両脇のボンベの二酸化炭素により、自動的にフローティングバッグが膨らむ仕組み

  • ボンベのバルブ部分には和紙が使われている

    ボンベのバルブ部分には和紙が使われている。これが濡れると強度が無くなり、潰れることでオープン

  • 通信バッグ

    もう1つのこれは通信バッグ。イリジウム通信機が搭載され、GPSデータで着水位置を知らせる

  • 通信機はフローティングバッグにも搭載されている

    通信機はフローティングバッグにも搭載されている。2つあれば、どちらかが故障しても大丈夫

  • パラシュートの先端

    パラシュートの先端には、降下中に空気が入って膨らむ仕組みの浮き袋も付いているという念の入りよう