宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月7日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)に搭載する超小型衛星7機をプレス向けに公開した。12月9日にH-IIBロケット6号機で打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に届けられた後、日本実験棟「きぼう」のエアロックから地球周回軌道に放出される。
搭載能力を倍増、さらなる強化計画も
JAXAは2012年度から、「きぼう」を活用した超小型衛星の放出機会を提供している。これまでに、JAXAの放出機構を使って軌道に投入した衛星は13機。当初はキューブサットタイプのみだったが、今年4月には、初めて50kg級衛星の放出も行われた。なお、日本製とは別に米国製の放出機構もあり、「きぼう」からの衛星放出数は計147機だ。
「きぼう」から放出する場合には、まずはHTV等の輸送機で衛星をISSに運搬。宇宙飛行士が開梱してエアロックに取り付け、船外に出した後、ロボットアームを使って軌道上に放出する。これは、エアロックとロボットアームを備える、「きぼう」ならではの使い方と言えるだろう。
従来は、大型衛星の打ち上げに相乗りし、ロケットから直接放出する手段しかなかったが、これに比べると、「きぼう」からの放出には、さまざまなメリットがある。
最も大きいのは、衛星に「やさしい」こと。ロケットのフェアリングに加え、輸送機、バッグ、緩衝材と、4重に保護されているため、振動は「自動車の荷台と同じくらい」まで抑えられるという。衛星が作りやすくなるし、衝撃に弱い機器も搭載しやすいだろう。また放出前に、宇宙飛行士が状態をチェックすることも可能だ。
世界的に、超小型衛星の活用が盛んになっており、JAXAは「きぼう」からの放出をさらに増やしていく意向。そのために今回開発したのが、同時放出能力を2倍に強化した新型の「小型衛星放出機構」(J-SSOD)である。
従来のJ-SSODは、3Uサイズ(1Uは10cm角)の衛星搭載ケースを左右に2本搭載し、合計6Uまでのキューブサットの搭載が可能であったが、新型ではこれを2段に重ねることで、能力を倍増。合計12Uの放出を可能とした。今後、2019年までに、さらに18U、48Uと、機能を向上していく計画だという。
衛星を放出する仕組みは従来と同様。バネの力を使って、衛星を秒速1.1~1.7m程度で押し出す方式を採用している。衛星の軌道はISSと同じになるため、高度は400km程度、軌道傾斜角は51.6度となる。
この軌道は、通常の衛星に比べると、高度が低い。大気の抵抗をより強く受けるため、放出後、キューブサットは100日~250日程度で、50kg級でも1年程度で再突入することになる。実用性を考えた場合、この寿命の短さが課題のひとつであるが、JAXAはより高い高度から放出することで、運用期間を長くする方法も検討中だ。
まだ検討に着手したばかりとのことで、具体的な方法については今後詰めていくが、たとえばISSから分離した後のHTVを使って、衛星を高い軌道に運ぶような方法が考えられているようだ。またそのほか、搭載ケースに入らない形状の衛星にも対応できるよう、技術検討を開始したそうだ。
なお、今回搭載する7機の超小型衛星は合計13U。新型J-SSODでも能力が足りないが、1機だけ従来型J-SSODを使って、残りの6機を新型J-SSODで放出する予定となっている。