亀田製菓は11月5日、植物性原料の大豆でつくった新商品「20g 大豆でつくったやさしいおつまみ 旨口さきいか味」「24g 大豆でつくったやさしいおつまみ 黒胡椒ジャーキー味」を、東京都内にて期間限定で販売すると発表した。

亀田製菓が発表した「大豆でつくったやさしいおつまみ」シリーズの「黒コショウジャーキー味」(左)と「旨口さきいか味」(右)

これは一見、単なる”新商品発表”に過ぎない出来事だが、実は亀田製菓にとっては社運を賭けた挑戦の第一歩でもある。では同社が「大豆でつくったやさしいおつまみ」から始める挑戦とは何か。11月5日に行われた記者会見の様子と合わせて紹介する。

「さきいか」と「ジャーキー」で食糧危機を救う?

亀田製菓の挑戦とは、将来的な「食糧危機への対応」、および世界市場を獲得するための「構造改革」である。では、大豆でつくった「さきいか」「ジャーキー」風のおつまみを売り出すという発表とそれらがどう結びつくのか。まずは食糧危機への対応について説明する。

総務省統計局の「世界の統計 2018」によると、地球の総人口は2017年の75億5000万人から、2055年には97億7000万人にまで増加すると予想されている。人口が増加すると、当然これまで以上の食料が必要になるだろう。

しかし、普段当然のように摂取している動物性タンパク質(牛、豚、牛乳など)を得るためにはその何倍ものタンパク質が消費される。牛や豚は毎日多くの餌を食べるし、生きるためにはそこから得た多くのエネルギーを消費する必要があるためだ。

人口が増加しても、これまでのペースで人類が「肉」を食べ続けると、いずれその供給が間に合わなくなるタイミングがくる。これを「タンパク質危機」と呼び、早ければ2025年~2030年にはその危機が訪れるとも言われている。そのため今は、タンパク源を得るための選択肢として「昆虫食」なども流行っているが、やはり食べなれた牛や豚の肉を食べたい、というのが多くの人の本音だ。

その問題を解決するための亀田製菓の一手が、動物性タンパク質を植物性タンパク質で代替する技術の開発。つまり、大豆で「さきいか」と「ジャーキー」をつくったのは、迫る食糧危機を救うための第一歩であるというわけだ。

新規事業で欧米市場の獲得へ

植物由来の代替商品を開発する企業は、グローバルで増えている。植物由来の人工肉や乳製品を製造する米インポッシブル・フーズは、1000以上のレストランで”植物肉”を使用した「インポッシブル・バーガー」を販売して人気を博している。同社や、同じく人工肉を製造・開発する米ビヨンド・ミートはVCや投資家から多くの資金調達を果たしており、「植物由来の代替食品製造」は、今注目の市場の1つといえる。

もちろん、そうした企業に資金が集まるのは、そこに大きな市場成長の可能性があるためだ。特に欧米市場はチャンスで、健康意識が高く、お肉のように美味しく食べられるのにヘルシーな「人工肉」のニーズは高いのだという。亀田製菓も「大豆」商品で、健康志向の高い人たちを対象に市場の獲得を目指す。

そこでの同社の強みは、これまで培った経験にある。代表取締役会長 CEOの田中通泰氏は「当社が培った製造技術を活かし、まるで本物、むしろ本物よりも美味しい新感覚の食品を作っていきたい」と意気込んだ。

亀田製菓 代表取締役会長 CEO 田中通泰氏

 具体的には、原料の水分をコントロールすることで独自の食感に仕上げる技術や、調味・味付け技術などを活用するとのこと。ただの「代替食品」ではなく、低カロリーで美味しく食べられることを前提に商品を開発したといい、新商品を指して、「ビヨンド・ミート」ならぬ「ビヨンド・おつまみ」とも表現した。

なお日本市場でも、「健康志向の女性への展開を見込んでいる」とのこと。

亀田製菓の「食感技術」と「調味技術」

食感は完全にジャーキーで「ビールに合いそう」

記者会見では、芸人のメイプル超合金(安藤なつさん、カズレーザーさん)と女優の夏菜さんが登場。その美味しさを伝えるための「食レポ」に挑戦した。

メイプル超合金の安藤なつ(左)とカズレーザー(右)、女優の夏菜(中)

黒胡椒ジャーキー味のおつまみを食べ、「ジャーキーと同じ食感で驚いた。ビールに合いそう。美味しい」と夏菜さん。続けてメイプル超合金の安藤なつさんは「これは本物のジャーキーに違いない。ドッキリでしょ? 責任者を呼んで来い」とコメント。もちろん本物のジャーキーのはずはなく、”責任者”どころか亀田製菓のCEOである田中氏も同席していたため、少し現場がピリついたが、カズレーザーさんが「……出てくるのは我々の事務所『サンミュージック』の責任者となりそうです」とすかさずフォロー、会場の笑いを誘っていた。

「本当に大豆でできてるの? 」と思わず成分表を確認する2人

ちなみに筆者も食べてみたところ、「大豆でつくった」と知っていても、本物のさきいか、ジャーキーとの違いはほとんど感じなかった。強いて言うなら、初めの噛みごたえは本物と相違ないものの、唾液に溶けやすいのか、数度噛むと柔らかくなりやすいような印象を受けた。だが、違和感を感じるほどの違いではなかったため、「カロリーや塩分を抑えたい」という人には積極的に選びたい選択肢になることだろう。

「大豆でつくったやさしいおつまみ」は11月6日から11月末まで、東京限定でテスト販売する
(田中省伍)