2018年第3四半期決算の電話会議では、Apple Payに関して重要な発言があった。1つは、決済規模がSquareを超えたという報告。2つ目は米7-ElevenとCVS Pharmacyが秋からApple Payに対応するというアナウンスだ。

  • 2014年のApple Pay発表時のWalletの画面。基本的には、当時から大きな進化を遂げていない

Squareはスマートフォンやタブレットをクレジットカード決済端末に変えられるモバイル決済サービスの企業であり、Twitter CEO、ジャック・ドーシー氏が共同創業者として名を連ねている。昨今は独自のレジ端末の開発や、労務管理、融資などのカード決済以外のスモールビジネス向けサービスを展開しており、個人間決済アプリSquare Cashでのビットコインの取り扱いも開始している。

Tim Cook CEOがSquareについて「素晴らしい会社」と評価したのは、小規模ビジネスでのApple Pay普及にSquareの存在が欠かせないからだ。

  • スマートホームへの取り組みの本気度は低い?EMVとNFCをサポートしたSquare Reader。バッテリーを内蔵しているため、自由な位置に配置して決済を受け付けることができ、Bluetoothでスマートフォンやタブレットとワイヤレス接続する

米国ではNFCを用いた非接触モバイル決済の普及が、EMVと呼ばれるクレジットカードに備わるICチップの義務づけと重なったのだが、Squareが開発した新しいリーダーは、EMVとNFCの双方に対応するものだった。このおかげで、Squareを活用する店舗ではApple Payが急速に拡大するという状況を生んだ。AppleにとってSquareが大切なパートナーとなっているのは、そういった背景がある。Cook氏の評価も大いに頷けるのだ。

電話会議での2つ目の発言は、Apple Payにとって非常に大きな意味がある。米国の大規模小売チェーンでのApple Pay導入は、効率よく対応店舗を全米に広げられ、手数料収入の面でプラスに働くからだ。

米国7-Elevenはご存じの通り、日本のセブン&アイグループ傘下のコンビニエンスストアチェーンで、北米では11,500店舗1兆6,900億円の売上規模を誇る 。2018年には1,000店舗のチェーンを買収したほか、2016年から2019年までに1,000店舗が開店するなど、急成長を遂げている。

またCVS Pharmacyは名前の通りドラッグチェーンだが、食品から衣料品までを取り揃える規模の大きなコンビニのような存在だ。店舗数は全米で9,800店以上だが、年間の売上規模は1,847億6,500万ドルで、Fortune 500企業の第7位につけ、Amazon.comより上位にランクインしている。

さらに、電話会議では言及がなかったが、日本でも人気がある倉庫型店舗を展開するCostcoも、2018年7月末から全米の店舗でApple Payの対応をスタートさせた。Costcoの売上高は年間1,290億2,500万ドルで、Fortune 500の15位。ちなみに、CostcoではVisaブランドのクレジットカードしか利用できないが、それはApple Payでも同様だ。

全米の売上高のランキングであるFortune 500のリストを見ると、店舗がある小売店チェーンの上位でApple Payに対応していないのは、売上高1位のWalmartぐらいしか見当たらなくなってきた。

Apple Payの米国における勢力の拡大、留まるところを知らずといった趣である。