しかしながら、AppleのWalletアプリは必ずしも完璧な体験を演出できているとは言えない現状もある。

  • 2016年に日本でスタートしたApple Pay。日本向けのiPhone 7・Apple Watch Series 2にはFeliCaチップが内蔵され、Suica・iD・QUICPayの既存のインフラを活用する形で一気に対応店舗数を獲得した。2017年モデルのiPhone 8シリーズ、iPhone X、Apple Watch Series 3には、海外モデルにもFeliCaサポートが盛りこまれた

Apple PayのローンチカスタマーとなったドラッグチェーンであるWalgreensでは、決済だけでなく、ポイントカードをNFCでiPhoneやApple Watchに読み込めるようにしている。バーコードなどでスキャンすることなく、決済端末のリーダーにかざせば、割引きやポイントなどのサービスが受けられる仕組みだ。

これによって、身近なドラッグチェーンにiPhoneだけ持っていけば、ポイントカード入力と決済が同時にできるようになった。

だが決済の場面では面倒さがつきまとう。確かに画面にバーコードを表示させなくても良くなった一方で、煩雑なiPhoneの操作は要求されるのだ。

iPhone Xの場合、ロック画面でサイドボタンを2度押ししてWalletのリストを開き、ブルーのWallgreensの会員カードを表示させて端末にタッチする。その後、一度サイドボタンを押して画面を消して、再びサイドボタンを2度押しして、今度は支払いに使うカードを表示させてFace ID認証後タッチをしなければならない。

覚えれば大した作業ではないが、何度もサイドボタンを連打しなければならない様子は、とてもスマートとは呼べないものだ。しかしこれは、Apple PayやWalletへの対応にかかわらず、各所で起きていることだ。

Amazonが買収した高級スーパー、Whole Foods Marketでは最近、Amazon Prime会員向けの割引サービスに力を入れている。レジでWhole Foodsアプリを起動してPrime会員のバーコードを表示させ、これを読み込ませることでサービスが受けられる。

しかしレジ前ではかなり面倒な作業が待ち受ける。まずWhole Foodsアプリを起動し、レジで客側に向いているディスプレイの下に仕込まれたバーコードリーダーにかざす。次に一歩進んで、カード決済端末に、Face IDの認証を済ませたApple Payをかざさなければならない。

確かに財布の出し入れなくスマートフォン1つで全て完結する点は良いが、レジ前で一定の手順で操作しなければならないのは、直感的ではないし、便利とも言えないだろう。

理想的な体験は、特にチェーン店の場合、1回端末にiPhoneをかざせば、会員証の読み込みと決済を同時に完了してくれるようになることだ。Apple Payに発展の余地があるとすれば、1つの動作で全てが済ませられるスマートさを実現することに尽きる。