NTTドコモは、2018年9月1日より「docomo with」の対象機種として「iPhone 6s」を追加すると発表した。旧機種とはいえ、比較的高額なiPhoneを端末割引価格のないdocomo withの対象として追加したドコモの分離プランは普及するか。
ドコモの新プラン「docomo with」を振り返り
docomo withは、月々の利用料金を1,500円割引きするサービスだ。契約期間中は割引が継続するため通信料金の低減に繋がるが、利用するには対象商品の購入が必要だ。さらに、端末購入補助が利用できないため、基本的には端末代金をそのまま支払うことになる。
最近のドコモの料金プランは、基本的に端末を24回などの分割で購入し、それを毎月支払う代わりに通信料金を値引きする、というもの。端末代金への割引ではないため「実質価格」という体裁となり、当然、端末代金の全額支払いが求められる。
この割引(月々サポート)は最大24回分の割引となるが、端末代金の一括・分割払いを問わず適用される。そのため、通信料金は割引かれているが、毎月の請求代金は端末の分割料金が加算されるため、全体の利用料金は割引かれていないように見える。
端末を一括で購入した場合、最初に数万~十数万円が必要になるが、分割代金の上乗せがないため、月々サポートによって毎月の利用料金は低廉化する。端末代金として支払っている額は分割でも一括でも変わらないので、「毎月の料金を下げたい」というだけなら、端末一括購入で月々サポートを利用すればいい。
ちなみに、一般的に「2年縛り」などと呼ばれる契約形態は、これとは別に「2年間の利用を前提として基本料金を割引く」という定期契約の場合だ。例えばカケホーダイプランの場合、月額4,200円が定期契約で2,700円となる。端末を一括購入して定期契約を結ばない場合、端末代金としての初期費用と月額料金の増加に目をつぶれば、解除料や分割代金の残債などに煩わされず、いつでも自由に解約できる、ということになる。
一部で誤解があるようだが、端末に縛りは存在しないので、2年間という期間を気にせず自由に買い換えられる。残債の支払いは残るが、2年契約による料金の割引は継続する。その代わり、端末購入にともなう割引(月々サポートなど)はなくなることになるが、新たに購入した端末にともなう割引が発生する。
「iPhone 6s」も対象端末に。料金は4万円ほど
docomo withは、この端末購入による割引をなくす代わりに、決まった額の通信料金割引を行う、というもの。月額1,500円の割引額が設定されており、上記の2年縛りの定期契約が前提となる。端末代金の分割も可能だが、2万~4万円の端末で揃っているので、一括でも大きな負担にはならない。一括払いなら分割代金の上乗せもないので、毎月の料金が単純に1,500円引きとなる計算だ。
24回などの一定期間の割引ではないため、契約が続く限り割引は継続する。ただし、割引を最大化するには2年間の定期契約が前提となるため、解約をするには解約月に注意が必要になるほか、機種変更で対象外の機種を購入すると廃止される。その代わり、自分で用意した端末を使う分には割引が継続するようだ。
これまでは、サムスン、LG電子、シャープといったメーカーがこれに沿った端末を提供してきたが、ここに来てiPhone 6sが対象端末として登場した。4万2,768円とdocomo withとしてはやや高額だが、おおむね4万円というところだろう。アップルストアの価格が税別5万800円なので、1万円以上お得ということになる。
アップルストアよりも安価な値付けは珍しく、公正取引委員会が公表したアップルとの「iPhone Agreement」が改定されたことが影響されていることも考えられるが、公式にはドコモはそうした点は否定する。
分離プランに舵を切った大手キャリア
こうした、端末代金と通信料金を別々に分けることは分離プランと呼称されているが、すでにKDDIも提供しており、ソフトバンクも8月29日に新たな分離プランを発表している。もともと、各社の料金プランは、端末代金と通信料金を分離するとの名目で、端末代金は割引きせず、その分の通信料金を割引くという仕組みを導入していた。

それとは異なり、端末購入のサポートの代わりに通信料金を割引くのが、今回の分離プランだ。「実質0円」といった見た目には安価に見える端末の売り方ができるなくなる代わりに、毎月の通信料は下がる。そのためには2年契約が必須、というのは各社共通した部分だ。
毎月の通信料を値下げするために2年間の期間拘束をする、という料金プランで従来と異なるのは、端末購入をともなわなくても割引が継続する点だ。さらにKDDIは2年契約を自動更新する場合の毎月の割引額を減らして、2年間拘束後に解除料がかからない「2年契約(自動更新なし)」を提供。ソフトバンクも同様の「2年契約(フリープラン)」を用意した。
そしてドコモの場合は、自動更新のある2年間の定期契約、定期契約なし、2年間の契約後に解約が自由にできる「フリーコース」の3種類から選べる。
こうした違いはあるが、分離プランになると端末代金は単純に上がるように見える。これまでも通信料金の割引によるもので端末代金は割引されていなかったが、分離プランではそういった売り方もできなくなるので、例えば10万円を超えるiPhone Xなどは、実質価格もなくそのままの価格で購入するかどうかを選択することになる。
もちろん、これが正常とも言える。分割払いの場合は「通信料金と端末代金の合算」が請求されることは変わらないだろう。ただ「実質価格」がなくなり、端末代金が意識されるようになると、より高額な端末は売れづらくなることが予想される。
分離プラン普及の試金石へ
そうした場合に、docomo withにiPhoneが追加されたインパクトは大きい。旧機種とはいえ、いまだ最新OSへのアップデートが約束された現役モデルだ。「iPhoneが欲しい」という声には応えられるし、日本ではこの声が無視できないほど大きい。通信料金は割安になるので、「スマートフォンが高い」というイメージでフィーチャーフォンからの移行をためらうユーザーに対しても、データ容量1GBまでなら月額3,672円(端末代金別)と、ある程度の訴求が図れるだろう。
アップル側にも、iPhone 6sの販売を拡大したい事情もありそうだ。9月の新機種発表を前に、安価な旧機種の安定供給先として、ドコモでの取り扱いは大きいだろう。iPhoneのさらなる市場拡大につながる可能性はある。
ドコモの場合、分離プランのdocomo with利用には対象端末購入が必要で、既存の売り方も継続することから、今回のiPhone 6sの追加は、分離プラン普及の試金石としても、その結果を注目したいところだ。
(小山安博)