最後に、さまざまなシーンで撮影したスナップショットを見ながら、RX100M6の個性を確認していきたいと思います。

下の写真は、わんこポールの装飾をクローズアップで捉えつつ、背景の木漏れ日を玉ボケとして表現したもの。近距離の場合、ボケの中に同心円状のスジが入ったり、円形が欠けたりして、玉ボケの形状はあまり美しいとはいえません。ただ、こうして背景をぼかして特定の被写体のみを浮かび上がらせる撮り方が、コンパクトデジカメなのに楽しめることは、高倍率ズーム採用のメリットといえます。

  • 後ろボケの表現。絞り優先AE(F4 1/30秒)WB太陽光 焦点距離72mm

次も、同じくズームのテレ端を使ったボケ表現の例です。赤い花の植栽を近景に配置することで前ボケを作り、画面に奥行きと彩りを与えています。

  • 前ボケの表現。絞り優先AE(F5 1/400秒)WB太陽光 焦点距離72mm

テレ端の長い焦点距離はボケだけでなく、遠近感を縮める「圧縮効果」の表現も得意です。下のカットは、路上の模様を圧縮してその形状を引き立たせ、そこに歩行者のシルエットを重ねてパターンとしての面白さを狙ってみました。

  • 連写で撮影。絞り優先AE(F5.6 1/5000秒)WB太陽光 焦点距離72mm

上のカットは、色調などの設定は特にいじっていませんが、強い逆光線によって、まるでハイコントラストなモノクロ写真のような雰囲気になっています。さらに言えば、24コマ/秒の高速連写を利用して枚数を多めに撮り、特にバランスのいい1枚を採用したこともポイントです。

逆光写真をもう1枚お見せしましょう。次の写真は、船上から眺めたレインボーブリッジです。実際にはまだ日が明るい時間帯でしたが、-1.7の露出補正を与えてローキーなイメージを狙っています。逆光によるコントラスト低下やゴーストはほとんど気になりません。

  • 逆光で撮影。プログラムAE(F8 1/3200秒)WB太陽光 焦点距離9.96mm

次は、チルト可動液晶を生かした写真です。チルト可動の仕組み自体は、今どきのカメラとして特に珍しくありませんが、RX100シリーズ(正確には2代目以降のモデル)はチルト可動+薄型軽量ボディなので、このように花壇の中にカメラを潜り込ませて超ローアングルで撮ることも簡単です。その際、RX100M6に新搭載されたタッチパネルによるAF測距点の選択が役立ちます。

  • ローアングルで撮影。絞り優先AE(F2.8 1/1600秒)WB太陽光 焦点距離9mm

RX100M6のチルト液晶は、既存モデルに比べて可動の角度が広がり、ハイアングル撮影がいっそうしやすくなったことも進化のひとつです。下の写真は、カメラをハイアングルに構えることで、赤い車体と石畳が生み出すコントラストの妙を狙ったもの。

作例として、画質を見せるという使命感のため高速シャッターを選択しましたが、写真的にはもう少しシャッター速度を遅くして車をぶらしたほうが、スピード感が出て効果的だったかもしれません。

  • ハイアングルで撮影。シャッター優先AE(F4 1/1000秒)WB太陽光 焦点距離19mm

最後は、動画の作例です。RX100M6は、最大で3840×2160ドットの4K動画撮影に対応。4K記録の場合、フレームレートは30pで、連続撮影時間は5分という制約があります。そんなスペック的な物足りなさはあるものの、高精細な4K画質を光学8倍ズーム+薄型軽量ボディで味わえる点は魅力のひとつです。

RX100M6で撮影した4K動画。全画面表示にすると、精細感の高さが確認できます

今回の試用では、胸ポケットサイズのスナップ機でありながら、多彩な表現が楽しめるRX100M6の懐の深さを実感できました。うだるような暑さのなか、短時間で都内のあちこちを移動できたのは、301gの軽量ボディだからこそです。これに慣れてしまうと、大きなカメラやレンズはもう持てません。重装備が体にこたえる夏にこそ、特にありがたみを感じるカメラといえそうです。

  • ペットボトルの飲み物よりも軽いRX100M6。ポケットに入れたことを忘れるくらいでした