HuaweiのコンシューマービジネスグループCOOであるWan Biao氏が、国内の報道関係者のインタビューに応じ、PC事業の現状と今後の製品戦略について語りました。「各セグメントにプレミアムモデルを投入する」という戦略で、今後も継続した製品の提供を強調しています。

  • Huawei コンシューマービジネスグループCOOのWan Biao氏

Huaweiは、PCとしてMateBookシリーズを投入していますが、国内では6月にハイエンドPCの「MateBook X Pro」を発売したばかりです。Biao氏によれば、ハイエンドモデルとして主に先進国で販売されており、中国、日本、欧米での販売中です。

「期待を上回る反響を得ている」(Biao氏)とのことで、需要が供給を上回る状態となっており、供給が追いついていないそうです。

  • MateBook X Pro

このMateBook X Proは、「PCの問題点を打破しようと企画した」とBiao氏。スマートフォンが急速に発展、普及して、テクノロジーやファッション性を追求する製品になったのに対し、「それに比べてノートPCはこの10年間、大きな変化がなかった」といいます。

機能面だけでなく、ハイテクさやファッション性といった要素を組み合わせようとしたのがMateBook X Pro。そのために素材や本体の薄さ、大画面、ディスプレイの選択などをいろいろと工夫したそうです。

実用性にも数々の配慮が見られます。電源ボタン一体型指紋センサー、Dolby Atmosの高音質、タッチスクリーン採用、そしてカメラをキーボードに隠す工夫などを盛り込んだとしています。

  • 使うときだけ出現させられる、ポップアップ式のWebカメラ

  • 指紋センサーが一体となった電源ボタン

ターゲットユーザー層は「オシャレなビジネスパーソン」(Biao氏)。現在のMateBook X Pro、ユーザー層は70%が男性で、より薄く軽量なMateBook Xは女性ユーザー層が多くなり、すみ分けがされているようです。

PC市場参入にともない、Huaweiではこれまでとは異なる戦略を採用したとBiao氏は述べます。「単にコストパフォーマンスの高い製品を出した場合、消費者にとっては選択肢が広がりますが、大きな価値をもたらすとはいえません」というのがBiao氏の考えです。

そのため、PC製品戦略では「プレミアム製品」にフォーカスし、「もっとも優れたPC製品を作ろうとした」そうです。このプレミアム製品は、各価格帯のセグメントにおけるプレミアム製品という考え方だとしています。

「PC本体の色を変えたり、カバーの材料を変えたりというだけではなく、ちゃんとしたプレミアムモデルができあがるように、持っているものをつぎ込んで製品を作ります」とBiao氏。その“持っているもの”というのは、「スマートフォンで培った新しい革新的な技術をどんどんとPCに取り入れようとしました」とのこと。

■スマホと通信のノウハウを、PCへ

この分野でHuaweiは、多額の研究開発費を投入しています。こうした投資は、スマートフォンだけでなくスマートホーム製品を含む各種スマート製品に広がっており、研究開発はPCにも生かせる、とBiao氏はアピールしています。

さらに、3Gや4Gで培った通信の技術、機能は、5G時代になっても、スマートフォンやタブレットだけでなく、PCにも生かせるとします。こうした研究開発の成果は、今後も継続的に新製品に提供されるとしています。

「イノベーションは長距離走だと考えています。短期間にどれだけの速さで走れるかというより、どこまで遠くに走っていけるかに重きを置いています」(Biao氏)。

例えばスマートフォン向けに、HuaweiはCPUとGPUに加えて、AI専用のNPU(プロセッサー)を開発しています。Biao氏は「AIの処理性能は、間違いなくPCにも応用されるようになります」と語りました。

加えて、Huaweiのクラウドサービスも重要視しているようです。AaaS(Application as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)という3つのクラウドサービスをカバーしており、OSやデバイスにとらわれずにサービスを提供できるとしています。

Biao氏は、PCにおいては12カ月~18カ月ごとに既存製品をバージョンアップしていく考えを示しており、次世代製品を含めて開発を継続していく意向です。例えば、Microsoftが10インチの「Surface Go」をリリースしましたが、Huaweiの初代PC製品だったMateBookが似たような製品でした。Biao氏は、そうしたSurface Goライクな製品が今後求められるかどうか市場分析の必要性を示しており、次期製品としては、より携帯性を高めた、より薄く、より軽量な持ち運びしやすい製品を想定しているようです。

また、Windows on ARMに関しては「今後いろいろな可能性がある」と指摘します。現在はQualcommのSnapdragon搭載Windowsの開発が続いていますが、「ARMが広く使われるようになるためにはいくつかの課題を解決しなければなりません」とBiao氏。ソフトウェアの互換性とパフォーマンスの問題で、こうした課題を認識しつつ、「今後も注目していきます」とBiao氏は慎重な姿勢を見せました。