他にもMacにとってのメリットはある。例えばTwitterはMacでのオフィシャルアプリの開発をやめ、ウェブでの使用もしくはサードパーティアプリを推奨するようになった。Facebookは本体もメッセンジャーも、ブラウザからの利用しか手がない。

だが、専用アプリで利用できるとなれば、インターフェイスはわかりやすいものになるだろうし、通知での返信など、享受できるメリットは大きい。個人的には、ブラウザのタブの中でサービスを使うより、アプリ単位になっていた方が管理がしやすいと感じるため、iPad向けアプリがMac版として用意されるのは大歓迎である。

Appleが説明したのは、iPadアプリがMacに移植されることのメリットであり、その開発リソースの共通化、という点だ。しかしiPad側はMacへの導線としての役割だけなのだろうか。筆者は、iPadとMacのアプリの一体化した開発が進んでいくことで、iPadにも、Macにしかなかった特にプロフェッショナル向けのフル機能を持つアプリケーションが流れ込んでいく可能性が開けてくるのではないか、と考えている。

例えばAppleは、Mac向けに「Final Cut Pro」や「Logic Pro」といったビデオ・オーディオ編集のためのプロアプリケーションを用意している。しかしこれらは、iPad向けにはリリースされていない。

iPad ProはAppleが「スーパーコンピュータ」と称するように、ビデオ編集においては4Kストリームを3本同時に走らせてプレビューできるだけの処理能力を発揮する。しかしAppleが用意するのはiMovieのみであり、その性能を生かせていないのが現状だ。

今後iPadアプリとMacアプリの開発が連携していくことで、iPad向けのプロアプリのリリースがされれば、今回のアプリ共通化の施策の中でiPad側での最大のメリットとなるだろう。

余談になるが、iOS 12ではRAWファイルの管理が可能になり、iPad Pro向けの機能として、RAWファイルの編集に対応している。という展開にも関わらず、残念ながら写真編集アプリの「Aperture」の開発はストップしてしまった。その代わりにMacとiOSの「写真」アプリを強化し、クラウドと接続する機能をなどを追加しているが、おそらくプロ向けには不十分であろう。ここもテコ入れが期待されるところである。