個人向けの製品と、法人向け製品では、販売体制が異なる。

国内の個人向け製品は、FCCLから量販店およびFCCLの直販により、市場に供給する体制となり、サポートおよびサービスもFCCLが提供する。もともと量販店向けの製品流通は、富士通の100%子会社である富士通パーソナルズが担当していたが、2017年4月に、個人向けPCに関する営業部門をFCCLに移管しており、その時点から、レノボ傘下での新体制に向けた準備を着々と進めていたといえる。

一方で、法人向け製品については、従来どおり、富士通から販売パートナーを経由した販売と、同社直販部門による販売体制を維持。サポートおよびサービスも富士通が提供することになる。富士通では、「引き続き、高品質かつ革新的で信頼性の高い富士通ブランドのPCとサポートサービスをグローバルな企業に提供し、テクノロジーソリューションと合わせて、顧客のデジタル革新に貢献していくことができる」とする。

  • 新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦【3】

    FCCLの独自性と強み

富士通は、日本の官公庁に多くの導入実績を持つ。その点では、PC事業が中国のレノボ傘下に移管されたことで、官公庁案件への影響が懸念される。だが、FCCLの齋藤邦彰社長は、「富士通は品質オリエンテッドのブランドであり、そのブランドは毀損させてはいけない。品質面では富士通がしっかりと保証する。官公庁案件への影響はないと考えている」とする。

前回でも触れたが、富士通のPC事業は、開発、生産、販売、サポートにいたるまで、レノボ・ジャパンやNECパーソナルコンピュータとは、完全に独立した体制を取っている。そして、官公庁をはじめとする法人向けにおいては、富士通本体が販売、サポートを行う体制も維持されている。

加えていうならば、日本で販売される法人向けデストップPCの一部は、富士通傘下の富士通テクノロジー・ソリューションズで企画、開発され、同じく富士通傘下の富士通アイソテックで国内生産され、富士通本体が販売、サポートを行うという、富士通による一貫体制すら維持されているという見方もできるわけだ。

「レノボ傘下のそれぞれの企業が持つカスタマーベースを生かしながら、これまでの体制を維持することが、ビジネスを最大化できるというのがいまの判断。もちろん市場の変化などによって、この体制が変わる可能性は否定しない。だが、日本での開発、生産を行うことによる高い品質や短納期の実現、あるいは一個流しで生産できるといった柔軟性、生命保険会社向けPCや、文教分野向けタブレットでの実績のように、顧客の要求にあわせてカスタマイズしたモノづくりを行える体制を維持することが、富士通ブランドのPCの独自性を発揮することにつながる」と、齋藤社長は説明する。

富士通PCの独自性を発揮するために、独立体制は当面維持されることになる。だが、独立体制は、いずれ当然、レノボ・ジャパンやNECパーソナルコンピュータとの競合を避けては通れなくなる。特に、富士通とNECは、PC黎明期から国内PC市場を形成してきた2大巨頭であり、NECパーソナルコンピュータとは真っ向からぶつかる製品が少なくない。

それに対して、齋藤社長は、「当然、競合する部分は出てくるだろう」と前置きしながら、法人市場と個人市場に分けて次のように説明する。

「たとえば法人市場の場合、FCCLは、生保市場や文教市場において、高い評価を得て、高いシェアを誇っていることからも証明されるように、顧客の要求にあわせてカスタマイズを行えることが特徴。人とのインタフェースにフォーカスし、富士通のMeta ArcやZinraiなどとの連携に最適化したデバイスを開発、生産することもできる。付加価値型のモノづくりという点で、他社と同じ領域で競合するということはない。むしろ、法人市場では、真っ向からぶつかるPCを作っている状況にはないと考えている」と断言する。