こうした状況にMTGはどう対処しているのか。まずは模倣品生産業者の摘発だ。MTGが、中国の調査会社に模倣品生産業者の洗い出しを依頼し、見つかれば調査会社から中国摘発当局に告発。そして当局が摘発するという流れだ。
また、水際での輸入差し止めにも力を入れている。中国からの輸出時に、同国税関に厳しくチェックしてもらうのが第一段階。ただ、ここでチェックを逃れ、欧米などにわたってしまうと、MTGではどうしようもできない。一方、日本の税関では比較的差し止めできているという。というのも、MTGが税関の職員を対象に正規品と模倣品の違いを伝える講習を行っているからだ。2017年は153件を摘発し、13,000以上の模倣品を差し止めたという。
正規品と見まがう模倣品
下の写真は正規品と模倣品を並べたもの。パッと見では違いがわからないが、よく見比べてみると細かなところで異なっている。どこが異なっているのかは、業者に対応されてしまうので記事にできないが、もし模倣品単体なら本物と信じ込んでしまうだろう。
また販売店、特にウェブサイトを中心にパトロール。模倣品を扱うサイトを見つけたらページ削除を実行している。2017年には約9,200サイトを削除したという。サイトでMTGの製品を注文したら、中国から発送されてきたということが多々あるらしい。ちなみにMTGは「JAPANブランドを世界に発信」という方針なので、中国から届くことはない。
消費者側にも啓蒙が必要だ。特に近年、高級時計の模倣品、いわゆる「スーパーコピー」を好んで使用するユーザーが増えている。高額な出費になるのなら、ほぼ見た目が変わらないコピーでいいや、という考え方が蔓延し始めている。
腕時計ならまだいい。壊れようが、傷がつこうが、詳しい人に「それニセモノだよ」と指摘されようがそれだけのこと。だが、MTGの製品は人体に作用するものがほとんど。模倣品を使うことによって、健康被害につながる可能性も十分に考えられる。
代表取締役社長の松下剛氏を始め、同社のスタッフは常々こういっているそうだ。「模倣品を絶対に許さない」「徹底的に戦い続ける」と……。ブランドを守るため、企業を守るため、そして消費者を守るため、これからも戦い続けていくことだろう。