「竹あかり」をご存知だろうか? 竹に穴をあけ、ろうそくやLEDなどで明かりを灯す作品だ。この作品を通じ、「竹」がもたらす環境問題に立ち向かうと同時に、「人の和」を築き、地域の活性化につなげることを目指す人達がいる。熊本県の「CHIKAKEN(ちかけん)」という企業である。
古くから日本に生息し、食料や包装物、飼料、建築用品、農機具など、さまざまな用途で、人々の生活や産業に関わりをもってきた「竹」。しかし、時代が進むにつれて、需要が減少し、管理されなくなっていった竹は、元来の繁殖力の高さが原因となり、植生を破壊する「竹害」と呼ばれる問題も引き起こしている。
その問題に立ち向かい、竹の活用により、新たな価値を生み出し続けている彼らは、一体どのような想いで、この活動を続けているのだろうか。同社の共同代表である、池田親生さんに話を伺った。
「竹あかり」で灯す、文化の光
--「竹」を用いた活動をしていると伺っていますが、具体的に、どのようなことをしているのでしょうか。
竹に穴をあけてあかりを灯す、「竹あかり」という作品を用いて、空間やイベントを演出、プロデュースするという活動をしています。具体的には、地域における「祭り」をプロデュースしたり、百貨店のショーウィンドウ、ウェディングやクリスマスなどといった、さまざまなイベントで竹のあかりを使った演出をしたりしています。
--熊本県では、数千人のボランティアでつくりあげる「みずあかり」という「竹あかり」を用いた祭りで、演出を担当していると伺いました。このように、「竹あかり」を仕事にするようになったきっかけを教えてください
竹あかりに関わり始めたのは14年前(2004年)からです。きっかけは、当時、私が通っていた崇城大学(熊本市)での内丸惠一先生との出会いでした。当時、私は建築を学んでいたのですが、内丸先生は「建築が建物を建てるだけの時代は終わる」という思想から、「まつり型まちづくり」という考え方をベースとしたさまざまな活動を推進されていました。
その中の1つの活動として先生は、大分県の「うすき竹宵(たけよい)」という祭りに関わっており、そこで、竹を用いた演出をしていました。当時は、竹を斜めに切っただけの門松のようなものでしたが、そこにさらに「デザイン」を与えるようになり、「竹あかり」という芸術的価値をもつ作品が生まれ、より多くの人が集まるようになっていきました。
そうした活動を通じて、「竹あかり」との関わりを深めていく中で、より多くの人を巻き込む「祭り」をつくるためには、その芸術的価値をより上げていく必要があると感じ、2007年4月、大学の卒業と同時に、「竹あかり」の演出制作・プロデュース会社として「CHIKAKEN(ちかけん)」を設立しました。それ以降、熊本県を拠点として、全国各地で「竹あかり」を用いた活動を続けています。
竹あかりは「持続可能な社会」へのメッセージ
--卒業と同時に起業、という選択は相当な覚悟が必要であったかと思います。それほどまでに、「竹あかり」によって、実現したいことはどのようなことなのでしょうか?
竹あかりは、「持続可能な社会づくり」というメッセージをもった芸術的作品だと思っています。近年は、各地で管理できなくなった竹の問題(竹害など)が取り上げられるようになってきました。その問題とされている竹をただのゴミとせずに、デザインを与えることで形を変え、地域を盛り上げるための資源として活用し、最後には、土にもどすところまでやっていきたいと考えています。現在、まだすべてではありませんが、イベントや祭り、展示に使用した竹を廃棄する際には、ただ捨てるのではなく、竹炭にすることで、再利用ができるようにしています。
先ほど説明した、大分県の「うすき竹宵」という祭りも、はじめは「地域に繁殖した竹をどうにかできないか」という考えからスタートしたものです。